すこし専門的になりますが、言葉を整理しておきます。
火災報知機=自動火災報知設備 消防法17条で必要な設備
住宅用火災警報器=個人の住宅に取り付ける電池式の警報器
という違いがあります。
自動火災報知設備は共同住宅でも大きければ設置することになりますが、これは建物を建てたときに設備するものですので「まだ設置していません」ということは無いと思います。
したがって、質問の内容は住宅用火災警報器(住警器)の義務設置化に関することだと想定して書き込みします。(もし、自動火災報知設備の話であれば、罰則もありますし、法的責任もかなり重いです)
住警器は、確かに取り付けをしなくても罰則はありません。また、共同住宅に対しての義務設置は誰が負担すべきなのか、明確な規定もありません。ですので、責任の所在そのものがはっきりしていないのが現状だといえます。
総務庁消防庁はこういう回答例を出しています。
消防庁防火安全室作成「改正消防法(住宅防火対策)に係るQ&A」(平成16年10月)
[Q] 住宅用火災警報器の設置及び維持義務者は誰か?
[A] [受益者としての居住者又は住宅に設置及び維持することの責任を担う所有者若しくは管理者が適当と考えられる。]
つまり入居者でも管理者でもどちらでもよいのです。
入居者に対しては、住警器をつけることにより火災保険料が下がるというサービスもあり、火災時に直接火事から避難出来るという「受益者」でもありますから、設置義務は入居者負担という考え方もあります。
逆に、建物の維持管理は管理者の役目であり、入居者の安全確保義務から言えば、管理者負担という考え方もあります。
要するに誰が負担するか明確にしていないのです。
これでは、実際に火事があったときに「管理者が住警器をつけていないから、大事になったのだ」と刑事罰などの責任を負わせることはかなり難しいといわざるを得ません。
また取り付けをしたとしても、消火器や避難器具などの消防設備と違って、点検管理の義務はありませんから「適正に取り付けされ維持管理されている」という状況を担保することもできません。
このような状態で、5年後10年後と住警器がつけてある(またはつけていない)ということを根拠に責任を問うことはかなり難しいといえます。
それでもまだとりつけていないということでしたら、今のうちに「住警器の取り付けは検討の結果、入居者の負担で行うようにお願いします」と案内を出し、今後の新入居や契約更新時に「住警器の取り付けは入居者負担」とすれば管理者の責任を果たしたことになりえます。
現在のところ、住警器をつけなかった管理者の責任を問う法的根拠は何もありません。ただし、自動火災報知設備のことなら、罰則も法的責任もかなり重いです)
お礼
至れり尽くせりのご説明を頂き、心より感謝申します。