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放射線許容量の信頼性について
- 放射線許容量の根拠や信頼性について疑問が生じています。
- 学者の間でも放射線許容量に関して意見が分かれており、低濃度でのリスクを指摘する声も存在します。
- 東電に対する批判は、事故の前から危険を指摘していた人がいたことに起因していると言えます。
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人類による放射線利用の歴史はまだ100年足らずですが、放射線が健康に与える影響については核兵器の実戦使用(広島、長崎)、数百回に及ぶ核実験、チェルノブイリの事故、放射線医療などで多くの臨床データが蓄積されています。その結果、高線量の被曝による確定的影響(急性障害)は短期間での250mSvを超える被曝をしない限り見られないというのはほぼ共通の認識となっています。それ以下の低線量被爆の影響については意見が分かれており、100mSv/年を閾値としてこれ以下では影響がないとする説と、どんなに僅かな線量でもそれに応じた影響があるとする説があります。 放射線防護の考え方としては後者の閾値なしを前提にして、放射線作業従事者については年間50mSvを上限として、合理的に達成しうる限りなるべく低く抑えることになっています。この考え方はALARA(as low as reasonably achievable)として国際的に認知されています。放射線の影響は子供ほど感受性が高いことが知られているので、妊娠の可能性がある女性についてはより厳しく制限されています。 従事者以外の公衆に対する影響は、バックグラウンド(自然界に元々存在する放射線)の誤差の範囲に収まる1mSv/年が通常の値です。従事者の基準が50倍も緩いのは、一般の人は正確な被曝量を知ることが出来ないのに対して従事者は厳密に被曝量を管理できるからです。 災害や事故、戦争などの緊急時については許容レベルを一時的に引き上げることが国際的に認められていて、日本の基準も国際標準に倣っています。これは、緊急時は放射線以外のリスクが高まっているため、十分に安全尤度を持った通常の基準を放射線についてのみ遵守しようとすると、結果としてリスクを高めてしまう恐れがあるためです。例えば、ある地域で住み続けると年間10mSvの被曝が予想されるとき、放射線による発癌リスクの上乗せは0.05%程度です。一方で避難、移住した場合、転居、転職によるストレス、収入減による医療アクセスの低下などでより高いリスクを招く恐れがあります。 放射線を避けるためのリスクがゼロであれば、僅かなリスクも避けるべきでしょう。実際には何かしら普段と違うことをするのは相応のリスクを伴いますので、そのリスクと比較して放射線によるリスクが有意に高い場合のみ、対策を取るというのが結果的にトータルのリスクを最小化することになります。 現在運用されている許容量については国際基準通りであり、十分合理的だと思います。個人的には、むしろ避難生活を強いることのリスクをやや過小評価しているように感じます。