簡単にいえば、小説なら仮想体験ができるから、でしょうか。
たとえば、ただ自分の人生を生きていれば、他人の気持ちを、他人のような気持ちになって考える、という機会は、そうそうありません。
でも、小説ではそれが普通です。
自分以外の誰かになって、その気持ちを共感、共有しつつ、物語を読みます。
その感覚というのは、他ではなかなか得られない感覚です。
新書などの実用書などでいけば、著者の知識に基づく考え方を知ることができます。これも、知ろうとしなければ、一生知らずに生きていくことになります。
よく本があっても生きていけない、という言い方があります。
その通りです。食べ物があり、生命を維持できなければ、本なんて意味はありません。
でも、それでは動物と、なんら変わりません。
人は一生をかけて、なにかに気づき続けていく生き物だと思います。
人の気持ちや考え方、その他にも色々気づけるものはあります。
その気づいたこと、考えたことを、次代につなげていくのが、人です。
その媒体として、本はつくられて、残されてきました。
読書をするということは、先人の積み重ねを受け取る、という意味もあります。
受け取って、次代にわたすのが、今を生きる人の役割です。
といっても、なにも特別なことをするわけじゃありません。本を読み、「なにか」を受け取ったあなたは、たぶん、考え方、生き方そのものが、ほんのわずかずつ、変わっていきます。
それが次代につながります。バトンがわたります。
長くなりましたが、最後にシンプルにまとめると、人の歴史はなにかを記録し、残し、次代へのメッセージとしてきました。
読書というのは、それを受け取る行為です。