事情に不明なところがありますが、質問者さんの意図としては、「搬送され、手術室・処置室に連れて行かれると、いざ、金銭が必要になったときに、直ぐに取り出せないから、前もって必要と思われる金銭を確保しておいた」ということでしょうか。
仮にそうだとすれば、刑法理論上、罪にならないと考えます。
友人の財布から1万円を抜き取る行為は、客観的にみれば窃盗罪(235条)にあたりそうに見えますが、判例上、故意のほかに、「不法領得の意思」というものが必要とされます。詳しい理論は省きますが、ココでは、「不法領得の意思」のうち、「振舞う意思」(他人の物を自分の所有物としようとする意思)がありません。質問者さんは、あくまで、友人に代わって支払ってあげようと思っていたようですから。そうすると、窃盗罪の成立に必要な要件を充たしませんので、罪にはなりません。
救急車はタクシーじゃないので、搬送されたら支払い請求されるなんてことはないですし、処置が終わったから直ぐに金払えと、言われることもないので、早計な行動であることは否めませんが、倫理的なことはココでは、置いときます。
※補足(ちょっとややっこしくなるので、念のために書いておくだけに留めます。理解できないと思ったらとりあえず読み飛ばしていただいてかまいません。):支払おうとしたこと自体、振舞う意思にあたるのでは?との批判が予想されます。その意見の場合でも、被害者の推定的同意の法理として、罪にならないと主張し得るでしょう(刑法35条後段)。なお、事務管理(民法697条)にあたるとして、正当行為(刑法35条)で、罪にならないと主張することも、全く不可能ではないかも。基本的には、事後費用請求する形をとるので、請求権があるからといって、勝手に抜き取っていいわけではないですが、自分に手持ちの金がなく、友人に満足な治療を受けさせるために必要な措置と判断したのなら、事務管理の一環として考えられ、善管注意義務違反(698条反対解釈→644条)にもならないでしょう。