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サリンジャー ナインストーリーズ エズミに捧ぐについての解釈
表題の件について皆さんのご意見を伺いたく。 随分昔に読んだ際には、主人公の回想であると思いました。 導入部分が現在、そして続くのが過去に出会った少女のこと、戦争で負傷した自身のことの回想。 しかし先日読んだ際に、もしかしたらこれは回想ではなく、エズミに捧げた作り話なのではないかと思いました。 主人公は、最後に眠る行で死んでしまっていて、導入部分の「結婚式に招待を受けた」という部分はすべて空想。 エズミに頼まれた「いつか私のために汚辱の話しを書いてね」という、その話そのものではないかと。 いつか戦争が終わり、成長したエズミが結婚することを思い描きながら、彼は壊れた時計を確かめることもなく死んでしまったのではないかと。 どうなんでしょう? みなさん解説御願いします。
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- toko0503
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こんばんは。 読者それぞれ自由な解釈があっていいと思います。 以下は、あくまで私個人の解釈です。 まず、冒頭で結婚式の招待状を受け取りますが、 この結婚式の花嫁は、まさに「エズミ」ですよね? そして、そこから「私」は、彼女を知った時の秘話を話し始める訳です。 とてもほのぼのとした、心温まる彼女と弟(+家庭教師?)との出会いです。 そして、その帰り際に、私のために汚辱的な短編を書いてね、と彼女に頼まれます。 なので、ここまでは、私は作り話ではないと思うのです。 (汚辱的な内容ではないし) 場面が一転して、宿営していた民家での話になります。 ここからが、私は、"汚辱的"な話だと解釈しました。 何が"汚辱的"かというと、サリンジャーは、その出自から "ユダヤ"に対してある種の基本的なポリシーを持っていますね。 詳しいことは避けますが、後半、宿営中に机に置かれた ゲッペルスの「未曾有の時代」、そこに書き込まれた 「神よ、人生は地獄」の文字とそれに続けて書き込みを加えるX。 本の持ち主であるナチスの下級女性官吏は、 見習い曹長であるX(「私」の正体ですよね)が逮捕したのですね。 その後、戦友Z伍長の鬱陶しい話(猫を殺したうんぬん)に 辟易する(実際、紙屑籠に吐きます)場面もあります。 最後、彼は死んでしまいましたっけ?? 陶然と引き込まれていくような快い眠り………とありますが、 私は、死んではいないと取りました。 でないと、結婚式の招待状を受け取る冒頭の現実に繋がらない気がします。 ちなみに、彼は、入院していて、この日、退院してきたのですが、 この入院は、おそらく精神の病だと思われます。 エズミからの手紙は1944年に書かれ、それを宿営で読むのが1年後の1945年ですね。 果たして彼はエズミに返事を書いたものやら... その辺は 読者の想像いかんでしょうが、最後に For Esme_ with Love and Squalor (愛と汚辱をこめて) ... とあるのが、何か象徴的ではありますよね。 全くの私見ですが、参考までに書いてみました。 サリンジャーは、作家としては寡作で、謎めいた人ですよね。 ちなみに「バナナフィッシュにうってつけの日」、あれって理解出来ました?(^^)
お礼
ありがとうございました。 興味深く拝読しました。 すごく納得。 色々とサリンジャー作品についてのお話を伺いたくなりました。 バナナフィッシュ、あれも理解できずにいます・・・ toko0503さんの解釈を伺えれば嬉しいです。 毎年のように今年こそは新作発表か?といわれているサリンジャーですが、 いつかその日は来るのでしょうかねー。