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豪ドルの動き
97年4月を頭に豪ドルは00年末まで半分近くまで下げ続けましたが、この原因はなんでしょうか。 現在、オーストラリアの経済情勢は実際の所どうでしょうか?
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豪州経済は、1996年以来実施されている一連の政府による構造改革計画により柔軟性を増した労使関係と財政の健全化により強い経済構造を持つ国に変身しつつあります。 大幅な労使関係の改革のポイントは、これまで中央で集中的に行われてきた賃金決定を職場毎に行う賃金交渉へ移行させたことです。この10年間、オーストラリアの労使関係は多くの点で改善され、それが1990年代における生産性の向上につながりました。企業のニーズに即した労働契約(労組との契約に拘束されず)を結ぶ労働者が増えるにつれ、それまでの複雑で統一的な裁定に基づく労使関係がより自由なものに変わってきました。 こうした変化の結果、労働市場はいっそう弾力的になり、雇用の創設や生産性に対する障害が減少しました。最近の経済成長の持続下にも、穏当なインフレ率が維持できた重要な理由は生産性の向上があったからです。 強力に経済が成長するなかで、賃金・物価の悪循環を適当に抑えられたことが、雇用の成長を持続する支えになりました。この2年間に、失業率は7%前後で、それまで10年間の最高レベルであった10.7%からは、4.0%低下しています。 財政では1997年より国有財産の売却、財政支出の削減を進め1998年に財政黒字を達成しています。2000年には、間接税の課税基盤拡大による所得税の引き下げや、手続きの簡素化、歪みの是正、公正性の改善などを目的とした包括的な新しい税制を導入しました。基盤の広い付加価値税である物品・サービス税 (Goods and Services Tax:GST) が、従来輸出業者や製造業者に課税されてきた卸売上税などを含む非効率な間接税に取って代わりました。また増加した間接税の負担を補填するために個人所得税に対する課税率の上限が引き下げられました。 このように連邦政府の97/98年度の実質財政黒字復活以降、公的対外債務は減少しているものの、民間部門において対外借入れの増加が続いているため、対外債務残高は増加しています。2000年第3四半期のネット対外債務残高は1500億ドルで対GDP比45.6%、グロスの同残高は2200億ドルで同68.3%に上ります。対外債務の期間構造は、近年の銀行による海外借入の増加を反映し、期間1年以内が53%(内3ヶ月以内が36%)を占めるなど短期への集中が顕著です。 財政収支改善に伴い貯蓄率は上昇傾向にありますが、構造的な貯蓄投資ギャップが解消されるには至っておらず、経常収支の赤字が継続しています。2000年の経常収支はGDPの4.3%に相当する155億ドルの赤字でした。多額の対外債務利払負担のために所得収支は近年GDPの3%に相当する高水準の赤字で推移しており、経常収支赤字を恒常化させ対外債務削減を難しくする一因となっています。 貿易構造は依然として、一次産品が主要な輸出品です。2000年度の主要輸出産品には、石炭(93億㌦)、原油(76億㌦)、鉄鉱石(44億㌦)、アルミニウム原料(41億㌦)、金(30億㌦)、小麦(38億㌦)、牛肉(36億㌦)、羊毛(33億㌦)などが含まれ、輸出総額1400億ドルの約60%前後を占めています。貿易収支も改善されてきたとは言えなお100億ドル前後あり、2002年は旱魃の影響で農産物の輸出が落ち込み拡大傾向にあります。 為替の推移をみてみるとアジア通貨危機の起った1997年7月の豪ドル/円の100円をピークに下落基調にあります。東南アジアへの輸出依存度が高いことと通貨アタックを受けた国々が経常赤字国で、短期資金に依存する割合が高かったということが嫌気されました。しかし、この間もオーストラリアは5%前後の成長を達成し柔軟でショック吸収力の高い経済構造を持つことを証明しました。ただ、為替は、IT情報革命が進展し、オーストラリアは資源通貨、オールドエコノミー通貨と取られて省みられることがなく依然下落基調を続け、2001年央に55円をつけました。その後ITバブル崩壊と伴に資金のアメリカ一国集中が是正され、行き場を失った資金がドル以外の高金利通貨や金を始めとする貴金属に流れ、貴金属相場が湾岸戦争以来の上昇基調を継続するようになりました。 金が豪州の貿易に占める率はわずかに3%、鉄鉱石や石炭などの資源全体でも、豪州の国内総生産に占める割合は約5%に過ぎなませんが、市場は“豪ドル=資源通貨”とのイメージを持っていることや、豪州は国内の資金不足を外資で補うため高めの金利水準を維持しています。現在の豪州準備銀行の政策金利は4.75%に設定されています。 金利高が国外投資家を引きつけ、2002年に豪州国外で発行された豪ドル建て債券の総額は149億豪ドル(約1兆600億円)となり、前年の約2倍に拡大しました。今年に入ってからも豪州の大手、ウエストパック銀行が年利回り4.35%の豪ドル建て債券を日本の投資家向けとしては過去最高の総額15億豪ドル(約1118億円)分発行。他の大型起債も相次ぎ豪ドル高の支援材料となっています。 国内経済が他の先進国に比べて堅調なことも、豪ドル高の要因となっています。豪州の成長率は2002年3.8%。金融機関の多くは今年も3%を超えると予想。米国による対イラク武力行使の有無にかかわらず、豪州経済が日欧米に比べて堅調である構造に変化はなく、国外投資家を引きつけ続けるとの声は少なくありません。 豪ドルの一本調子の値上がり予想に対しては、豪ドル高を映して豪企業による米企業の買収などが活発化し、米ドル需要が増加しています。さらに急騰した住宅価格が落ち着き始めたことで、金利の引き上げ観測は遠のきました。また、大量に国外で発行された豪ドル建て債券の利払が今後、所得収支を圧迫し経常赤字幅を増大させる可能性もあります。 豪ドルの買い材料として必ず言われるのは、鉄鉱石、石炭など天然資源が豊富で、原油価格の上昇に経済の抵抗力があるという「資源通貨」の強みです。イラクがクウェートを侵攻した1990年夏、豪州の資源通貨が買い材料となり、豪ドルは一時、1豪ドル=0.84米ドルまで上昇しました。 しかし、イラクのクウェート侵攻などで急騰した豪ドルは戦争懸念によって高騰した商品相場の下落と伴に、その後まもなく反落し91年初の湾岸戦争を挟み93年まで長い低下局面に入りました。1996,97年のように日本では数年おきにオセアニア通貨ブームが起きています。今回の豪ドル上昇は湾岸戦争などと同じく投機筋主導の一時的な動きにとどまる可能性が高いと思います。
お礼
すごく充実した回答、ありがとうございます。 今日3/14日現在、豪ドルは昨日より2円以上急落しています。開戦が一時遠のいたことが原因でしょうか。 ユーロもかなり下げている一方、ドルが上げています。 本日の各国為替の動きは、非常に参考になりますね。