鉄道従事員です。
まず、事故の影響についてですが、朝発生した事故の影響である、と言う確証がありますでしょうか。
実際に、考えられる状況が複数あります。
1.朝発生した人身事故の影響が残っている場合
2.人身事故の影響は昼間に回復したが、その後再び何らかのトラブルが発生した場合
3.乗り入れをしている場合、他社の影響が起きている場合
等です。それぞれ簡単に書きますね。
1.朝の影響
他の方も書かれていますが、全列車が同じ両数で運転している、と限りません。また、再開はこの時間から、とした場合にちょうど良い位置に電車がいるとは限りませんよね。
何時から全面運転再開、とするには、路線全部、あるいは運転を区切っているのであればその最長区間を一括で運行見合わせにしなければ、なかなか難しいです。
以前はこの方法で運行を停止し、再開はその場からダイヤ通り、その代わりある程度の本数ごとに間引き運転をしたり、設定された区間最高速度以内で普段よりも高速運転をし、ダイヤ回復を図る、と言うのが普通でした。
この時間から、としたくても、必要な駅に電車が居ないと言うのが普通だからです。全列車が各駅停車で、一定間隔、例えば3分ヘッドで運転しているというのであれば、不可能ではありません。事実以前の山手線は、運転が止まったら、再開する際に各列車が運行番号を変更し、再開を決めた時点で本来居るはずの列車位置に運行番号を合わせ、決めた時間からはい再開、と言う方法でした。
しかし、私鉄は一般的にそうはいきません。まずは種々の種別がありますよね。そして運転間隔も一定ではありません。そのため、何時の列車から再開する、と決めても必要な所に必要な列車が居ない、と言うことになります。電車があっても、事故で乗務員がその駅まで来ていないため、事実上運転できない列車が出ることもあります。
電車はあり、乗務員は居るけど、10量運転となる列車の位置に6両編成が居る、等というようなこともあります。
物理的にこの時間から運転再開、と言っても不可能なことも多くあるのです。
また上手い具合に列車が統べていたとしても、種別が異なると言うことも多いです。
例えば、あなたが乗っていた電車が、事故で8時に停止したと考えて下さい。回復に1時間かかったので、運転再開は9時の列車からとする、9時事点でその駅にいる電車に全列車の列車番号を変更すると司令が指示します。
これによってあなたは次の駅で降りる予定で乗った各駅停車でしたが、運転再開の関係で、急行電車に種別が変更となるとします。
「お客様にお知らせ致します。事故の処理が終わりましたので、9時より、9時に電車が居る位置に合わせて運転を再開致します。この関係で、この電車は急行電車となりますので、急行の通過駅をご利用のお客様は、停車中の駅でお降り戴き、あとから参ります各駅停車にお乗り換え下さい」
と案内放送があったら、どう思いますか。「何で急行にするんだよ。このまま乗って行かせろよ」と思う方が普通かと思います。
事実過去にダイヤを戻すため種別変更を行なってきた際、駅にこうしたご意見が多く寄せられています。
そこで最近は、事故で停止する区間を短くし、折り返し設備がある駅までは運転するというのが多くなりました。
例えば私の会社で無いですが、通勤で利用する西武池袋線の駅を例にして書きますね。列車の運行が停止し、2時間滞ったとします。発生場所は小手指-狭山ヶ丘だとします。この場合、保谷、清瀬、所沢、小手指に、折り返し設備があります。
列車の運行の乱れを最小限にするため、池袋-小手指間をダイヤ通りに運転させます。小手指以遠に行く飯能行きは、小手指行きに変更されます。
こうしてダイヤを確保し、事故処理が終わると、直通を再開します。しかし、ダイヤが事故発生場所あたりは大幅に遅れているため、電車のやりくりが利かなくなり、小手指以南の正常運転集の列車間に大幅に遅れた列車が割り込むこととなり、結果として正常運転していた区間の列車まで遅れが出てしまう(遅れを貰うと言ったりします)ことになります。
そして遅れた列車も含めて池袋で運用を変更し、ダイヤ回復をしようとしますが、遅れ幅が大きければ大きいほどダイヤは回復せず、完全に戻るまでの時間が延びる、と言う結果となるのです。
しかも大幅な変更がされているので、規則や法律で決められた定期点検が出来るよう組んであった運用パターンが大幅におかしくなるので、各車両が最後に収容される場所が予定とは異なってしまい、翌日以降もダイヤは合ってるのに両数が異なる電車が来たりすることもあります。
ご質問のように、何時の電車から再開、とするには、
(1) 全列車が同じ種別である
(2) 運転間隔が一定である
(3) 編成の両数が全て同じである
と言った条件が揃わないと、完璧に決めた時間の電車から再開、は難しいです。
2.人身事故の影響は昼間に回復したが、その後再び何らかのトラブルが発生した場合
人身事故のあとの遅延回復自体は、数時間で回復した物の、その後に再び何かが起きる、と言うこともあります。
実際に私の経験では、午前10時前後に人身事故が発生して、約30分で運転を再開、影響は1時頃に回復したものの、4時過ぎに再び別の場所で人身事故となり、夕方のラッシュ時間帯にはまだ20分ほどの遅れが残ったという経験もあります。
3.乗り入れをしている場合、他社の影響が起きている場合
夕方帰宅時の遅れが、朝の事故の物ではない可能性として、他社線の影響というのがあります。
先述の例で考えましょう。西武池袋線は、練馬で分岐し、西武有楽町線の小竹向原駅から、有楽町線と副都心線に乗り入れています。そしてメトロのこの2線は、東武東上線にも乗り入れています。
例えば、朝東武で発生した人身事故の影響は、乗り入れ各線も含めて午前中に回復したものの、午後2時に西武線内の保谷駅で人身事故が発生して、西武線のダイヤが大幅に乱れた、とします。
事故は飯能発の急行池袋行き(西武線内の運転列車)だったけど、その後に小手指発各駅停車の新木場行き、飯能発各駅停車の渋谷行き(メトロ線内急行)が居て、それぞれ清瀬と所沢で運転を大幅に見合わせた、とします。その後58分後に運転再開はしたが遅れは最大58分程度であったとします。
この運転見合わせ中の時間は、メトロは西武への直通を中止しますが、副都心線内、有楽町線内を運転していた西武線内行きの電車を、その時点で停車した駅で運転を見合わせることは出来ません。そうするとメトロが止まってしまい、場合によっては東武にまで大幅な影響が出ます。
普通は西武線内へ行く電車を小竹向原で運転を打ち切って、和光市-小竹向原の間を臨時回送で走らせる、あるいは和光市行きに変更することになるでしょう。こうすると、和光市-小竹向原間に予定外の臨時列車が走り、ダイヤが乱れます。このダイヤ乱れが、東武東上線内への直通電車を遅らせ、東武線内を遅れて走る、途中での接続をする東武の電車まで遅れる、と言うことが発生します。
そして西武が運転再開をすると、大幅に遅れた西武からの直通電車が入ってきて、メトロ線内の遅れが酷くなる、そしてその大幅に遅れた電車が東武に乗り入れ、あるいは接続電車を待たせ、東武が遅れる、と言うことになります。
お客様にとって乗換無しで行ける相互乗り入れは、複雑になればなるほど、自社の遅れが乗り入れ先の路線に乗り入れている他社の路線内まで遅れさせてしまう、と言う悪循環を生みます。
このように、帰宅時の遅れが朝の物である場合、まるで理由が異なる場合というのは、頻繁に起こります。
ご迷惑をおかけしますが、ご理解の程をお願い致します。
お礼
長文ありがとうございました。