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インフルエンザ検査キットの仕組み
今日、次男が熱が出たので知り合いの医院に行ってインフルエンザ検査キットなるものでA型と判定されました。 鼻の粘膜を取っての検査でしたが、これはどのような仕組みなんでしょうか? 開発はアメリカの会社でした。
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Jagar39です。 >A,Bは判定できるのですが、それが香港型、ソ連型と判別できないのはどうしてでしょう? A型インフルエンザにはHA蛋白の型で1-16、NA蛋白の型で1-9の亜型があります。このHAとNAの組み合わせで144の亜型がある計算になります。 そのうちヒトの世界で流行しているのはH1N1(ソ連型)とH3N2(香港型)の2亜型です。 つまり検査キットでソ連型と香港型を識別するためには、同じ原理の検査キットにH1に対する抗体とH3に対する抗体を仕込めば良いわけですが・・・ ま、これで識別検査ができるくらいならとっくの昔にそういうキットが市販されていますよね。 このキットが上手くいかない理由は、これらのH3やH1の蛋白のタイプの変異が激しいためです。 話は変わりますが、このHA蛋白というのはウイルスが細胞に感染する際に働く蛋白です。つまり、この蛋白に対する抗体があれば感染防御ができるわけです。 ですからインフルエンザの予防接種(ワクチン)は、ウイルスのHA蛋白を精製して作られています。H1、H3とB型インフルエンザウイルスのHA蛋白を精製したのがワクチンです。 このワクチン、同じH1やH3でも流行するタイプが変異していればあまり効かないため、毎年流行するタイプを予測して、予測タイプに近い抗原型を持つウイルス株を種ウイルスにして製造されている、ということは聞かれたことがあると思います。 要するに今年流行したH1とH3のウイルスを種ウイルスにしてワクチンを作っても、それは来年流行するウイルスには効かない可能性があるわけです。 これとソ連型香港型の識別キットができない理由はまったく同じです。 すなわち、例えば今年流行したソ連型(H1)と香港型(H3)のウイルスで抗体を作製してキットに仕込んでも、来年流行するソ連型と香港型のウイルスは、その抗体に綺麗に反応しない可能性があるわけです。 これは臨床現場で行う検査キットという制約がある以上は、イムノクロマトグラフィーだろうがEIAだろうが同じことです。 この"制約"とは、要するに「ウイルスを増やすことができない」という点です。ウイルスは培養細胞(犬の腎臓由来の細胞が使われています)や発育鶏卵(鳥インフルエンザはこちらの方がよく増殖します)を使ってウイルスを増やせば、きちんと識別する方法はあります。 普通は赤血球凝集阻止試験という検査をします。インフルエンザウイルスには鶏の赤血球を凝集させる性質があるのですが、その性質はまさにHA蛋白によるものです。(そもそもHAはヘマグルチニン:赤血球凝集素の略) なのでH1やH3に対する抗体を用意して、増殖させたウイルスと反応させ、その反応物と赤血球と混ぜてやれば、ウイルスがH1であればH1抗体と反応して結合し、赤血球を凝集させることはできなくなります。ですから赤血球が凝集すればH1ではない、凝集しなければH1である、という判定ができるわけです。 普通はH1とH3の両方の試験を同時に実施しますから、結果を比べれば変異によって多少抗体とのマッチが弱くても判定はできる、というわけです。 医療現場で行う簡易検査はウイルスを増やせず、患者から採取した材料の中にあるウイルス量だけで判定しなければなりません。とするとそもそも抗体とウイルスが反応して免疫複合体を作っても、それは本来とても"目で見て判定できる"ようなレベルにはならないわけです。 それを酵素反応を使うことによって「増幅」させているのが、この手の簡易検査用のキットなのです。 ウイルスと抗体の量そのものが十分多ければ精密な判定ができるものを、量は少ないままで反応だけを増幅させているので、元々それほど高い感度を期待できるものではありません。インフルエンザの検査が発症後間もないと陰性になってしまう、という話もご存じだと思います。これは発症間もない時期は患者から排泄されるウイルス量が少なく、検査キットの検出限界以下のウイルス量しか排泄していないと陰性になってしまう、という意味です。 (なのでどのキットにも「本検査の陰性はインフルエンザを否定するものではありません」という但し書きが付いています) また、それではと酵素反応の増幅率を上げて(酵素と基質の量を増やしてやれば簡単に増幅率が上がります)検出感度を上げると、"ノイズ"も一緒に増幅してしまうので、「擬陽性」が増えてしまいます。 というわけで、医療現場でソ連型と香港型を識別できる検査キットが市販される望みは、今のところ薄いです。そのうち良い方法が出てくるかもしれませんが。世の中には頭のいい人がたくさんいて、私達凡人には思いもつかない方法で高感度かつ高精度な検出法を開発してくれるかもしれません。 ま、一言で言えば「同じH1やH3の中でも抗原性は激しく変異しているので、H1やH3に間違いなく反応する抗体は作れない(もしくは非常に困難)」ということです。 それはとりもなおさず、HA蛋白をコードしている遺伝子が激しく変異していることを意味しています。 ヒトのインフルエンザではなく鳥のインフルエンザですが、つい先週愛知県で出た鳥インフルエンザのプレスのリンクを張ります。 http://www.pref.aichi.jp/nourin/nousuibu/webpress/toriinhuru/infuru01.pdf このプレスの1ページ目の2の(3)に、ウイルス遺伝子検出検査の成績が出ています。この検査はPCRと呼ばれる方法による検査で、「特定の遺伝子を増幅させることによって検出する」という手法です。 これは詳細は長くなるので省略しますが、目的の遺伝子の塩基配列が変異していれば検出に失敗することがあります。 この検査ではH5もH7も陰性だったとあります。このウイルスは結局H7だったのですが(これは上で述べたように増殖させたウイルスを赤血球凝集阻止試験で判定しています→2の(5)のところ)、遺伝子検査で検出に失敗したのは、その部位に変異があったんでしょうね(検査した人の腕のせいでなければ)。 ちなみに現行のキットでは、インフルエンザウイルスの変異が少ない蛋白を検出しています。全てのキットが同じ蛋白を検出しているのかまでは知りませんが、NP(核蛋白)を検出しているキットが多いようです。(つまり抗NP抗体を仕込んでいる) 上のプレスで「A型の遺伝子検査」も、やはりNPをコードする遺伝子を検出しています。こちらは変異が少ないので検出成功率は高いです。
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ウイルスに専門知識を有する者です。 参考URLにエスプラインというイムノクロマトグラフィー法による検査キットの取説へのリンクを張っておきます。このキットはインフルエンザ用のものではありませんが、原理はまったく同じです。このメーカーから同じエスプラインシリーズでインフルエンザ用のキットも出ていますが、キットの外見までほぼ同じです。 要するにこれらのキットは、検体(鼻汁や咽喉頭拭い液)にインフルエンザウイルスの"抗原"の存在を検出するものです。 原理は参考URLに張ったpdf文書の7ページ目に図解入りで丁寧に解説されています。文書中のHBsをインフルエンザウイルスに置き換えればほぼそのままそれがエスプライン・インフルエンザABキットの測定原理になります。ま、インフルエンザABはAとBの2種のウイルスを同時に検査するので、試薬類は2セットが1つまキットに仕込まれているのですが。 ちなみにエスプライン・インフルエンザABのパンフレットはこちらです。 http://www.fujirebio.co.jp/support/operation/espline/pamphlet.pdf 操作方法などは詳しいですが、測定原理は参考URLのHBsキットの文書の法が詳しいです。 要するに、検体中にインフルエンザウイルスが存在するかしないかを判定するためには、検体中の目的ウイルスを"捕まえる"ことが必要です。 どうやって捕まえるのかというと、それは抗体を用いて捕まえます。 抗インフルエンザ抗体をキットに仕込めば、検体中に目的ウイルスがあれば抗体反応により結合します。 ただ、捕まえただけでは人間に判定することはできません。ウイルスは目には見えませんから、人間の目に見えるように細工する必要があります。 そこで、ウイルスを捕まえる抗体にあらかじめ"酵素"をくっつけておきます。これを「酵素で標識する」という言い方をします。 酵素というのは、一言で言うと「特定の化学反応を促進させる触媒」です。ここで標識に使う酵素は、ある物質(これを"基質"という)を青く発色させる酵素です。 なので最終的に基質と反応させれば、ウイルスを捕捉した抗体に標識されている酵素によって、基質が青く発色するので、発色すれば「インフルエンザウイルスがいる」ということになります。 もしウイルスが存在しなければ、標識抗体も基質液も流れていってしまうので発色することはありません。 この手のキットはたくさんありますが、大半がこのエスプラインと同じイムノクロマトグラフィー法によるものです。 下にネットで検索したインフルエンザ検査キットの取説文書へのリンクを張っておきます。 ベクトン&ディッキンソンの製品ばかりリンクしたのは、検索でこれらが上位に来たからで他意はありません。でも、ちゃんと測定原理まで丁寧に書かれた文書をネットに掲載しているメーカーは多くないのですけどね。 ベクトン&ディッキンソン 製品情報(迅速検査製品) http://www.bdj.co.jp/poct/index.html キャピリア(ベクトン&ディッキンソン) http://www.pharma-influenza.info/pdf/fluab-tenpu.pdf ディレクティジェン(ベクトン&ディッキンソン) http://www.bdj.co.jp/pdf/48-dire-insert2.pdf エグザマン(ベクトン&ディッキンソン) http://www.bdj.co.jp/pdf/48-fluexzaman-insert.pdf この中ではディレクティジェンだけがEIA法(エンザイムイムノアッセイ法・略して酵素免疫法)によるキットです。販売中止になったようですが。他のキットが検体を調整して滴下するだけで検査できるのに対し、このキットはステップ数が多いので、医療現場で嫌われてあまり売れなかったのでしょう。 まあ原理は同じです。抗体によってウイルスをキャプチャーし、酵素を使って発色させる、ということです。
お礼
大変、詳しいご回答、ありがとうございます。 これで、大体の構造がわかりました。今は15分で判定できますから、あのキットは重宝されてるようですね。もうひとつだけ、質問させていただいてよろしいでしょうか?A,Bは判定できるのですが、それが香港型、ソ連型と判別できないのはどうしてでしょう?おそらくEIA法でやれば、わかるのかな?と思いましたが、現場ではちょっと無理なようですね。
- tunertune
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1.粘膜ぬぐい液と試薬(標識抗インフルエンザ抗体)を混ぜます。 2.キット(細長い紙みたいな板)の滴下部にたらします。 3.液が板上を毛細管現象によって浸透していきます。 4.診断ラインにそれぞれの抗インフルエンザ抗体が吸着されており、1で形成されたウイルスと抗体がくっついた状態のものが補足されます。 5.診断ラインに線がみえます。 キットによって標識が違うと思います。 例えば、金コロイドであったりアルホスであったりとか。
お礼
ありがとうございました。
- morito_55
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詳しい仕組みはわかりませんが、鼻や喉の粘膜から綿棒で採取して、それを薄め液に溶かします。 溶かした液を測定容器に垂らすと、A型・B型のウィルスに反応するところに線が浮き出てきます。 その線の出方によって、A型・B型インフルエンザとわかります。 A型・B型のところに何も表示されなければ、インフルエンザではないということになります。
お礼
早速のご回答、ありがとうございました。
お礼
詳細なご説明、ありがとうございました。 この辺の知識は皆無ですが、基本的に、自分自身で理解できたと思っております。 本当に感謝です。