まずTIGER1さんも質問にお書きで、またrouseiさんもお答えのように、セラミックスは基本的に共有結合からなっています。セラミックスを「共有結合からなる無機物質」と定義することもしばしば行われます。
粒子内部の結合が共有結合である点についてはNo.3のお礼欄にありますように、既にTIGER1さんがご理解の通りです。
セラミックスの粒子同士の結合ですが、これまた基本的に共有結合からなります。「石垣の石」(=粒子)同士が直接に結合している場合もありますし、粒界相を介して接合することもあります。前者では界面付近の原子が共有結合することで粒子が結びついていますし、後者では粒子-粒界相-粒子間が共有結合することでやはり粒子同士が結びついています。
さて隣り合う粒子同士の結晶方位は必ずしも揃っているとは限りません。と申しますか、揃っているならそれらは完全に接合し一つの粒子になってしまいます。方位が揃っていないために二つの粒子に分かれるわけです。
しかし方位が揃っていないにしても、それらの間では何らかの結合が存在します。粒界付近の原子は適当に動いてエネルギー的に安定な位置に落ち着きます。原子の並びの乱れは免れませんから、完全に結合している状態よりエネルギーはどうしても高くなります。それでも全く結合していない状態(完全な自由表面が2枚)よりはエネルギー的に安定なわけであり、そのために粒子は結びつくのです。
粒子の間に粒界相が存在しても話は同じです。粒子-粒界相、粒界相-粒子が共有結合しています。
焼結体の特性はおっしゃる通り、粒界相の性質と大きく関連しています。粒界の方が機械的に弱い場合が多いのですが、粒子そのものが弱い場合もあります。実際に破壊試験をしてみると、前者では破面が粒界を通過する「粒界破壊」、後者では粒子そのものが壊れ破面が粒内を通過する「粒内破壊」になります。
他でも例えば、窒化アルミニウムでは焼結の間に、粒界相の大半を焼結体の外部に排出してしまうことで高い熱伝導率を得ています。(粒界相が焼結体内に残留すると熱伝導率が下がってしまいます。一般に粒界相部分は粒内より構造が乱れていて熱伝導率が低いからです)
また窒化ケイ素の場合、高温(だいたい1000℃くらい)になると強度が下がりますが、これは粒界相(おっしゃる通り、SiO2を主成分とするガラスのような物質)が粒子そのものより先に軟化するからです。粒界相の量(助剤の量と言ってもよい)を多くすれば焼結は容易になりますが高温での特性が悪くなります。余談になりますが窒化ケイ素では粒界を焼結後の熱処理で結晶化させ、強度や高温特性の向上を図った例もあります。
他にZnOのような非線形抵抗素子などでも粒界相の性質が全体の特性を支配します。(ここは専門でないので自信なしにさせてください)
No.2のご回答で「電気的な力」とあるのは正確でないと考えます。セラミックスを構成する元素間の結合は基本的に共有結合(敢えて言うなら「量子力学的な力」)であり、クーロン力で結びついているわけではありません。
No.3のご回答では、セラミックスは必ずしも金属と非金属の組み合わせで成っていない点にご注意ください。もちろん金属元素を含むセラミックスもありますが、結合が強い(≒ヤング率が高い、脆い)のは共有結合に起因するものであり、「金属-非金属」の結合の特性とは直接に関係しません。(金属-非金属の結合が強いのであれば、絶縁基板の回路箔やターボチャージャの軸部の接合に苦労しないところです)
お礼
お礼をお伝えするのが遅れ、申しわけ御座いませんでした。 非常に詳しいご説明を頂き有り難うございました。 セラミックスの場合、粒子-粒界相、粒子内ともに共有結合であること、粒子同士の結晶方位が異なっているため粒子が一つにならず分かれているがそれでも強い力(共有結合)で結びついていることが分かりました。 窒化ケイ素の場合、助剤を増やすと焼結する温度が下がり、高温特性が落ちるというのは、極端な言い方かも知れませんが、助剤が溶けてくっつき、窒化ケイ素自身は焼結していないことを表しているのでしょうか。 いろいろ教えていただき有り難うございました。