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猿蟹合戦の法的解釈
変な質問で申し訳ありませんが、芥川龍之介の短編小説で、さるかに合戦のその後の話がありました。そこでは、蟹は仇をとったことで、処刑になるという話でしたが、あのような行為は、今日の日本の法律ではどのような扱いになるのでしょうか。猿を原告とし、蟹を被告とした場合、やはり死刑、もしくはかなりの重い罰になるのでしょうか。ご意見をいただければと思います。
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年末に面白いことを考えますね。 一般的に、物語やドラマでは当然のごとく仇討(特に忠臣蔵とか(笑))みたいなもんのが多いですが、現代国家の大半はこのような行為を禁じています。なぜなら、みなが勝手に私怨を晴らしてしまうと秩序維持ができなくなるからです。ありていにいえば、動物と変わらない世界になる、ということでしょう。 そこで、この本来的には私人(一般市民)が持っている報復の権利(殺人の権利)、みたいなものは国家に与えるということにしました。ですから、刑罰権は国家に帰属する、と考えるのです(いわゆるルソーの社会契約説)。ちなみにその権利を返してくれというのはダメです(笑)。 つまり、仇討というのは初めから正当性がないものなのです。「蟹の仇打ちはいわゆる識者の間にも、一向好評を博さなかった。」のはそのためです。ただの犯罪ということですね。 そこで刑法上どうなるかというと、全員、殺人罪の共同正犯です(刑法199条、60条)。芥川の小説では、蟹が主犯格なので量刑が重く、死刑、その他の者は無期懲役になっていますね。 まあ、この小説の量刑自体は、理論上は日本の現行の法律上でも可能ですが、現実的には被害者が一人ですし、親が殺されたということでやや情状酌量される可能性もあり、ここまでは重くはならないような気がします。まあ、後は反省の度合いで大きく変わると思いますが、現実なら、蟹は悪くとも無期懲役程度になるんじゃないでしょうか。 なお、「最後に青柿を投げつけられたと云うのも、猿に悪意があったかどうか、その辺の証拠は不十分である。」とありますが、この部分は、殺害動機とともに猿の悪質性を示して情状酌量を狙ったものといえます。まあ、効果的ではなかったようですが。 なお、親蟹はすでに死んでいるので、仇討は正当防衛にも過剰防衛にもなりません。 なお、「蟹は蟹自身の言によれば、・・・猿は熟柿を与えず、青柿ばかり与えたのみか、蟹に傷害を加えるように、さんざんその柿を投げつけたと云う。しかし蟹は猿との間に、一通の証書も取り換わしていない。よしまたそれは不問に附しても、握り飯と柿と交換したと云い、熟柿とは特に断っていない。」とありますが、証書がなくても契約は契約ですから、その主張をすることはでき、また、品質について定めがない場合には、民法上、中等の品質のものを渡すことになる(民法401条1項)ので、青い柿しか渡さない猿は、民法上は債務不履行ではあった、ということはできます。 では、よいお年を。
お礼
早速の回答ありがとうございます。 なるほど、いかなる報復も許されないという面からの説明がとても分かりやすかったです。昔話もそのような視点で考えると、面白いかなと思いました。 新年明けましておめでとうございます。