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小指と薬指を別々に動かせるようになるというのは、神経的には何が変わるのでしょうか?
もともと、小指と薬指は同じ神経で支配されていると読みました。 そして、それが神経が可塑性(というのでしょうか)を起こして別々に神経が通るようになる、と。 しかし、具体的に神経はどのようになるのかが分からないでいます。 この可塑性が起こるときというのは、具体的にはどのようなことが起こっているのでしょうか? それとその可塑性を起こしやすくする条件についてなのですが、 小指を動かしたときにいっしょに薬指も動いてしまうという場合、 訓練をするときは薬指がつられない範囲で小指の練習をするのと、 薬指がつられても小指を稼動域いっぱいまで動かすようにして訓練をするのとでは、どちらのほうが効果は高くなると思われますか?
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こんにちは。 薬指と小指といいますのは別に同じ神経に支配されているというわけではないですし、バラバラに動かせないということもありません。ですから、薬指を伸ばした状態で小指を曲げるというのは、これはちょっと練習をすれば誰にでもできることです。もちろん運動学習でありますから、少なくとも中枢系では可塑的変化による運動記憶回路の形成は行われなければなりません。ですが、指の筋肉と接続する末梢運動系では、「シナプス可塑性」や、ましてや「神経接続の形態変化」などが獲得される必要は一切ないはずです。 感覚入力や運動出力などが繰り返されることによって神経接続に発生する新たな変化を「シナプス接合の可塑的変化」といいます。 そしてこれには、 「伝達能力の可塑性」と 「形態変化の可塑性」があります。 このシナプス可塑性といいますのは、神経接続を構成する細胞同士で信号のやり取りが行われることによって発生するものです。信号のやり取りが増えることによって機能が向上したり新たな接続が生まれたりするのは「正の可塑性」であり、逆に信号の伝達が少なくなったために使われなくなったり衰退したりするのは「負の可塑性」ということになります。 「伝達能力の変化」といいますのは、信号伝達が行われることにより、細胞間で形成されているシナプス接合において「伝達物質の分泌量が増える」「伝達物質を受け取る受容体の感度が上がる」などの変化により、「シナプス間での信号伝達の効率が良くなる(正の可塑性)」ということであり、もちろん、逆に使われなくなりますと負の可塑性によって元に戻ってしまうことは幾らでもあります。 「形態的変化」には神経線維の「発芽・進展・新生・消失」などが伴い、接続形態そのものが変化するものを言います。そして、こちらは主に新しい接続の形成や失われた機能の「修復」及び「補助」などに働きます。 このように、我々の神経といいますのは頻繁に使うことによって「特定の機能の獲得」やその「能力の向上」などが図れます。そして、この神経接続におけるシナプスの可塑性が記憶され、再現できるようになることを「学習」といいます。 運動神経系におきましては、「運動の理屈」や「運動の手順」といったものは大脳や小脳などの中枢系に学習されるものです。では、ここに「運動命令の出し方」が学習されますと、末梢の各運動神経に正しい信号が送られるようになりますので、これにより信号のやり取りが活発になります。運動神経終末と筋肉細胞受容体の間では「正の可塑性」が獲得され、運動命令がそれまでより筋肉に伝わりやすくなります。 但し、このような「中枢系の運動学習」や「末梢系の接続強化」といいますのは通常の訓練でも十分に鍛えてやることはできるのですが、神経線維の発芽や新生を伴う「シナプスの形態変化」といいますのは、これはトレーニングではなく、基本的には「身体の機能損傷によって誘発されるもの」です。 これがどういうことかと言いますと、古典的条件付けにおいても発生することは実験で確かめられているようですが、飽くまでそれは「身体の機能損傷を補う目的」で発生するものであるため、五体満足で正常な神経接続が健在の状態では、それを押しのけてまで新しい神経回路を形成する必要性はほとんど生まれないということです。 怪我などで片目の視力を失ってしまったひとの場合、反対側の視覚系にはこれを補うためのはっきりとした形態変化が獲得されています。また、我々が目の治療で眼帯などを付けた場合でも、これを補助する可塑性は短期間でも迅速に発生します。ですが、目が治って眼帯を外してしまうならば、その機能は何事もなかったように消失してしまいます。 では、このように身体に補うべき機能損傷が全くない健康状態であります場合は、果たしてどの程度の訓練や条件付けが行われたとしましても、これによって神経系に新たな機能回路を作り出すなどという芸当はまず不可能と考えて良いと思います。従いまして、末梢系に新たな可塑性が獲得されることによって小指が曲がるようになるなどといったことは断じてありませんし、訓練によって指の筋肉の接続を変えてしまうなんてのは通常できることではないんです。 まして、「小指曲げ」なんてのは練習をすれば誰でもできることであり、元よりこれはシナプス可塑性などというレベルの話ではないです。事実、私は「小指曲げ」を始め、「中指薬指を付けたまま小指と人差し指を開く」、あるいは「四本の真ん中だけを開く豚足ピース」、そして、この「豚足ピース」の状態で人差し指と小指を曲げる「グワシッ!」、全部できます。小学校のときに練習しました。 薬指と小指は別に同じ神経によって支配されているというわけではありません。薬指と小指が同じ筋肉を使っている場合はひとつの神経信号によって動きますが、それぞれの指を曲げ伸ばしするための筋肉にはまた別々の神経が通っています。従いまして、神経接続に小指を曲げるための新しい形態変化が獲得される必要は一切ありません。 我々は誰でもグー・チョキ・パーをできますが、これはそれぞれの指の筋肉には別々の神経が繋がっているということです。そして、このグー・チョキ・パーを作るための「運動信号の組み合わせパターン」を学習しているのは「小脳」です。 小脳といいますのは大脳皮質の運動命令を補正する働きをしています。運動命令を出すのは大脳ですが、小脳にその運動命令の「補正パターン」が学習されますと、大脳は「チョキを出せ!」と命令するだけで、あれこれと考えなくとも簡単にチョキが出せるようになります。このようなものを「熟練運動記憶」といい、我々が身体で習得したキャッチ・ボールや自転車の乗り方といったものはみなその「運動手順」が小脳に学習されています。 そして、小脳といいますのは元々運動記憶回路を獲得するための学習中枢でありますから、ここでは機能損傷という条件は一切必要ありません。訓練さえすればその可塑性によって幾らでも新しい運動回路を作ることができます。 物を掴んだり放したり、我々は四本の指を同時に動かすときには「総指伸筋」や「浅指屈筋」などを使っています。ですから、手を開いた状態で小指を曲げようとすると薬指が釣られてしまうのは、この筋肉の配置のせいだと思います。 では、小指だけを曲げようとするならば、総指伸筋で指を伸ばしたあと、小指屈筋を動かし、尚且つ薬指伸筋で真っ直ぐに踏ん張れるように、それぞれの筋肉に対して「同時命令」が送られれば良いわけです。このためには、この「同時命令パターン」が小脳に学習される必要があります。 練習方法としましては、何かで固定するというのが有効だと思います。何故かといいますと、固定をしてでも「ちゃんとできた状態」が繰り返し体験されますならば、小脳での「同時信号の学習」にはこちらの方が適しているからです。 薬指が曲がってしまわないようにテーブルなどの上で固定してやります。この状態で小指だけを曲げましたら、テーブルから手を離し、薬指が釣られないように踏ん張ります。これを繰り返し練習してやれば、やがてこの運動手順が小脳に学習され、驚くほど簡単にできるようになります。 真ん中二本だけをくっ付けたまま小指と人差し指を離すというのは、この真ん中二本を反対側の手で摘んでおけばいいですね。小指を人差し指を目いっぱい開いたら摘んだ指を放します。最初は釣られて二本指は開いてしまいますが、ちょっと練習をすればすぐにできるようになります。 「豚足ピース」も同様に固定する方法で習得できますので、これが上手くできましたなら、今度は小指曲げと組み合わせるバリエーションも可能になります。すぐにできるようになりますから、試してみて下さい。 ですけど、どうして神経系の勉強までしてこんなものを覚えたいんですか。私は全部できますが、はっきり言って何の役にも立たないですよ。
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- Bakajun
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確かに,薬指と小指が別々に動かす事ができたら,パソコンの入力するときや,ギターを弾いたり,ピアノを弾くのに便利ですよね。 これは,練習,訓練をすれば出来るようになるものです。
お礼
ありがとうございます。 たしかに便利ですね。できることならこの神経の仕組みをほかにもいろいろと応用してみたいとも思っています。そのためにもそもそもの原理である神経の勉強をしっかりとやっておきたいと思ってます。 ありがとうございました。
何故その様な事をしてみたいのでしょう? 何か特別な目的でもあるのでしょうか? あ、単なる興味です。 私も身体の働きには興味を持っていて、小指と薬指の神経については興味があります。 唯、私は、それを別々に動かそうとかは余り思わないのです。 小指の働き(役目)を十分果たさせよう・・・とは思うのですが。
補足
いくつか知りたいことがあるのですが、それはすべて 神経の可塑性というところにたどり着きます。 というよりそれが分からずに全部そこで止まってしまっているんですね・・・。 自分で解剖学の本やネットで調べていたのですが、 結局分からず・・・。神経の可塑性はもちろん、 そのトレーニングについてもしご教示いただければここから先に 進められるきっかけになるかもしれないと考え質問させていただきました。
お礼
ありがとうございます。 小指と薬指がバラバラに動いてしまうのは、尺骨神経?などの末梢神経側に原因があるかと思い調べていたのですが、小脳のほうだったということでそちらのほう考えてみます。 自分が神経について知りたいのは、タイピングの目的というのが当初でネットや図書館で神経関係を調べていたのですが、答えが分からないとどうしても知りたくなる性格なんだと思います。ですので、神経系の出力を上げる仕組みや、別々に動く仕組みについて理解を深めたいと考えたといういきさつです。 ですのでその自分の好奇心のためにお手数をおかけしてしまい、申し訳ありません・・・。自分なりにもこの関係で調べられるところまでは調べてみたいと思います。すごく分かりやすく、勉強になりました。ありがとうございました。