「バブル(bubble)」とは、他の回答者の方が述べておられるように「泡」の意味です。泡がどうなっているのかを想像すると分かるのですが、中は空気が入っているだけで、中身は詰まっていません。経済が実態とかけ離れて膨張していった様を泡に例えて表現したものです。
バブル景気以前も「土地の値段は下がらない」という土地神話はありました。銀行の融資で土地を担保とするのは最も値崩れの不安が少ないから、という理由でした。景気が安定した80年代半ばは「昭和元禄時代」ともいわれ、経済も芸能風俗もかつて無いほどに高揚した時期だったのです。
その頃は「作れば売れる」という言葉がマコトシヤカに語られ、設備投資も盛んで、驚くほど高額なスポーツカーも人気の的になり、買った値段より中古車の方が高く売れるなどという現象まで出てきました。いわゆる金余り現象です。
ツアーの旅行代金も50万円・100万円などという金額でも「良いものなら売れる」といったイケイケムードで、マンションも「億ション」が珍しくない有様でした。高額の絵画も争って買い漁っていました。
そのような経済の活況の中で、金融機関は「どんどん貸し込め」「担保なんて土地さえ取っておけば後で幾らでも元は取れる」と、担保価値の査定もそこそこにどんどんお金を貸していきました。株式もそのような状況を反映して、日経平均株価で3万8900円を超える時代だったのです(そういえば、NTT株に踊った時期もありました)。確か、今年の1月10日現在での終値では日経平均株価が8500円を割り込んでいたと思いますから、どれほど萎んだかわかるのではないでしょうか。
ところが、供給が増え続けると需給バランスが歪むのが世の道理ですし、政府も行き過ぎたインフレを抑えるために金融引き締め策をとりました。公定歩合を引き上げたのです。また、1988年に消費税の導入が決定され、翌年4月1日から施行されました。この消費税施行前に駆け込み需要があったため、消費税施行後は需要が著しく低下したのです。
元々、過剰投資の体質になっていたため、基礎体力が脆弱だった企業は持ちこたえることができませんでした。経済の活況に漬け込んだ巨額の詐欺事件(旧東洋信用金庫事件)・巨額背任事件(東京協和・安全両信用組合⇒イ・アイ・イ=グループ事件)まで飛び出し、金融機関のモラル低下が問題視され始めた頃です。金融機関の無理な貸し付けは、例えば全く用途の目処が立たない崖地や山奥の山林に、評価額の何十倍・何百倍もの担保価値を設定して、その額を元にして融資をしていたのです。そういう融資先が破綻すれば、金融機関は担保から貸付金を回収することすらできないことになり、自己資本を取り崩して損失処理をする羽目に陥りました。それに耐え切れずに倒れた金融機関が、日本長期信用銀行や北海道拓殖銀行などです。
同じような状況が日本中の至るところにあり、巨額の回収不能債権(いわゆる不良債権)が次から次に拡大再生産されていったのです。実体経済の規模を離れて、仮想の世界・ゲームの世界のように虚像が膨らんでいったのが「バブル景気」といわれる所以です。
1990年を境に「バブル景気」は夢のごとく泡と消え、国家予算を遥かに超える後始末が残りました。狂乱地価といわれた土地価格の上昇も、土地を買う人がいなければ売れません。瞬く間にバブル期の3分の1、10分の1と値が下がり、金融機関の担保割れ(=事実上の無担保債権)はどんどん膨らみ、経済沈滞と共に破綻先企業が増え、不良債権化が進んでいきました。
そういった経済の停滞は企業モラルの低下を招き、雪印や日本ハムなどの問題に行き着いているものと思います。