支配人と代表取締役との関係をとらえるには、「会社」という法人を間に挟む必要があります。
すなわち、支配人と会社とは、その選任につき雇用および委任の関係にあります(会社法10条、大判大正5年1月29日)。そして、支配人に選任された者は、裁判上及び裁判外の行為についての、会社を本人とする代理権を有しています(11条)。ここでいう代理権は、民法99条に定めるそれと同じものです。
なお、同じ会社の他の営業所の支配人を兼務することは、法律上特に禁じられていません。それから、登記をしなければ、会社法にいう支配人にはなれません(918条)。そのため、支配人かどうかは、登記を見れば判明します(表見支配人の定めが置かれていることにもご注目ください:13条)。
他方、代表取締役と会社とは、委任の関係にあります(330条)。代表取締役に選任された者は、裁判上及び裁判外の行為について、会社を代表します(349条)。ここでいう代表権は、法令には特に定義されていませんが、法解釈として、No.2のfire_birdさんお書きの意味と考えられています。
言い換えれば、会社自身は、口で意思表示を発することも出来なければ、手で署名や押印をすることも出来ません。そこで、代表取締役に対して、「代表権」という名称を付して、これらの行為をする権限を与えているわけです。
以上を、会社を間に挟む形で整理すれば、支配人と代表取締役との関係が見えてくるように思います。
すなわち、支配人は、会社と雇用関係にあることからその指揮命令下に入り、会社を代理します。そして、会社の口や手足となるのが代表取締役ですから、支配人は、代表取締役の口や手足を通じて、会社の指揮命令を受けることになります。
これが、支配人と代表取締役との関係です。
両者の関係が法律に明示されていないのは、法律の定めは直接の法的関係が存在するところに置けば足りるところ、両者は会社を挟んで間接的に法的関係が存在するに過ぎないからだと考えられます。
最後に、No.2の補足欄を拝見して、少しだけコメントを続けます。
> (1)会社は、支配人を置いてもよいし、置かなくてもよい。
→ YES。10条は「できる」規定です。
> (2)株式会社の本店は、支配人を置いてもよいし、置かなくてもよい。
→ YES。10条は「できる」規定です。なお、911条3項に「支配人」が無い点にもご注目ください。
> (3)株式会社の営業所は、支配人を置いてもよいし、置かなくてもよい。
→ YES。10条は「できる」規定です。
> (4)株式会社の支店は、支配人を置いてもよいし、置かなくてもよい。
→ YES。10条は「できる」規定です。なお、930条2項に「支配人」が無い点にもご注目ください。
> (5)支配人は、(代表)取締役であってもよいし、(代表)取締役でなくてもよい。
→ 原則としてYES。まず、支配人の欠格事由は、そもそも定められていません。他方、取締役の欠格事由に、支配人は含まれていません(331条1項)。ただし、委員会設置会社の取締役は、支配人の兼務を禁じられています(同3項)。
お礼
お尋ねしたかったことを全て教えていただきました。よく分かりました。 有り難うございました。