• ベストアンサー

原子力発電の発電コスト

様々な発電方式の発電コストを調べていたのですが、 一つ不思議な現象に出会いました。 欧米では建設費などが安いため、一般に日本よりも発電コストは低くなっています。 火力発電ですと、日本9円/kwhに対し欧米4.5円といった具合に、 非常に安価になっています。 そこで質問なんですが、なぜ原子力発電は日本で9円のところ 欧米では12~20円もかかるのでしょうか。 日本ではウランもアメリカから輸入していたり、 再処理をイギリスやフランスに委ねていますよね? その分、より高いコストがかかっても不思議ではないのですが、、、 どなたかご存知の方がいましたらご回答お願いいたします。

質問者が選んだベストアンサー

  • ベストアンサー
  • kenchin
  • ベストアンサー率56% (398/700)
回答No.5

まず、結論から言いますと、これは数字のマジックといいますか「計算の前提が各国で異なるが故の」差であると云えまして、このマジックは「原子力であるからこそ発生する」と言えます。 □ cactusronさんが調べられた本邦の原子力コストですが、これは通産省(総合エネルギー調査会原子力部会)試算の数字ではないでしょうか? これは、原発の運転年数を「法定耐用年数の16年間」とし、稼働率も70%で計算している数字でして、この段階で、外国とは数値が若干異なります。 他にも、数字が異なる理由は種々あるのですが、最も大きな差を生み出している(差の80%近くを生み出している)原因がこれです。 □ では、なぜ「カタログデータのような」数字を採用するのか....? 実は、原子力の発電コストを厳密に測定するのは、非常に困難なんですね。 ちなみに、発電原価の式ですが  固定費+人件費・保守費+燃料費 ----------------------------------       発電電力量 という計算になります。 (すでにご存じなら失礼しました。) 固定費(固定資産部分)は、発電所の建設費等のイニシャルコストを法定耐用年数(もしくは運転年数)で均等償却するとして考えます。 「運転費用・保守費用」については、運転に必要な人件費や保守費用を計上します。 「燃料費」については、その発電電力を生み出すのに必要とした燃料費を計上します。 で、これらに「実績数値」を入れて計算すると「発電原価(実績)」が出まして、石油火力は非常に素直に計算できるんです。 というのも、石油火力は「燃料をボイラーに逐次投入する」といいますか、1キロリットルの燃料を放り込めば、○○kWhの電力が出た....と素直に測定できるんですね。 ところが原子力の場合は違います。 原子炉は、定期点検の時に、一気に原子燃料を装荷(原子炉に入れることです)しまして、定期点検の都度、一定の割合を交換します。 ところが、原子燃料は装荷されている内の何%が消費されたか解りませんので、この段階で、上記式の燃料費(どのくらいの燃料が投入されたか)が出せないことになるんですね。(これが問題点の第一) しかし、これでは困るので、近似式として「消費された燃料量を無視して、定期点検の際に交換された原子燃料の資産価値をもって燃料費に充てよう」という考えが原子力の原価計算には適用されます。 ところが、これも2つの問題を抱えます。 □ 一つは電力量の差です。 というのも、原子燃料の場合、消耗したから交換するというより、「定期点検の際にしか交換できないから交換する」って事でして、運転期間が長い(定期点検の間隔が長い or 定期点検の所要日数が短い)発電所ですと、当然ながら発電電力量(実績)が上がって、必然的に発電単価が低減します。 これを日本とフランスの場合に置いて具体的に見ますと、定期点検所要日数は、日本の方が圧倒的に短いですし(直近の日数は知りませんが、10年ほど前だと、日本の方が70%くらいの日数だったと記憶しています)、フランスなどは原子力も火力発電と同じような思想で中間負荷運転をしているのに比べ、日本の場合はベース分として、常に全負荷で運転させますから、必然的に日本の方が発電電力量が大きくなります。 二つ目は、交換された原子燃料の「会計上の取り扱い」です。 上に書いたように、原子燃料は「消耗しつくした分だけを交換する」と言うわけでなく、「消耗しきっていないけど、交換できる時期が限られるから交換する」という方式ですので、当然ながら、取り出された燃料についても、再処理をすれば再度使える形になります。 つまり、燃料費については「使われた燃料」と「戻ってくる燃料」を資産価値として考慮しなくては、正しいコストは出ない....って事がありまして、この扱いをどうするか?によって、発電コストは変わってきます。  ※:例えば、再処理コストを10円掛けて15円    分の燃料が返ってくるなら、燃料費は差引き    5円の得って勘定ですね。 これを、各国がどのように勘定しているかは、厳密には不明ですが、会計年度の差等も含め、ここらは統一基準が出されていない(原子力の問題というより、各国商法上の会計基準という世界ですからね。)ので、これは確実に響いています。 と言うように、原子力は「発電コスト」という、「他の発電方式で通じる公式」で捉えた場合、評価しにくいという側面を持っていますので、最初に書いたように、ある一定の条件下での計算が多用されます。 □ 実は欧米のコストが高いのには、他にも理由があります。 例えば、日本の原子力は必ず海沿いに建てますが、海外では内陸近くに建設する場合があります。 これは、タービンで仕事を終わった蒸気を冷却するのに海水を使うか、空気を使うかの差なんですが、日本の場合は内陸までの距離が短いために、送電ロスは軽減されますから、効率の良い「海水冷却」を利用するために海辺に建てます。 ところが、諸外国(フランスやアメリカなど)では、海岸線から電力消費地までの距離が長いため、海岸線に発電所を建設すると、海水冷却での効率向上分を、送電ロスが上回ってしまいます。 ですから、この場合は「冷却塔」という装置で、空気冷却により復水(タービンで仕事を終わった蒸気を水に戻す)しますが、これは海水冷却に比較して相当効率が落ちます。 つまり、発電効率は発電端の数値ですから、必ず海水冷却を行っている「効率の良い」日本の方が、一部では空気冷却も用いている「効率の悪い」欧米より、低く出るんですね。 □ 蛇足ですが....。 けっして、他の皆さんを批判している訳ではありませんが、間違っている部分だけは、訂正させて頂きます。 [安全関連および再処理関連の費用について] この部分は、各国でも比較的速く計上基準が統一されていまして、安全関連諸施策は、各国間でお互いに参考にしあう事も含めて、(発電原価面でいうと)大抵が同じようなもの、同じような金額で入れています。 そして、この費用は、発電原価で見ると非常に小さな物です。 というのも、「発電電力量」が膨大であるために、10億や20億を計上しても、発電原価には微々たる影響しか出ないからですね。 [敢えて高くなる計算緒元] これは諸外国では(特に欧州では)ありません。 というのも、これは欧州の理性と評価しても良いと思うのですが、原子力存続の良否は「原子力と代替エネルギーの、危険度・コスト・将来性の差」から論じられるべきであり、そのためには、元となる数字は客観的に正しい(であろう)数字を元にすべきである.... という姿勢ですね。 ですから、原子力にだけ惨い措置(原価を大きく押し上げる様な税金や、計算基準の恣意的な改悪)は課せられていません。 [総括原価方式] これは、お客様へお売りする場合の電気料金を説明したもので、発電原価とは世界が異なります。 総括原価による電気料金の計算は、非常に楽です。 と言いますのも、バクッっと計算するなら、原子力も火力も水力もひっくるめて、「その年に○○電力が使った総費用を、その年の売電電力量で割る」って計算で出るものであり、原子燃料の計上年度のズレなども関係無くなります。 [原価に対する燃料費等] 燃料費は、おおよそ、石油火力なら原価の50%以上、石炭火力なら30%前後(海外炭の場合)、原子力で10~20%強程度でしょうね。 (原子力の場合、正確に出ないのは上で書いたとおりです。) で、その他の原価ですが、建設費ってのも最近の発電所立地困難な状況下では、火力でも原子力でも「中には大差ない事例」も出てきていますから、これは比較が困難です。 例えば、某電力会社では、新規火力発電所建設のために埋め立てで人口島を作りましたが、この費用を考慮すると、原子力と同程度(実際には、稼働発電ユニット数で考えると原子力を上回る費用)の費用が出ています。 [大規模発電群] 大規模発電群で原価低減というのは、理論的にはあり得ます。 例えば、大消費地の近くに大発電施設群を作った場合、需給が均衡しているなら、送電ネットワークの安全性構築が容易になる「場合もある」ので、「送電端単価」では低減が可能かも....って場合ですね。 ただし、これについては欧米の様に「大消費地が散在している」場合に当てはまる例で、それ故に、海外では発電所を内陸(非海岸線)に建設するというパターンが広まっているんですね。(例えば、ルール工業地帯など) また、劇的な(例えば、発電原価を1~2円も押し下げるような)原価低減は、大規模発電所群でも不可能です。 [海外の料金制度と発電原価] 確かに、海外では電気料金自由化が進んでおりまして、電力取引市場で「売電者の需要による売電者間の競争」というのは出ています。 ただし、詳細は色々あるのですが、原子力については各国とも「現在存在する事実へのインセンティブ」として、ある一定量の引き取り義務を電力取引市場に課していますから、原子力については実質競争原理は働きません。(エネルギー安全政策から生まれた原子力を引き受けた事業者に、いきなり辛い世界へ飛び出せと言っても無理がありますからね。) [各国と日本の電気の質] 実際面、欧米とは余り大差ないですね。 確かに、日本の方が停電率が少ないと言うことはありますが、これは都市生活者も「非常な僻地」の生活者もまとめると、欧米の方が惨い条件になりますが、逆に言いますと、欧米の方が、地理的に送電上のハンデを我が国より持っていますから(例えば、人口密度が恐ろしく低く気象条件も悪い、ロッキー山脈の中腹まで送電するというような例)単純な比較は難しいですが、都市生活にすれば、まぁ大差ないと考えて良いでしょう。 ちなみに、過去にニューヨーク大停電という事がありましたが、あれと同じような事が日本で起きる可能性もあり得ますし、バクッっと評価すれば、「日本でそれが起こっていないのは、運が良かったから」という程度の差しか無い感じです。 □ 相当長くなりまして申し訳ありません。 ま、私もエネルギーの世界で生きてきた「消極的原子力廃止派」で、最新の実績数値には疎くなっていますが、調べられた数字は厳密な比較に用いない方が良いと思います。

その他の回答 (5)

  • kenchin
  • ベストアンサー率56% (398/700)
回答No.6

失礼しました。 先の回答で、少しわかりにくい書き方をしましたので、その部分だけ訂正および補足を。 [その1:原文] 固定費(固定資産部分)は、発電所の建設費等のイニシャルコストを法定耐用年数(もしくは運転年数)で均等償却するとして考えます。 「運転費用・保守費用」については、運転に必要な人件費や保守費用を計上します。 「燃料費」については、その発電電力を生み出すのに必要とした燃料費を計上します。 ~補足内容~ 正確に言いますと、固定的部分と流動的部分に分かれます。 減価償却等は、その発電所が稼働しようがしまいが出てゆく費用で、主に固定資産減却分が相当します。 人件費も、固定的部分として考える方式もあるんですが、これは「償却されない」という点から、固定資産部分とは別に考える場合が多いです。(バックヤード人件費も関わりますから。) 流動部分には、環境関係の税類も入ります。 例えば、火力ですと汚染付加金という物が、排出ガス量に比例して出ますが、日本の原子力では、このような物は実質ありません。(海外では、イギリスなどでは若干存在しますが、原価辺りでは微々たる物です) [その2:原文] ところが原子力の場合は違います。 原子炉は、定期点検の時に、一気に原子燃料を装荷(原子炉に入れることです)しまして、定期点検の都度、一定の割合を交換します。 ~訂正内容~ 原子炉は、建設時に一気に原子燃料を装荷し、定期点検の都度、一定の割合を交換します。(本邦の場合は大体1/3を交換します。 外国の場合は、国によって若干変わる様子ですが、旧西側諸国では本邦と大体同じです。)

  • cotiku
  • ベストアンサー率17% (38/216)
回答No.4

原子力発電の価格にそんなに違いがあるとは驚きました。計算の範囲が違うのではないでしょうか。 ウランを燃料にするまでのコスト(これに随分石油燃料がいるそうです)、とか、廃棄物処理(これは永遠の課題)は入っているのでしょうか。

noname#5277
質問者

補足

ウランを燃料にするまでのコストに関しては、 アメリカで加工されたものを輸入するわけですから、 当然入っているものと思います。 廃棄物処理に関しては、 日常的に出る廃棄物はもちろん、 最終的に原子力発電所を解体する料金も、 積み立てと言う形で料金には計上されております。 その他、ランニングコストはもちろん、建設費なども計上されております。 減価償却の方式に若干の違いはあるかも知れませんが。

  • x04boyyc
  • ベストアンサー率39% (36/92)
回答No.3

全くの想像ですが・・・ 日本での発電コスト9円/kwhは電気事業者が公表している数字ではなく、たしか国が発表している数字と記憶しています。日本の電気料金システムは総括原価方式と呼び、 言い値ではなく、根拠を持って電気料金が決められます。 当然、実際の原発の電気料金は幅がありますが、電力会の経営努力の範疇で平均すれば9円/kwh程度って事でしょうか。 さて、日本ではベースロードを原発に任せており、つねに一定運転をさせています。すなわち大きな出力で連続運転させている訳で、発電コストは大きく下がると思います。 (スケールメリットの典型例ですね) また発電コスト中のウラン燃料の占める比率も火力等に比較すると格段に低く、原発のコストは建設費とメンテナンス費用と人件費で決まってくるのではないでしょうか? そうなると、新潟県柏崎市のように、巨大原発群で発電すれば、電気料金はべらぼうにコストダウンも可能な訳で小さな原発をチマチマ運転する欧米とはおのずと料金に違いが生ずるのではないでしょうか? それと、もう1点 海外においての電気事業者の位置付けも考慮する必要性があると思われます。前述の総括原価方式で日本国内は料金が決定されていますが、海外ではどうでしょうか?普通の商品のように弱肉強食競争の資本主義原理で料金が決定されていたとすると、比較自体無理がありますね。また電気の質はどうでしょうか?いくら安くても、一日一回停電があるような国では・・・発電コスト以前の問題かと思います。 ちなみに、日本の原子力発電所は安全に関する評価や設備について、世界でTOPの品質管理で実施されており大きな資本投資が実施されております。 海外に比較して安全設備を削除したりなど根拠の無い意見を信じないようにお願いします。 蛇足ながら、私は脱原子力派ですが、現状を正しく認識して、感情で判断しないように心掛けています。

noname#5277
質問者

お礼

お返事ありがとうございます。 総括原価方式については存じております。 そして、先述の9円に関してはおっしゃる通りです。 安全面に関しましては、自分でも調べていましたが、 おっしゃる通りだと思います。 付け加えますと、日本は安全対策や原子力発電所の撤収費用も 積み立てとして料金に加算されていますので、 こういった点は海外と変わらない比較ができると思っています。 稼働率に関しては僕もまったく考えておりませんでした。 海外の原子力発電所の稼働率などは調べてみようと思います。 海外の市場原理については、いささか疑問が残ります。 というのも、原子力が高ければ使用しないはずだと思うんです。 まぁエネルギー問題等を考えると現状では原子力しかありませんから、 そのためかな、とは思っていますが。 蛇足ながら、僕は原子力肯定派です。 しかし、x04boyycさんのようにきちんとした現状認識のある方は初めてで驚きました。 また何かありましたらお答えください。

  • First_Noel
  • ベストアンサー率31% (508/1597)
回答No.2

全くの想像ですが... 欧州の場合ですと,特にフランスが原発依存度90%と高いため, 高くても需要がある一方で,日本の場合は原発依存度30%程度ですので, 火力水力より高くしては成り立たないのではないでしょうか. その分どこかにしわ寄せがきているのかも知れませんが... 或いは,外国の場合,需要を抑えるべく,あえて高い料金にしている,とか. 高いと節電しようと言う気になりますから. 飽くまで想像ですので...

noname#2912
noname#2912
回答No.1

東京電力事件、JCO事件、その他原電関係に関する報道からの想像ですので、間に受けないようにしてください。 欧州では安全対策などに要する費用も含めて計算していて、日本では安全管理意識が低いので、その分コストがかかっていないのではないでしょうか? 原発では安全対策に最もコストがかかるのでは。

関連するQ&A