高校の化学で電池を扱うのは酸化・還元反応の立場からです。
自発的に起こる酸化・還元反応から電子の移動を取り出しているのです。電池の理解が深まるということであればこれを踏まえる必要があります。絶えず「酸化剤は何?」、「還元剤は何?」を問うことになります。
よくある混乱は電極についてです。電極は反応物質である場合と導電体でしかない場合とがあります。備長炭電池がよく取り上げられますが電池の反応とは無関係です。備長炭は単なる導電体です。これを面白がる人もいますが私には納得できません。
空気電池だということで反応を書いている本もありますが用意した材料以外のものが反応の主役であるような電池は導入には向いていません。発展過程です。
乾電池に入っているような炭素棒の電極と備長炭の電極とどこが異なるのかを別のテーマとして調べるのであれば意味があります。「備長炭で電池が出来るのですよ。面白いでしょう。」では意味がありません。「酸化剤は何?」、「還元剤は何?」はどこかに飛んでしまっています。
イオン化傾向とつなぐのであれば
試験管で起こるイオン化傾向の実験に対応させるのがいいです。
硫酸銅の水溶液に亜鉛の粒を入れると亜鉛が溶けて銅が析出します。この反応は亜鉛の粒の表面で起こります。電子のやり取りは亜鉛と銅イオンの間で起こります。
この変化を外部回路の中を電子が移動するようにして起こせば電池になります。直接反応は出来るだけ起こらないように工夫をします。これが#1で書かれているダニエル電池です。
隔壁を入れるというのは直接反応を禁止するというための工夫です。
私は素焼きの植木鉢を使っていました。ホームセンターで売っている1つ100円のものです。底に開いている穴はゴム栓でふさぎます。
ボルタ電池がよく本に載っています。動作が不安定ですし、条件もコントロールしにくいです。酸化・還元の理解のためということで言うと適切ではありません。
ソーラーモーターを使って動作の持続時間を比較するとボルタ電池で数分、ダニエル電池で数時間というイメージです。
酸化・還元反応が起こるということであれば異なる元素でなくてもかまいません。
Fe+2FeCl3→3FeCl2
の反応を電池にすることも出来ます。
FeCl3はプリント基板のエッチング液の古いのを使いました。きっかけはCuを酸化することが出来るのであればFeを酸化するのはもっと楽に起こるだろうと考えたからです。ソーラーモーターがよく回リました。
隔壁の片方の側にFe電極と食塩水、他方にFeCl3水溶液と炭素電極です。