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【車載】マルチアンプ×マルチスピーカー スピーカーのインピーダンス補正
- 車載用オーディオに関しての質問です。市販アンプ内蔵ヘッドユニットで車載用とホーム用のスピーカー・ユニット混成で鳴らしていますが、パワーアンプを導入して出力段をセパレートさせるかどうか検討しています。
- マルチアンプ×マルチスピーカーでカー・オーディオ・システムを稼働させている方なら、スピーカーのインピーダンス補正についてご存知と思います。補正にはこだわらない方もいますが、補正した効果を感じる方はインピーダンス補正を行っています。スピーカー・ユニットのポテンシャルを引き出すために工夫されている方もいらっしゃるかと思います。
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こんにちは、カーオーディオの構築を楽しんでおられるのですね。 私自身は、カー用をマルチアンプ駆動はしていませんが、ホームではマルチアンプを行っていますので、ご参考に。 ドライバーのインピーダンス補正は大別して次の2種があります。 (a) VCインダクタンス(Le)補正 (b) 低域インピーダンス上昇(Fs)補正 (a)の目的は、主として一次などの低次ネットワーク回路において、Vcインダクタンス要因でフィルターが正しい減衰特性を得られなくなる現象を避けるために用いられます。 ところがこれは2次以上の例えば1次+ノッチフィルター(遮断特性は3次以上)といった手段を使えばほぼ問題とならなくなるため、ほとんど用いられる事例はありません。 つまり、Le補正は1次ネットワークでは必須だが、高次ネットワークでは余り意味のない回路であるという事です。 インピーダンス補正以外にも、ネットワーク回路には次のような各種の補償回路 があります。 (1) 高域1次共振や低域振幅を急激に抑える為のノッチフィルター (2) 部分的なf特の盛り上がりを平坦補償するためのバンドエリミネートフィルター (3) バッフル大きさに起因するバッフルステップを補償するためのシェルビングフィルター (4) f特ではなく位相補償するためだけのオールパスフィルター ★現代スピーカー設計においては、上記のようなf特の暴れを全て補償するために、位相回転や周波数音圧特性の乱れを全て畳み込んだフィルターシミュレートを行って実装するのが主流になっています。(それは概して高次フィルターとなる)★ したがって、(低次)フィルターの効きの悪さを補うためだけに、単独でインピーダンス補正回路を仕込むことはほとんど意味がなく、実装例が少なくなって来ています。 インピーダンス補正回路を組み込んでいるのはパッシブネットワークの、それも1次フィルターにこだわりを持っているブランドだけになっています。 (b)の目的は、(a)と被る部分もあります。しかし他にも、トゥイーター低域振幅を減じて歪み感を少なくするなどの効能が期待できます。しかしながら、Fsは温度非線形特性を持っており、時間によってフラフラと変動します。これに対して精度よくノッチフィルターをフィッティングするのが極めて難しく、これまた余り実装例を見ることがありません。 ---- ここまでで、インピーダンス補正の役割について説明しました。 上記のとおりインピーダンス補正はパッシブ型のクロスオーバーネットワークの効きを改善するための手段ですから、マルチアンプのように、エレクトリック・ディバイディング・ネットワークを別途用意し、マルチアンプでドライバーを直接駆動する方式ではほとんど意味の無い回路、ということになります。 結論として、マルチアンプにするのであればインピーダンス補正は不要。というのが私からの回答です。 「なんらかの音質改善の要素」というのがパッと思い当たりません。 また、できあいのディバイディングネットワークは上記★の部分で示したような、実装トータルでの特性補償ができませんので、周波数特性は必ず暴れます。その点ではパッシブネットワークの方が優れている部分もあります。 もっと言うならば、車内の音響環境は劣悪であり反射/回折によってどのみち周波数特性が目茶苦茶になってしまいますので極度にこだわっても仕方がない、という結論もあるかも知れません。
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- cqw32653
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> 他方、一緒に組み込まれていた補正回路まで不要になってしまって大丈夫? > メーカーなり設計者なりが想定・意図した発音や音色とはかけ離れてしまうのではないかと。 > 補正回路だけ自作して、一度、信号を通してからユニットに送らければいけないのでは? これは大変正しく、斬新な視点です。 一般に、マルチアンプとするとパッシブネットワークは完全に排除してしまうものです が、本当にそれで正しいのでしょうか。 エレクトリック・ディバイディングネットワークを通せば本当にパッシブネットワークは 不要になるのか? もしもディバイディングネットワークを通しただけではスピーカー特性が平坦に ならなかったら・・・? その場合はパッシブ素子による補正回路も積極的に組み入れるべきです。 ★しかし、こと「インピーダンス補正」に限っては、不要と断定して構わないと思います。 <”できあいのネットワーク”は役に立たない> ホーム用途でもカー用途でも、よくクロス2000Hz, 7000Hzといった出来合いのパッシブ ネットワークが売られていますよね?あれはほとんど役に立たないものなんです。 「なんとなく」つながるだけです。 もしウーファーもトゥイーターもインピーダンス平坦で、周波数特性がどこまで行っても 平坦で線形なものであるならば、計算で設計しただけの(つまりできあいの)ネットワーク で問題ありません。 しかし現実のウーファーやトゥイーターは、クロスオーバーから1~2オクターブ離れただけ で特性が乱れるものがほとんどですから、そうした出来合いのネットワークでつないだだけ では絶対に特性平坦にできないんです。 このため、欧米ハイエンドスピーカーの世界では、実際のバッフルに実装した状態での特性を 考慮し、ネットワークの素子定数(場合によっては補正回路も)を最適化して組み込みます。 マルチアンプのチャンデバというのは、上記「できあいのネットワーク」に該当します。 ですから、それで適切につなぐことができなければ、補正回路に重大な意味が生じますね。 もっとも、それをするには少し大掛かりな測定環境がどうしても必要になってしまいますから、 少しハードルが高くなりますが。 <マルチアンプでやっておくべきこと> 「保証回路」ではありませんが、マルチアンプを導入するにあたってやっておいた方が良い 回路をご紹介しておきます。 ★トゥイーターに保護Cを入れる トゥイーターだけは、ドライバー直列に保護キャパシタを挿入してください。 チャンネルデバイダを用いたマルチアンプにおいては、パワーアンプがトゥイーターなどに 直結されます。しかし、それがDCパワーアンプなどであった場合、トゥイーターにDC オフセットが印加されてしまいます。 コンマ数mmの振幅変位量しか持たないトゥイーターでは、DCオフセットによって直線性が 阻害されますし、場合によっては故障の危険があります。 また、アンプ電源投入時のポップノイズでトゥイーターが壊れる危険もあります。 保護コンデンサーの容量は 47uF~100uFといった、クロスオーバーに影響の出ないような 大容量が良いでしょう。
お礼
cqw32653さん、 前回に引き続きご丁寧なアドバイス感謝致します。 ツィーターへの保護回路については接続しておく予定です。 使用しているツィーターが、本来、車載を意図した製品ではないため、 許容入力もさほど大きくないなど使用上の配慮が必要ですので。 十二分なアドバイスを頂いたおかげでシステム改修を進められそうです。 改めて御礼申し上げます。 ありがとうございました。
お礼
とても詳細かつ深いアドバイスを頂き有り難うございます。 市販の車載用セパレート・スピーカーのパッシブ・クロスオーバーに手を入れパーツに置き換えたり、 簡易の1次フィルターをもう少し高次なフィルターに置き換えたりして、 制作や組込そのものから楽しんでおります。 出力段からクロスオーバーないしフィルターをかけた信号を送るので、 当然それまでのパッシブ・クロスオーバーないしフィルターは不要になる、これは理解出来ます。 他方、一緒に組み込まれていた補正回路まで不要になってしまって大丈夫? メーカーなり設計者なりが想定・意図した発音や音色とはかけ離れてしまうのではないかと。 補正回路だけ自作して、一度、信号を通してからユニットに送らければいけないのでは? …素朴な疑問でした。 カーオディオのスピーカー換装と調整は、 取り付けるまで分からない劣悪な音響条件で、 時として出口の見えない手探りの出たところ勝負に陥りがちな世界です。 メーカーなり設計者が想定・意図したサウンドはその好き嫌いとはまた別に、 調整中はひとつの目安・拠り所ではあります。 そこが大きく変化し調整の難度が上昇することを危惧しておりました。