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宗教改革と古英語の関係
現在英語の歴史について勉強しているものです。 ヘンリー8世の宗教改革が、結果として古英語の研究を促進させたということらしいのですが、詳しい経緯がよくわかりません。 ご存知の方がいましたらご教授お願いします。
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英国の宗教改革は教義や聖書の解釈上の相違よりも、英国が(正確には英国王が)ローマンカトリックからは独立した(=従属しない)存在であることを主張することが目的でした。 ヘンリー8世の時代は実は古英語の写本にとっては受難の時代でした。多くの文献はそれまでカトリックの修道院で保管・管理されていましたが、王は修道院を解体しその財産を没収しました。これらの財産の中に古英語で書かれた写本も含まれていたのです。残念なことにその多くが廃棄されたり、粗末な扱いを受けて消滅しました。 ところが、イギリスのキリスト教の独自性を確立するには、まずその歴史を検証しなければなりません。そのためには国内各地に分散していた古い文献を整理し内容を吟味する必要があります。自国の歴史そのものである古い文献の重要性に気付き、特にアングロ・サクソン時代の写本を熱心に集めた人がいました。カンタベリー大司教マシュー・パーカーです。 パーカーは集めた写本を母校のケンブリッジ大学に寄贈しました。 宗教改革という時代を背景に古写本の管理の主体は修道院から大学へ移りました。かつては各地の修道院や教会の財産であった文献が一か所に集められ、さらに単に財物として後世へ伝えるだけでなくその内容を学問として研究する場を得たのです。「ヘンリー8世の宗教改革が、結果として古英語の研究を促進させた」というのはこのことを指しているのだと思います。 現在もParker Libraryの名で知られるコレクションには"Anglo-Saxon Chronicle"やBedeの"Ecclesiastical History of the English People "なども含まれています。今日ではケンブリッジ、スタンフォード両大学のプロジェクトにより、ウェブ上での公開が進められています。 http://parkerweb.stanford.edu/parker/actions/page.do;jsessionid=F428BCB1A36215F240D41F99E89A7D74?forward=home
- modern5000
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はじめまして。 私は古英語そのものについては文法も含めてある程度わかるのですが、古英語の研究史や宗教改革に関しては門外漢ですので、あくまで参考意見ということで。 ヘンリ8世は元々熱心なカトリック教徒で、ルターの宗教改革に反対する論文を発表し、教皇から「信仰の擁護者」という称号を受けるほどでしたが、自分の離婚問題に関して教皇から認められなかったために教皇と対立するようになり、1534年に首長令を発してイギリス国教会のローマ教会からの独立を宣言しました。 これがヘンリ8世の宗教改革です。 当時英国には公認の英訳聖書がありませんでした。カトリック教会は聖書翻訳の権威はカトリック教会にのみ属すると主張しており、聖書の翻訳は異端の伝播に結びつきかねないと考えられていたからです。 逆に言えば、ルターもそうであるように聖書の自国語訳は宗教改革のシンボルでした。 ヘンリ8世の時代、ティンダル聖書、カヴァーデイル聖書、マシュー聖書、大聖書(Great Bible) などの英訳聖書が相次いで出版されたことが、この辺の事情を物語っています。 英訳聖書の先駆としては14世紀のウィクリフ聖書が知られていましたが、更に遡ればアングロサクソンの時代にすでに聖書の英訳が行われていたことが、ルネッサンスの古文復興によってわかってきたのでしょう。 たぶんこのことが、ヘンリー8世の宗教改革が、結果として古英語の研究を促進させたということの所以ではないかと思われます。 ですので、この問題を更に究めるならば、キーワードは「英訳聖書」だと私は思います。 長文失礼しました。