- 締切済み
結城紬の違いについて質問
結城紬について質問です。私は着物関係の仕事をしている者ですが、今度結城紬を扱うにあたってどうしても分からない事があったので専門の方の意見を伺えればと思います。 ・重要無形文化財指定の結城紬と本場結城紬、そしてただの結城紬。この3つの品質の違いはなんなのでしょう?それぞれの長所、短所を伺いたいです。 ・結城紬は茨城以外でも製造されているのでしょうか?その場合技法さえ正しければ本場結城紬、重要無形文化財に相当するのでしょうか? ・文献には高機の方が性能がいいと記述がありました。それでも地機を使うのは何故なのでしょうか?重要無形文化財の要件の一つだからという理由だけなのでしょうか? 回答よろしくお願いいたします。
- みんなの回答 (2)
- 専門家の回答
みんなの回答
どうも、再びこんにちは。☆印の疑問の解消につながるかわかりませんが出来る範囲でお答えします。 ☆<腰を使わない高機ではあの柔らかさを出せないからなんでしょうか? そうだと思います。私も3代着られた結城を見た事があります。 やはり地機の物だったでしょう。 地機では織り子さんがその日の気候や糸の状態を見て目や肌で感じながら調節をして織るので、機にかけられっぱなしになる高機で織った物よりも繊細で柔らかに仕上がるのは当然だと思います。 そのような物は新品でさえ、まるで着古したような着心地が味わえます。 他の産地では類を見ない織物で、だからこそ結城紬のブランド性は高いのだと思います。 ☆<機械織りの結城紬で手紡ぎ真綿糸以外の糸というのは撚糸も含まれるのでしょうか? 撚糸を使うのは結城縮というシボのある織物ですね。無撚糸を使うのが重要文化財の条件になりますからそこからははずれます。 けれど昔は半分は結城縮が織られていたと言います。しかしそのような織物は他の産地でも見られるため、無撚糸のみで織るオリジナル性ある物だけが重文に指定されたのではないでしょうか。 <機械織りの物ではなく、高機が珍重されるのは何故なのでしょうか?… 大雑把に言いますと織物の質のよさの順で並べてみますと 地機織り>高機織り>機械織り、となります。これはわかりますね? しかし何度も言うように地機織りは大変に手間がかかります。これだけで産業としてやっていくのは不可能です。 そして一般的な手織りの織物はほとんどが高機織りです。高機織りがハンパだと言うなら手織りの織物は皆ハンパ物という事になります。 さらに高機でも需要に追いつかないために機械織りが考案されました。 しかし機械織りは極端にその品質が下がります。価格が安いのは非常に魅力的ではありますが、忌憚なく言わせて頂くと機械織りこそがハンパだと私は思います。 それでもお金をかけられない若い人に楽しんでもらうにはいいのではないでしょうか。 とにかくこの辺りの疑問は、一見は百聞にしかず、見れば解ける疑問です。 織物の制作工程を資料の上でもいいから理解してくださいね。 ☆<結城紬の糸は真綿の糸なので地機で織っていると切れやすい、しかし高機の方が切れないとあったのですがなぜ高機の方が切れにくいのでしょうか? これは何かの誤解だと思います。高機よりも地機のほうが切れやすいという事はないはずです。 ☆織り子さんの事情については私も詳しくは知りません。 言えるのは地機の織り子さんは非常に少なく高齢の方が多いという事。 高機でしたらそれほどでもないです。一人前になる年数については個人差によるものが大きいので一概に言えないでしょう。 ただ、研修期間を終えたばかりの新人の織った物も、数十年のキャリアがある熟練した織り子さんの物も、同じ「本場結城紬」として扱いは同じで市場に出ます。もちろん価格も。 それが品質にバラつきがある、と言った理由です。
こんにちは。結城紬の厳密な分類、定義については専門家でもなかなかはっきりと言い切れないほど複雑な事情があります。 一番確実なのは証紙を見分ける力を持つことですね。 http://www3.ocn.ne.jp/~yuuki116/yukitumugi/syousi2.htm http://www.syokuninn.net/contents/shoshi.html たいてい何枚もの証紙が貼ってあってややこしいですが、プロなら証紙の意味をしっかり理解する必要があると思います。 協会や問屋を通らない物には証紙のないものもあり、だからと言って偽物だと決めつける事はできません。 重要無形文化財指定の結城紬の条件はこちらの通りです。 http://www.okujun.co.jp/important.htm 工程についてもザッと頭に入れておくとわかりやすいと思います。 http://www.okujun.co.jp/MAKING.HTM つまり経糸緯糸ともに手紡ぎによる真綿糸であること、地機織りであることが条件ですが、高機で織られた物もあり、これを単に「本場結城紬」と呼んでいる事が多いです。 さらに「結城紬」と言うのは茨城県から栃木県に渡るいわゆる昔からの産地で織られた物すべてをそう呼んでいます。 その中には手紡ぎ真綿糸を使ってないものや機械織りも含まれます。 やはり手紡ぎ、地機で織られたものはもっとも手間がかかるぶん風合いよく、着る人になじみ、まさに本物と言うにふさわしい品質です。 高機は地機のものより若干硬い感じの風合いになりますが、十分に高品質の物です。ただし織り手の経験や技術でかなりのばらつきがあるのが現状ですので証紙だけに頼らずそれを見る目を持つ事が大切です。 こればかりはとにかく数をたくさん見て目を養うしか方法はないでしょう。 非常にブランド性が高いゆえにお値段が跳ね上がるのが欠点の結城紬。 そこで手紡ぎ真綿糸以外の糸を使って機械織りでその風合いを表現した安価品もあり、手を出しやすいお値段になっていますが、手織りの良さは楽しめません。 まあニセモノといえば言えるのですが結城紬には変わりないのです。 結城紬というのは産地総称ですから、ほかの地方で織られた物は全く同じ工程で織られたとしても「結城紬」とは呼びません。 当然、本場結城紬でも重要無形文化財でもありません。 高機と地機のちがいをご存じありませんか? 地機は経糸を腰にくくりつけて張って、緯糸を打ち込みます。つまり織る人の微妙な力加減が織物の出来に反映されます。 非常にきめ細やかと言える独特の風合いを生み出すのです。欠点は年間に何反も織れないこと。一反織るのに数ヶ月から一年以上もかかります。 高機は経糸を機で巻き取って張っていますので腰の加減という事ではなくなります。 地機よりは経験の少ない人でも織れますが、それでも手織りで均一な織物を織り上げるにはそれなりの熟練が必要です。 地機よりは織り手も多く、生産数も多いです。高機の方が性能がいいというのは「機」としての性能という意味でしょう。 性能のいい機が良い織物を生み出すとばかりは言えないのです。 もっとも原始的な機である地機で織られた物の方が織物としては上です。 さてこれくらいにしておきます。結城紬の論議、うんちくは一朝一夕には語れません。 ですが一番いいのは現地に出向くことです。疑問のすべてが解けると思いますよ。 それと同時に複雑な商品事情に悩まされるかも知れません。 結城紬の善し悪しを決める定義は実はなく、買う(売る)方も経験と知識が必要です。 それは結城に限らずほかの産地の織物にも言えることで、まずは産地に出向いて勉強する事はプロとしての条件ではないでしょうか。
補足
ご丁寧な回答をありがとうございます(^^)結城紬は日本3大紬の一つというだけあって本当に奥が深いです。疑問が新たな疑問を呼び、調べれば調べるほど頭がグルグルしてきます;orz正直底無し沼みたいです・・・。 おっしゃる通り産地に伺うことができれば最高なのですが仕事のスケジュール的に難しいのが現状です。ド田舎の図書ではたかが知れているという所もあって、こうして専門の方の意見を伺えるのは本当にありがたいです。(*^^*)そしてまた疑問なのですが・・・ ☆クタクタになるくらいに着つぶした文化財の結城を一度触った事があるのですが本当に柔らかく、素晴らしく体に馴染んでいてビックリした事があります。地機で織られた物の方が織物としては上、というのは文化財は織り子さんが腰と言わず全身の感覚を使って織っているからこその柔らかさで、腰を使わない高機ではあの柔らかさを出せないからなんでしょうか? ☆機械織りの結城紬で手紡ぎ真綿糸以外の糸というのは撚糸も含まれるのでしょうか?また、機械織りの物ではなく、高機が珍重されるのは何故なのでしょうか?とても失礼な言い方で不愉快に思われるかも知れないのですが;高機って中途半端ではないですか?地機のほうが価値の高い、いい織物ができて、かつ価格や効率の面でも機械に負けちゃうのでは・・・。 ☆サイトを巡っていると、結城紬の糸は真綿の糸なので地機で織っていると切れやすい、しかし高機の方が切れないとあったのですがなぜ高機の方が切れにくいのでしょうか? ☆織り子さんの平均年齢ってかなり高いですよね?跡継ぎもいないし。50代でギャルって聞きました;。となると一人前になるにはどのくらいかかるものなのでしょうか? 質問攻めで申し訳ないです;;なかなか周りに専門の方がいらっしゃらないので少しでもお答え頂ければ大変助かります。ご迷惑でなければどうぞよろしくお願い致します。
お礼
お忙しい中何度もご丁寧にありがとうございます。 知れば知るほど結城の素晴らしさが分かり今まで結城紬に対して簡単な知識しか持っていなかったことを恥ずかしく思います。ご意見、大変参考になりました。こんな面倒な質問につきあって下さって、本当にありがとうございました。まだまだ勉強中ですが少しでも消費者の方に産地の方の想いやその結城紬がどれほど価値あるものなのか、正しい知識を持って伝えられればと思います。