一般債権の時効は10年ですが、これは法人だとか個人だとかは関係ありません。5年の時効となるのは商事債権です。これも法人だとか個人だとかは関係ありません。おそらく、個人的に金を貸しただけなのでしょうから商事債権ではなく一般債権として10年で時効ということになります。民法に明文があります。
民法167条 債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
これだけはっきり書いてあるわけです。つまり、債権に時効がないというのは法律的には明文の規定に反する大嘘です。
ちなみに時効についての理論的説明は判例に従えば「時効期間の経過により権利の得喪が生じるが確定的なものではなく、援用により確定し、また時効の利益を放棄することにより時効の効果が生じなかったことになる」ということになっています。その意味で、「相手が援用しない限り効果は不確定」ではありますから、「だめもとで請求してみると案外相手が払ってくれることもある」ということはあり得ます。しかしながらそれをもって「債権は時効に掛からない」というのは、法律的にはお話にならないくらい誤りです。あくまでも「援用権者が援用しない(あるいは信義則上援用を認めない)と時効の利益を援用権者は得られない」というだけの話です。端的に言えば、「消滅時効にかかったからと言って理論的には確定的に債権が消滅しているわけではないので消滅時効に掛かっても債権の弁済を受けられることもあるだけ」です。
#ちなみに#2の参考サイトには少なくとも一つ致命的な誤りがあります。
「相手に債務を承認させることにより消滅時効の援用をできなくすることにより債権を回収する方法もあります。債務の承認行為により、時効が中断することになります。」とありますがこれは誤りです。時効期間が過ぎた以上は消滅時効は完成しているのでその後の債務の承認により時効は絶対に中断しません。ただ、「時効完成後に債務を承認した債務者は、時効完成を知っていれば時効の利益を放棄したことになり、知らなかったとしても信義則上、消滅時効を援用できない」だけです。……いい加減な行政書士ですね。専門家と言っていても信用できるとは限らない見本ですか。
さて、時効の中断事由は#1の回答にあるとおりです。厳密に言えば、暫定的な中断を生じる中断事由が他にもありますが、いずれにしろ「債務者が海外にいること」は関係がありません。なぜなら、海外にいても請求はできるからです。
なお、「時効の中断」とは「今まで経過した期間を全部ご破算にして0から起算しなおす」ことを言います。つまり、「中断した時から起算しなおすので更に10年経たないと時効にならない」ということです。
ところで、ここで言う時効の中断事由としての「請求」というのは「裁判上の請求」のことです。大雑把に言えば「裁判をやれ」ということです。
刑事訴訟では少なくとも一審は本人がいないと裁判ができませんが民事訴訟では本人がいなくても所在不明でも裁判はできます。ですから、海外にいて出廷できなくても裁判ができる以上、海外にいるという理由で時効中断を認める必要がありません(ちなみに刑事の場合は中断ではなくて停止。刑事に中断はない)。
また、「債務者が海外にいること」は時効の停止事由でもありません。「時効の停止」というのは、法律上定める一定の事由がある場合に、時効期間の進行を一時的に停止させるだけの制度です。停止している間を時効期間に算入しないだけです。「中断」とは異なり、既に経過した期間がご破算になるわけではありません。時効の停止は大まかに言えば「時効中断の手段を講じることが困難または不可能な状況において時効中断により利益を受ける者を保護するための制度」ですので、「債務者が海外にいても時効中断は可能」である以上、「困難でも不可能でもない」のですから時効の停止事由にする必要がありません。
ところで、定期的に請求書を送付しても時効は「停止」しません。請求書を送付するというのは、法律的には「請求」ではなくて「催告」に該当しますが、催告による時効中断は、催告後6ヶ月以内に#1の回答にある時効中断事由となる手立てを講じないと効果がなくなります。そしてこの催告を繰返して6ヶ月という期間を伸ばすことはできません。
しかもこれは時効の「中断」です。催告により時効は「停止」しません。
ということで「債務者側からの定期的な請求書の送付などで時効の停止も出来ます」というのは法律的には誤りです。
ということで海外に行こうが何しようが時効を中断するには訴訟を起こせばいいだけです。もっとも、海外に行く前に採れる手段を採って金を返してもらう方が後腐れがなくていいとは思いますが。
#「友達に金を貸すと金も友達も失ってしまう」と言ったのはかのShakespeare。けだし名言也。
補足
なるほど、裁判ですね。 本人不在でも裁判を起こせるなんてはじめて知りました。ただ、問題があってそうした場合 追い詰めれれた相手が破産宣告してしまう可能性があります。もし、そうでなくても判決後に所在不明の相手からどのようにして取り立てられるのでしょうか?