では、補足です。
借りたときの状態にして返すというのは、原状回復義務のことでしょう。
これは、確かにありますが、よく問題になるのは、目的物に変更を加えて、使用していた場合に、その変更を元に戻して返すということです。
たとえば(あまり考えられませんが、レンタカーにパーツをつけていたときに、このパーツを取り外すこと)
ここで問題となっているのは、借り主が利用している間に生じた損害を借り主が負担するかどうか、という問題ですから、原状回復の問題ではありません。
不完全履行も含めて、債務不履行責任が発生するには、契約違反の点について、債務者(管理義務の債務者ですから、借り主)について、帰責性というものが必要です。これが故意、過失ということです。
この故意、過失がなければ、債務不履行責任は考えられません。
確か、不可抗力というのでしょう。
本当の意味での事故であって、代車を貸し出すときのリスクの範囲内です。
返還時に、借りた物に損傷があった場合には、この損失を借り主、貸し主のどちらが負担するかという問題が発生します。
この負担を追わせる理由が債務不履行にいう、故意、過失というものです。
故意に契約の目的物を壊した場合、又は、注意すれば壊れることを回避できた場合という状況がなければ借り主に責任は負わせられません。
この二つの事情がないときに初めて、第三者に責任を負わせることになるので、すべてが責任転換になる訳ではありません。
ちなみに、この場合には、代車を所有している工場が、代車についての財産的リスクを最終的に負う立場にあるので、第三者に対して、不法行為による損害賠償請求をするのは、工場です。
仮に、借り主が全部第三者への責任を追求する義務があるのなら、貸し主は、借り主から賃料という対価を受け取り(賃貸借の場合)なおかつ、賃貸から生じた損失を借り主から原状回復(この場合の用語の使い方は違いますが)という形で2重の利益を受けることになり、借り主にとってあまりに酷です。
損害が、借り主全部負担というのは、おそらく全額損害賠償契約が存在した場合に限られます。