金子勝という人はマルクス経済学者で、資本主義経済・市場経済を批判する立場にいます。常に、資本主義経済の弱点を探し、反資本主義者・隠れコミュニストが喜ぶことを書いています。いつも現状に不満を持っている人に、迎合する文章を書くことによって、その存在意義がある人なのです。
小泉政権の時代は、不況で、「デフレスパイラルに陥っている、日銀は買いオペを進め、インフレターゲット政策を行うべきだ」という主張が出るほど物価下落が不況の原因だ、と考えられていました。しかし、これは主流派経済学者の意見であり、反主流のマルクス経済学者としては反対の事を主張しないと存在意義がなくなってしまう。「インフレターゲット」とは、「デフレスパイラルから抜け出すため、緩やかなインフレを目指せ」との主張。
そこで、反主流派のマルクス経済学者としては、主流派を批判するのに「政府はインフレを起こそうとしている」と批判して、現状に不満を持っている読者に気に入られる文章を書こうと思ったのでしょう。
しかし、インフレは起こらなかった。主流派の主張は実現しなかった。そしてそれを批判したマルクス経済学者の批判も外れた。つまり、反主流派の金子勝は、「主流派の主張である、インフレターゲットが実現する。そうすると、緩やかなインフレになる。そこでそのインフレを批判しよう」と考えたのでしょう。日本経済はどうあるべきか、自分の意見を主張したのではなく、主流派が正しい、けれどそれでは自分の立場がない。ここでは、主流派を批判することによって自分の立場をハッキリさせておこう、と考えた。そこで、確たる自信もなく、「小泉政権はインフレを起こそうとしている」と批判したのでしょう。
ずいぶん無責任のようですが、そうした政府批判を読んで満足する読者が多いのも事実でしょう。そうした現状不満読者を満足させる貴重な経済学者だと言えます。
私は、このように考えるのがよろしいかと考えています。