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染料業者さんと父の間で納品された染料の問題について
- 父はリボンの染色工場を営んでおり、ノンホルマリンの染料を発注しました。
- しかし、リボンからホルマリンがわずかに検出されてしまいました。
- 父と染料業者さんの間で加工費用の負担について問題が起きています。
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結論的には、お父上が加工費用を負担せざるを得ない公算が大きいと思われます。 1 瑕疵の通知義務について お父上は、リボンの染色という「他人の為にする製造又は加工」(商法502条2号)を事業として営んでおられますから、商人(*)にあたります(同法4条1項)。 また、「染料業者さん」(A氏、とします。)は、染料の納入という「他人の為にする製造又は加工」(A氏が自ら製造した染料を納入しておられる場合)ないしは「利益を得て譲渡す目的を以てする動産……の有償取得又はその取得したるものの譲渡を目的とする行為」(A氏が他から仕入れた染料を納入しておられる場合・同法501条1号)を事業として営んでおられますから、商人にあたります(同法4条1項)。 ところで、商人間の売買においては、買主がその目的物を受け取ったときは、遅滞なくその目的物を検査して、その目的物に瑕疵があることや数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対して通知を発しなければ、その瑕疵または不足を理由に損害賠償の請求をすることができません(商法526条1項前段)。 本件では、お父上がA氏から納入された染料を検査なさらずにご使用になり、取引先からクレームをお受けになってはじめてホルマリンが含有されていたという瑕疵をA氏にご通知になったのですから、もはやホルマリンが含有されていたという瑕疵を理由に損害賠償(加工費用)の請求をなさることはできないということになります。 もっとも、商法526条1項後段は、売買の目的物に直ちに発見することができない瑕疵があった場合には、買主は、6か月以内にその瑕疵を発見し、直ちに通知を発すれば足りる旨規定しています。 検査に必要な設備・費用・時間、業界慣行等を総合考慮して、お父上のような染色業者が直ちにホルマリン含有の有無を検査なさらなくとも合理的であるといえれば、ホルマリンが含有されていたという瑕疵は、「直ちに発見することができない」といえるのですが、検査なさらなくとも合理的であるといえる場合は、本件のような事例ではほとんど考えられないと思われます。 また、商法526条2項は、売主に悪意(染料の納入当時、ホルマリンが含有されていたことを知っていたこと)があった場合には、同条1項所定の通知をしていなかった場合でも、買主は、損害賠償の請求を妨げられない旨規定しています。 本件では、A氏は「わずかにホルマリンを含むものだったが問題ないだろうと思い、出した」と説明なさっているとのことですから、ここにいう「悪意」があったと思われ、そうであれば、損害賠償(加工費用)の請求は可能です(民法415条前段)。 ただ、A氏に「悪意」があった事実を、お父上が例えば訴訟において立証なさる証拠があるのか、疑問が残ります(ご質問を拝読するかぎりでは、「納入当時から知っていたと言った」、「いや、言わない」の水掛け論となり、お父上の立証が失敗に終わる可能性が高いといわざるを得ません。)。 さらに、A氏に「悪意」があった事実を(例えば瑕疵に関する会話の録音テープなどをご利用になって)ご立証になれたとしても、お父上は、検査をなさらずに染料をご使用になった以上、相当の過失相殺(民法418条)がなされる可能性が高いといわざるを得ません。 2 A氏のノンホルマリンの染料納入義務の立証について さらに、そもそも問題なのは、お父上がノンホルマリンの染料をご発注になったという事実の立証が可能か否かです。 本件では、電話でのお取引だったとのことですが、例えば、ノンホルマリンの染料はホルマリンが含有されている染料に比べて相当高価であって、納品された数量との比較からみて、ノンホルマリンの染料の取引であったことが明らかであるといった事情があれば、A氏が「大丈夫」とおっしゃったか否か、お父上が1回目の納品にホルマリンが含有されていた事実をA氏にご通知になったか否かに関わらず、A氏はノンホルマリンの染料を納入なさるべきであったといえます。 このような明確な認定資料がない場合には、例えば、お父上が、A氏に対して、取引先からノンホルマリンの染料で染色したリボンを受注した旨お話しになっていたとか、A氏が本件の染料を納入なさった当時、お父上は今回の取引先からの仕事以外を受注しておられず、ホルマリンが含有されている染料をご発注になる理由が存在しなかったとか、(お父上とA氏の間で認識が対立しておられますが)A氏が「大丈夫」とご発言になったとか、(前述の)A氏が「問題ないだろうと思って、出した」とご発言になったといった、お父上がご発注になったのはノンホルマリンの染料であることを裏付ける事実を、お父上がどこまでご立証になることができるのかが、本件の結論を左右することになります。 しかし、ご質問を拝読するかぎりでは、こういった裏付事実についても、お父上は的確な証拠をお持ちではないようですから、この点においても、お父上のお立場は相当に苦しいものといわざるを得ません。 3 専門家へのご相談窓口のご紹介 以上は、あくまでご質問を拝読したかぎりでの私見ですから、専門家へのご相談をお勧めいたします。 ご参考までに、日弁連のホームページをご紹介します(下記参考URL)。「法律相談窓口」→「法律相談センター」の順にリンクをたどっていただき、お近くの弁護士会のホームページにアクセスしてみてください。 また、商工会議所などが、事業者向けの法律相談を開催していたかと思います。 弁護士にご相談になる際には、「時系列表」(事実経過を、時間の流れに沿って箇条書きでまとめた表)と「人物関係図」(本件の関係者の相互関係を図式化したもの。テレビ雑誌のドラマの紹介記事に用いられている登場人物の紹介図を思い浮かべていただければ結構です。)とをあらかじめご作成になり、関係書類とともにご持参いただき、弁護士にお示しください。相談時間を有効にご活用いただくため、お勧めします。 ご参考になれば幸いです。 ---------- * ここでいう「商人」は、「物品販売業」というような、日常用語としての意味ではなく、「商法の規整を受ける者」というような意味であるとお考えください。
お礼
確認不足(確認検査を怠ったと言う事)と証拠も無いまま、やみくもに加工費用を請求するのは無理な話であったと言う事が良く分かりました。詳しくお教えいただきましてありがとうございました。