ノロウイルスはヒト以外の動物には感染しないということです。
カキなどの二枚貝には「感染」しているわけではなく、単に生体内に溜め込んで濃縮しているだけです。
補足すれば、今年の大流行ではカキが原因と特定された症例はひとつもありません。ヒトからヒトへの感染によってこの大流行が起きているのは明白です。
なお、ノロウイルスは培養系が確立されていないのは本当ですが、だからといって「どの動物に感染するのか判らない」ということではないです。
感染するかどうかは、ノロウイルスに感染したヒトの吐瀉物なりを動物に接種すれば簡単に実験できますから、「ヒト以外に感染しない」というのは確かだと認識しています。
培養系が確立されていないことで困るのは、切羽詰まった問題としては確実な不活化条件が求められない、ということですね。
ウイルスの培養は細胞で行います。ウイルスによって使う細胞が異なるので、ウイルス実験系のラボには他種類の細胞が培養されています。
私のラボで常時3~4種類、たまにしか使わないため普段は凍結している細胞が他に30種類くらいあります。
不活化条件を求めるときは、ウイルスにいろいろな処理(温度をかけたりPHを変えたり消毒薬を入れたりetc..)をしてから細胞に感染させ、力価がどのように変わるかを測定します。
なので培養できないウイルスはこういう実験が不可能なため、「どうすればウイルスが死ぬか」という条件がなかなか判らないのです。
ノロウイルスに関して、現在塩素系の消毒薬でなければダメだとか乾燥には恐ろしく強いとか言われているのは、主に同じカリシウイルス科に属するネコカリシウイルス(FCV)で出した実験データに基づいています。FCVはネコ由来の培養細胞で簡単に培養できます。
ただ、同じ科に属しているとはいえ、属ではノロとFCVは異なりますし、FCVはネコに肺炎などの呼吸器症状を起こすウイルスなので、生体内での動態もノロとはかなり異なっています。
なのでFCVとノロの不活化条件がどこまで同じなのかということについては判らないですね。
お礼
詳しいご回答、ありがとうございました。 大変参考になりました。 ノロウィルスにしても、鳥インフルエンザにしても、 流行ると過剰な報道などで、それに関わる非のない関係者さんに 気の毒だなと思っていました。 今回も、牡蠣が直接原因じゃないと言われているのに。。 でも、このような状況の中、こんなスレたてて、不快に思う人もいるかもと、 私も軽率だったかなと思っています。 私は街中に住んでいるせいか、酔っ払い?などの嘔吐物などよく道で見かけます。 ハトがそれを食べたりしている時もあります・・・。 外に出たりする猫や犬・鳥は、感染しないのかなぁと疑問を持っていました。 これからの研究で、もっと治療法やメカニズムが解明されていくのでしょうね。 ラボで医療臨床系?のご研究されていらっしゃるようですが、がんばってください! ありがとうございました。