「金属の匂い」というのは、金属の酸化物の匂いである場合もあると思いますが、金属そのものの匂いであることもあると思います。酸化物をすべて取り除いた鉄は、独特の匂いがしますが、あれは鉄の匂いとしか感じられません。
日本刀の匂いをと言っても、そういうものはありませんから、包丁をよく洗うなり、研ぐなりして、酸化物を除いて嗅いでみると、やはり鉄の匂いがします(包丁で何か切っていた場合、その匂いが付いていることがあるので、熱湯で消毒するとか、よく洗うとかで、関係ない物質の付着を外しても、独特の匂いがします。
銅貨も、磨き粉か何かで、十分磨いて、酸化物を落としてぴかぴかにしても、やはり独特の匂いがあります。これは、銅の匂いでしょう。
「匂い」とは何かということです。これは、鼻の奥の鼻粘膜が感じる、物質の「分子」や「イオン」の感覚なのです。鼻粘膜の神経細胞は、分子やそのイオンなどを、識別でき、識別の結果が、「匂い」として感覚に表現されるのです。味覚も似たところがあります。味覚の蕾細胞が、分子やイオンについて、個別に違う反応を示し、それが脳で処理されると、「味」という感覚になるのです。
匂いが成立するには、鼻粘膜が湿っている方が好都合です。湿っていても、鼻風邪のように炎症を起こしていると、正常に働きません。湿っていると好都合なのは、その水分のなかに、分子やイオンを溶かし込んで固定し、神経細胞が識別反応を起こすからです。
匂いのある気体の場合は、直接鼻粘膜の神経のところまで分子が到達し、神経を刺激して「匂い」の感覚を生み出します。気体は、自由に空中にあり、神経細胞に簡単に到達するからです。
金属の匂いとは何かというと、その金属のイオンの匂いだと思います。乾燥し過ぎている場合は、金属は匂わないと思えます。この場合、金属自体も乾燥しており、空気も乾燥しているということです。空気には普通湿気が含まれますから、湿気に溶け込んで金属のイオンが空中に飛び出、これが鼻粘膜まで到達するのだと考えられます。
金属自身も濡れているか、湿っている場合の方が、金属の匂いはし易いということになります。手で金属に触れた場合、手の水分に、金属分子が溶け込むのだと云えます。その水分の蒸発で、一緒に金属分子がイオンとなって空中に放散され、これを嗅ぐのが、金属の匂いなのです。
金属が、そんな簡単に水分に溶けることはないという意見があるかも知れませんが、「金属アレルギー」というのは、確かに、汗に、金属が溶け込んで、それが身体に吸収され、アレルギー反応を起こすものです。アレルギー反応は、ごく微量の金属で起こりますが、実は、「匂い」もごく微量の分子やイオンがあれば、感受できます。
磨いた鉄や銅の表面を、水で濡らして匂いを嗅いでみると、金属の匂いがより鮮明にします。酸化物も水や水蒸気に溶け込んで匂うのでしょうが、酸化物だけが匂うというのは理由が不明です。金属分子やイオンが空中に浮上して、鼻粘膜まで達しないと匂いにならないのです。
お礼
お返事ありがとうございます。 ”金属に水が媒介して・・”という説明は魅力的な感じがしました。私も考えてみると、手で触ったり水で金属がぬれていたり(包丁の件は私も覚えがあります)、水が必ず存在しうるような状況でしか「匂い」を感じたことがないような気がするからです。 ところが、「イオンが水に溶けて蒸発・・」という所にくると、やはり始めの疑問に戻ってしまいます。気体の時は水はばらばらの分子の状態なのではないのでしょうか。金属を溶かして蒸発というのが想像できないのでやはり金属が単独でいなければいけないような気がするのです。
補足
私は化学は全く駄目なので非常識なアイデアかもしれないですが、starfloraさんのお話を聞いて「こんな風な説明だったら」という考えが頭に浮かびました。勝手に話を広げて申し訳ないですが、よかったら感想を聞かせてください。 金属は単体の状態だと金属結合が強くて(ほとんど無視できるくらいしか)蒸発できないが、水を媒介にしてイオンになるとそれが断たれるので(鼻で感じられる位の小さな)飽和水蒸気圧を持つようになる。 つまり水にとけると金属も少し蒸気になるのではという考えです。金属が蒸発なんて考えた事もなかったんですが、すごい非常識な考えでしょうか?