体系的知識というのは、「システマティックな知識」あるいは「知識システム」だとも云えます。知識というのは、断片的にあるもので、知識と知識の関係がどうなっているのか、これも断片的に関係が分かっていたり、関係付けていたりする場合があります。しかし、これでは、まだ「体系的知識」にはならないのです。
「体系的知識」という時、知識をシステム化(体系化)する、何かのシステム化「原理」があるのが普通です。一番よく知られている、システム化の原理は、「種差」と「属」による「ツリー構造」です。こういうと難しいですが、何かの対象を、「類似性」に基づいてグループにし、グループのなかで、「違い」によって、もっと小さなグループに分けるということです。
これは、下の方へ区分して行くのと、上の方へ、上位のグループを定義する二つの方向があり、結果的に、一つの根から幹が延び、幹から主な枝が、主な枝から中ぐらいの枝が、という風に分岐して行くので、このツリー(樹木)構造の体系的知識把握は、生物の分類系統に典型的に見られます。
犬と猫は違う動物だが、どう違うのか、犬と蛇や鳩の関係はどうなっているのか、これを、生物学では、分類系統という形で、綺麗なツリーで示します。こういう風に分類すると、生物についての知識は、分類系統によって、整然と把握できることになるのです。
ツリーよりも複雑なシステム原理は、ユークリッドの幾何学などにあるような、「公理的数学体系」があります。これは、基本命題(公理)と、公理を組み合わせて新しい命題を造る手順からなり、正しい命題が定理として出てきます。三角形の内角というのは、合計すると必ず180度になるというのは、経験的に出てくるのですが、これは公理の展開で証明される定理となります。幾何学図形についての色々な知識が、公理・定理として展開して秩序立って、把握できるようになるのです。
この公理的システムは、記号論理学や古典論理学もそうです。科学の分野体系も、色々な知見や知識を、基本原理からシステム的に導くような構造になっています。古典力学なら、ニュートンの運動方程式から色々な物理現象が説明されて、システム化されるのです。
科学の理論システムは、隣接科学の理論システムとも関連し、そのあいだの関係が把握されると、ますます大きな体系的知識となって来ます。
世界や宇宙についての我々の知識は、未知なことも無数にありますが、非常に多くのことが、体系的に把握されています。
このような知識の体系化、体系的知識の成立や構築は、発達心理学で、少年少女が、因果的な保存関係で、現象を把握し始めると、知っていることが整理され、体系となって行くとされます。個人が主観的に、自分の知っていることを体系化しても、勘違いや、見かけの同一性などで、間違った知識の体系になっているのが普通です。
数学や科学は、何千年、何百年という時を通じて、観察による正確な知識の収集と、それらを整理する原理の発見により、知識を体系化して来た、現在における成果とも云えるでしょう。