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感温性ゲルについて
代表的な感温性ゲルとしてN-イソプロピルアクリルアミド(NIPA)があります。これは、モノマーでは感温性を示しませんが、ラジカル重合によってゲルやポリマーにすると、転移温度と呼ばれる温度(NIPAでは約32℃)を境に、高温では疎水性となり水中で体積が収縮し、低温では親水性となって膨潤します。この変化は温度に対してドラスティックに現れ、転移温度付近で温度を上げ下げすると急激に膨潤したり収縮したりします。この親-疎水転移は、一般的に、NIPA中の窒素と水分子との水素結合が高温では側鎖の熱運動によって切れ、低温ではこの結合が形成されるためと説明されています。そこで質問ですが、なぜ、モノマーでは感温性はないのにポリマーやゲルにすると感温性が現れるのでしょうか。ポリマーになることで分子運動の自由度がかなり失われることに起因するのではないかと思うのですが、うまく自分では説明がつきません。また、親-疎水転移が緩やかでなくドラスティックに現れるのはなぜでしょうか。
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ゲルを溶媒に浸漬すると高分子鎖間に溶媒分子が浸入する事によってゲルは膨潤します。しかしながら、ネットワークを形成してるために溶解する事は出来ません。ゲルが膨潤する事によってポリNIPAの分子は引き延ばされます。高分子鎖を引き延ばすとエントロピーが減少するので高分子鎖には収縮しようとする力が発生します。この力がゴム弾性の源で、高温になるほどこの収縮力は強くなります。ゲルの膨潤は、高分子鎖の収縮力と溶媒分子がネットワーク中に浸透しようとするネットワークの浸透圧がつり合ったところで平衡状態となります。NIPAのゲルでは、低温では窒素原子の所での水和により溶媒分子が浸透しやすくなっており、高い膨潤度を示すが、高温になるとゲルの収縮力自体が強くなることと、それにも増して脱水和が起こることによって、急激に溶媒との親和性が低下して、(収縮力との釣り合いが崩れて)ゲルは収縮するようになってしまう。これがgalyberさん自身が書かれている 「一般的に、NIPA中の窒素と水分子との水素結合が高温では側鎖の熱運動によって切れ、低温ではこの結合が形成されるためと説明されています。」の内容だと思います。 ゲル中の窒素原子の状態には、いろいろな種類があり、水和エネルギーに分布があり、温度を上げていったときに水和がはずれてしまう窒素原子と、はずれない窒素原子が存在し、温度の上昇と共に少しずつ水和がはずれた窒素原子が増加するということならば、親-疎水転移は穏やかに現れるはずです。 しかしながら、どの窒素原子も同じような状態で、ある転移温度になると殆ど全ての窒素原子で脱水和が生じるのであれば、その転移温度を境にドラスティックに挙動が変わるはずです。実際にはドラスティックに転移するということならば、脱水和がドラスティックに起こっているということなのでしょう。 モノマーでも水和、脱水和は同じように生じると思います。低温で水和していたものが、温度の上昇によって脱水和したときにどのような挙動をとるかです。脱水和によって溶解性は変化すると思いますが、相分離や沈殿、白濁が生じるほどの変化でなければ、観察していても変化なしに見えてしまうでしょう。水との溶解性は親和性だけでなく分子量も影響しますから、モノマーでは分子量が小さいため、水和、脱水和、どちらの状態でも水に溶けてしまっていたら、温度変化によって、実際には水和、脱水和の変化が起こっていても外見上は分からないですよね。 そのことをkue-kさんは言いたかったのはないでしょうか。
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ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)の感温性はゲルの膨張(水和)・収縮挙動(脱水和)として観測されるものです。 N-イソプロピルアクリルアミドモノマーでは、そもそもネットワーク構造自体をつくることができないため、単に水溶液と化してしまいます。したがって感温性は存在しないと思います。
補足
kue-kさんの回答はよくわかりますが、ただ、私の疑問そのものがそのまま回答として書き直されているように思いました。感温性の本質は親-疎水転移であって、その結果膨潤-収縮挙動が観察されると思います。自分が納得したいことは、この転移現象がモノマーでは発現されず、ポリマーになると発現する、そのあたりの詳しいメカニズムです。単に、ネットワーク構造が形成されるために転移が起こる、といった説明ではなくて、なぜネットワーク構造になると転移現象が起こるのか、が知りたいと思って、質問しました。初歩的なこととは思いますが、一つよろしくお願いします。
お礼
よくわかりました。本当にありがとうございます!