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メタノールを使ったCVDダイヤモンド合成における酸素
メタノールを使ったCVDダイヤモンド合成は、東海大学の広瀬洋一先生が広めた実験方法で、比較的簡単で安全にダイヤモンドを合成できる実験として高校の教科書にも出ているという有名なものです。 例えば↓ http://www.miraikan.jst.go.jp/j/exhibition/d_laboratory_chem.html さて、この方法は、メタノール(CH3OH)で満たしたビンの中をフィラメントで約2000℃に加熱することによって、炭化水素ラジカルや水素ラジカルを生成させ、基板上にダイヤモンドを作り出す方法です。しかし、このときに、メタノールに含まれていた酸素はどうなるのでしょう?広瀬先生の文献には、一酸化炭素(CO)になるという図も描出ているのですが、一酸化炭素が出来てしまうと、メタノールには酸素1個に対して炭素1つしかないので、そうなるとメタノールの中の炭素はすべて一酸化炭素になってしまうのでは?もしかすると、酸素ラジカルが水素と結合して、水(H2O)になっている? この実験を経験されている方、またはダイヤモンドCVD法に詳しい方、お答えをお願いします。
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takes87さんもお書きになってますが、原子状水素=水素ラジカルですね。 私もちょっと検索してみたのですが、メタノールから発生する水素ラジカルが還元剤のようですね。 まず、水素原子と一酸化炭素が生成し、一酸化炭素が還元されて炭素原子あるいは炭素原子数個のクラスターができるとともに、あまった水と還元で生成したプロトンが結合することで水となるのではないかと思います。 炭化水素のラジカルが生成しても、どこかのステップで水素ラジカルまたは別の何らかのラジカルによって水素引き抜き(ややこしいな・・・)が起こり、結局は炭素オンリーになってしまうものと考えられます。 私の適当な式だと、メタノールがヘテロリシスを起こすように書いてますが、やはり有機化合物で熱分解なので、ラジカル開裂で考えるべきかと思います。
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- takes87
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私もCVDに関しては全然さっぱりな人ですがちょっと化学式が出てきたのでコメントさせて頂きます。 ラジカルは以前は不対電子をもつ化学種を示していましたが、最近はオクテット則と呼ばれる法則を満たさない化学種をこのように呼ぶようになりました。原子状水素は電子が一つなのでラジカルといえばラジカルですね。固有名で呼ぶことが出来るのでラジカルと呼んでないだけかも知れません。原子状水素も他のラジカルと速やかに結合をつくると思います。 CVDが蒸着の一つということであれば基板上で水素、炭素、酸素が結合の形成と切断を繰り返していると思います。炭素ー炭素の結合が出来たときはダイヤモンドはかなり高温でも安定なので分解しにくくいですが、水素や酸素が基板上で炭素と結合しても一酸化炭素や炭化水素になってまた気化してしまうので基板上に残らないのだと思います。 anthraceneさんのスキームは有機化学で考えられるよりもはるかに強いエネルギーが与えられているので、あながち外れていないかもしれませんよ。
お礼
ご回答ありがとうございます。なるほど、原子状水素も水素ラジカルと同じと考えて良いのですね。つまり、水素、炭素、酸素が結合を繰り返す過程で、炭素―炭素の結合のものだけが安定に残ってダイヤモンドになる。一方、水素―炭素、酸素―炭素の結合は、固体として基板上に残らない。良く分かりました。ありがとうございました。
- anthracene
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経験もCVDの知識も無いのですが、一酸化炭素ができてもおかしくは無いと思いますが。 形式的に考えますと、この反応では炭素の還元が起こっています。 H3C-OH(C:+1)からダイヤモンド(C: 0)が生成するからには、なんらかの還元剤が必要ですね。 超高温によって発生した水素ラジカルが還元剤として働きプロトンが発生したとすると、形式的ではありますが、オキシドアニオンとくっつけてやれば水ができます。 乱暴な式ですが、 CH3-O-H -> C+ + 3H + O2- + H+ と考えると、一個の水素ラジカルが還元剤となれば C+ + 2H + H+ + e- + O2- + H+ -> C + 2H + H2O と書けます。 二分子のメタノールの不均化も可能でしょう。また乱暴ですが、 C+ + 3H + O2- + H+ -> C2+ + e- + 3H + O2- + H+ -> CO + e- + 3H と書け、生じた電子が還元に使われた、とすることもできるでしょう。 反応の詳細を何も考えていないので、めちゃくちゃな式を書いていますが、電子の授受だけ考えても、COができてもおかしくはないと思います。 しかしこんな乱暴なスキーム書いてたら処刑モノですね(笑 実際にはメチル基がC+と3Hになるとは到底考えられないので、最初はメチルラジカルが発生し、その後電子授受が複雑に起こるのだと思います。
お礼
ご回答ありがとうございます。すいません、質問の水素ラジカルに関して、私の誤解もありました。広瀬先生の文献から直接引用しますと・・・ タングステンフィラメントを2000℃まで白熱させる。この温度でメタノールは分解され、水素と一酸化炭素になる。すなわち、還元性の雰囲気が形成される。その雰囲気中に炭素系のラジカル(C2、CH3など)と原子状水素(H)が生成される。これらのラジカルがフィラメント直下に設置された基板上に到達し、ダイヤモンドとして生成する。 と書かれていました。つまり、生成されるラジカルは、炭素系ラジカルだけですね。水素はラジカルではなく、"原子状水素"と書いてあります。その意味でも、やはり、一酸化炭素の方が出来るということなのでしょうか?しかし、そうだとしても、今度は、炭化水素がラジカルになって水素がラジカルにならない理由が良く分かりません。そのあたりはどうなのでしょうか・・・?
お礼
ご回答ありがとうございました。この反応系では、水素ラジカルという還元剤があることがポイントということですね。takes87さんへのお礼のところへの付け足しにもなりますが、結局のところ、炭素―炭素、水素―炭素、酸素―炭素の結合だけでなく、酸素―水素の結合も形成される。しかし、後者の3つは気化してしまって、最後は、炭素―炭素のみが固体として基板上に残る。以上の解釈でよろしいでしょうか? つまり、広瀬先生の文献(*参照)では、反応中の酸素は、酸素ー炭素だけとしていますが、実際は酸素―水素の結合もありうるということですね。 ⇒結論: 水素、炭素、酸素がラジカルとなり、それぞれが結合を繰り返す。炭素―炭素、水素―炭素、酸素―炭素、酸素―水素の結合が出来る。炭素―炭素の結合のみが、基板上に固体のダイヤモンドとして成長する。 これで酸素問題がクリアになりました。ありがとうございました。 *参考:広瀬・細野 (2004) アルコールおよび燃焼炎を用いたダイヤモンド合成.日本結晶成長学会誌,31,330-334