高三なら、いろいろ考えてみることも無駄ではないと思いますが、讃岐うどんについてあまり「本物」嗜好でこだわると、可能性はかなり狭まると思います。
つまり、そのこだわりは日本人ならではのものですから、海外ではなかなか通じない気がします。
「寿司」がいい例なので、少し書きます。
べらぼうに高かったことと、生臭くまずいことを別にすれば、欧米にも30年ぐらい前から大都市にはすでに寿司屋はありました。何故まずいかというと、ネタの新鮮さが命ということが理解できていないか、魚に関する新鮮さを保つ流通の仕組み(コールド・チェーン)がないので適当なネタが手に入らないということでした。
客は在留邦人、日本人旅行者と現地の金持ち、エリートビジネスマンといったところです。それが東洋の「エスニック料理」として徐々に浸透して、最近パリでは回転寿司まではやりはじめ、新鮮さや味も日本と遜色ないところまできました。つまり流通が確立したのです。
ニューヨークには、一般の寿司店(値段は結構高め)だけでなく築地のブランド高級寿司店まで出店しています(一人単価五万円くらいしますが。こちらは全ネタ東京から空輸です)。客層も今はほとんど地元客になりました。しかし、ここまで定着するのにざっと30年以上かかったことになります。日本から来て何もない最初から切り開いてきた人たちはどれほど大変だったか、その苦労の程が偲ばれます。
「うどん」も結構以前から見かけました。専門店ではなく、たいていは「日本料理店(これが実は結構怪しいモノを出す)」にありました。一方、蕎麦は今はありますが、以前は珍しく、あっても高いのが相場でした。
理由は簡単です。麺は人が発明した最古の加工食というくらいで、材料の小麦粉も世界中にありますから、麺料理は世界中にあります。どこでもうどんの材料はあるわけで、製麺道具も手打ちなら簡単に用意できますから、つくる気になれば難しくはないでしょう。どこの国の日本料理店でも躊躇なくメニューに加えられます。そば粉は一部の地域では手に入りますが、ソバにするのにちょうどよい粒子の粉にするのは難しいようで、知っている店では日本からの空輸に頼っていました。
1970年代タイ・バンコクには珍しくうどん専門店が一軒ありましたが、当時は在留の日本人は4千人くらいしかいなくて(今は五万人いるそうです)、そうした邦人相手の店でしたから、かけうどん1杯確か400B(当時1B=7円以上していた.。ちなみに地元の米麺バーミーは10~15B)位して随分高いなあという印象が残りました。それでも日本食が恋しくて月に1度は行っていましたね、余談ですが。
最近(といっても数年前)の例では、パリには有名な「國虎屋」という讃岐うどんの店があります。フランス人は「文化」好きでエキゾチックでエスニックな料理は人気があります。日本食もいろいろあって本格的な料亭もあります。英国・ロンドン、だけに限りませんが接待用の「料亭」風の店、ちょっと高級な定食屋、焼き鳥赤提灯外国風のいずれかに当てはまる店が、欧米各国の大都市中心街には大抵ありました。そこにはうどんは置いてますが寒い土地では鍋焼きとか味噌煮込みですね。讃岐うどんに限るとNYCなどでは数店はあるでしょうが、他にはあるかどうか分かりません。おそらくないでしょう。また、ヨーロッパの主要国の大都市なら手打ち風の生麺はうどんもソバも大手スーパーの国際食材のコーナーに味噌や醤油と並んで置かれています。なくても航空宅配便で簡単に手に入る、今はそういう時代です。
また、麺料理は世界中どこにでもあり、それだけに日本のうどんは似て非なるもので、一般の人たちには却って違和感があるでしょう。外国の麺料理は激安で、辛いか甘いか塩辛くて、とにかく味が濃いのが普通です。そうした土地では経済的余裕があって中流以上のインテリじゃないと、「日本の変わったヌードルを食べに行こう」とはならないし、その場合でももっとゴージャスな料理を望むのではないでしょうか。
そういうわけで結局、「讃岐うどん」のブランドにこだわると、外国でも主要な客は日本人になってしまうので、世界中見渡しても日本人の多い大都市でしか出店できないでしょう。
こうして考えを巡らせると、世界の食文化は多様で麺料理もあまたあれど、あっさりしたうどんに旨さを感じるのはかなり「日本人的な感覚」で、これを外国で地元の人に理解し親しんでもらうのには、相当の努力と時間が必要と思います。商売というよりも利益度外視の文化交流になりますね。それか日本人が多くいる街を狙って出店しないと、商売にはならないでしょう。
お礼
軌道に乗せるまで結構な時間と費用は要しますね。 今は甘い考えですが、それなりに詰めていけたら実行に移したいとは思っております^^