他でもない我らが日本の元首は、厳密には不明です。憲法上の規定がなく、さまざまな学説があります。それでも実務上、特に困っていませんね。また、元首は自然人(法人に対し、生きている人間をいう)だけでなく、国家機関が元首の場合もあります(例:旧ソ連時代の最高会議幹部会、または同議長)。
元首は、必要なものというより、ある種の国では明らかなものであり、他の種の国ではあいまいです。ご存知と思いますが、元首(the head of state)という考え方は、昔の時代の名残りなのです。
昔は、次のような国家観が有力な時代もありました。
「国家は有機体(生命体)であり、君主はその頭(head)である。官憲や軍隊や臣民は、手足などである」。
しかし、革命が勃発すると、議会は君主の権力を簒奪し、共和制に移行しました。さらに、議会から指名された首相が内閣を組織して統治したり、あるいは新たな独裁者が現れたりしました。また、王権を制限したうえで王制を残した国もあるし、君主を廃して人民が大統領を選んだ国もあります。以上のようにさまざまですが、国ごとに次の(1)を決めています。
(1)国家の統治者(機関)は誰か(どこか)。
伝統的には、この(1)が元首でした。一方、「元首」には次の(2)の意味もあります。現代ではむしろ、(2)の意味が強いでしょう。
(2)外交儀礼上、その国を代表する者(機関)は誰(どこ)か。
議論を整理しましょう。つまり、元首には二つの意味合いがあるのです。そして、国家には(1)も(2)も必要です。しかし、(1)と(2)が一致する必要はありません。一致しない場合、その国には元首が二人いる?
要するに、「元首」という言葉を使うから、話がおかしくなるのです。皆も私も使う言葉ですが、惰性で使っているのだと思います。元首(the head of state)という考え方は、昔の時代の名残りであり、現代の全ての国に明確に適用できる概念とは言えません。専制君主制や(実権)大統領制の国では、元首が誰かは自ずと明らかですが、立憲君主制―議院内閣制や分権的国家では、定めていない場合もあります。その場合、「外交儀礼上、一応元首は誰それと見なされている」というだけの話なのです。
日本について言うと、元首条項を排除している憲法の下で、あえて元首を求めるのは、何か別の魂胆があるのかと疑われるケースもあります。また、スイスの元首は誰か、厳密にいうと定説はないそうです。スイスには大統領(実権はない)が存在し、通り一遍の本には大統領が元首だと書いてありますが、「連邦参事会」を元首とする説もあります。
『ウィキペディア』から「元首」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%83%E9%A6%96
お礼
元首は結局、外交「儀礼」上使われているだけなのですね。とてもすっきりしました。日本以外にも元首が決まっていない場合もあるのですね。初耳です。 ありがとうございました。