まず、エネルギーの選択肢をつれづれに挙げてみます。
<化石燃料>地球温暖化の主要因とされる。
石炭・石油・天然ガス・メタンハイドレードが該当。何億年単位で地球上に降り注いだ太陽光とCO2が生物という媒体を通してその形に蓄積されたもの。これを利用するために投入するエネルギーに対して得られるエネルギーが大きい部分に対して採掘・利用が行われている。例えば、採掘するために投じるエネルギーを1として100に相当する化石燃料のエネルギーが得られれば、100の労力を他に振り向けられるということになり、この利用が「産業革命」をもたらして以来、現状でも人類が利用するエネルギーの大半を占める。輸送・貯蔵が容易(素人でもポリタンクに貯めておけるし手で持って運べる)で、非常に利用しやすい。
※メタンハイドレードについては調査・試掘段階で大規模な利用が行われていないが、利用されていないだけに埋蔵量と利用価値が期待されているのと、石油・石炭と比べて発熱量当たりのCO2排出量が少ない(天然ガスと同じ)ためにその代替の選択肢として注目されている。
<原子力> 理論上は発電プロセスでCO2を出さない。化石燃料は素人でも火をつければ燃える。しかし原子力は高度な専門知識・能力と大規模な専用設備を要する。放射性廃棄物も問題。「国」規模でないと扱えない。
・核分裂によるもの:実用化済み。放射性廃棄物の数世代先へのツケマワシがある。(化石燃料の利用で地球温暖化を呼ぶ場合は曾孫の代へのツケマワシとなる。数世代先か曾孫の代か、どこへ回すかの選択?)
・核融合によるもの:研究段階。かつては「無限のクリーンエネルギー」の夢を担わされていたが、まだ実用化の目処がない。トカマク型で重水素を用いたものでは一応放射性物質でかつ自然界に無い「トリチウム」という物質を生成する。その有害性がまだはっきり公にされていない。
<再生可能エネルギー> 日本の政策では太陽光・風力・潮力・地熱・バイオマス等をこれに分類。CO2を出さないか、出しても収支ゼロで済むもの。(水力も同じだけど政策的にはこれに分類されていない)最も制約になるのは「それがある場所でないと取り出せない」ということと「対投資効果が低い」(単位発電量当たりのコストが化石燃料等他の手段に比べて大きい)ということ。
・太陽光:発電プロセス自体ではCO2を排出しないが、現状の製法では電池そのものを作るために消費する電力が大きく、電池がその寿命の間に発電する電力のどっちが大きいのかが開示されていないため、本当にCO2を少なくできるのか疑問視する声がある。一応のところ化石燃料による火力発電よりは太陽電池で発電する方がCO2排出量が少ないとされる。※太陽電池による発電の他、集熱して熱を利用するという選択肢もある。
・風力:風が安定して吹くところに立地する分には有効。しかしその「風がよく吹くところ」が限定されてしまう。風車による騒音、鳥類への被害の可能性が指摘されている。
・潮力:従来は潮の満ち引きの利用が研究対象だったが、「潮流」を利用する方が現実的なため検討がそちらにシフトしてきている。まだあまりポピュラーでない。日本では導入例があまり無いが、潮流の早いところ=優良な漁場である場合が多く、立地の場合漁業保障との兼ね合いが問題。
・地熱:火山や温泉の熱を利用しようというもの。普通の火力発電が1200~1500℃という温度落差を利用するのに対して、地熱の場合150~200℃であるため、同じ発電量を得ようとする場合設備が大柄になってしまい投資効率が悪い。
・バイオマス:「森林」を枯渇させない範囲での植物の利用、動物の排泄物の利用が該当する。例えば、おうちの庭の雑草が毎年生えては(CO2を吸収しては)刈られ、単にゴミの日に出されて焼却炉へ送られる。こういうポジションの植物を燃料として利用して、その分化石燃料の消費を減らそうというもの。動物(人間も含めて)の排泄物は発酵させるとメタンが出て、これを燃料として利用しようと思えば可能であり一部では実用化されている。しかし人一人が必要とする燃料をその人だけの排泄物で賄えないし、植物で補うことを考えると一人当たり相当広い面積の緑地が必要となるため、自ずと限界がある。
大体こんなもんで、「これさえやればカンペキ」という選択肢は無く、日本としてはどうすべきか、という答えはそう簡単に出ないと思います。
個人的に思うのは、日本はエネルギーを効率良く使う技術では世界一だといいますが、まだまだまだまだ極める余地があるのでは?ということ。もっと極めて全体の量を減らし、相対的に再生可能エネルギーの比率を上げることが必要というのが一つ。一方で現状の核分裂の問題点(特に核廃棄物)の解消を検討すること、核融合の可能性に賭けて実用化を追求し続けることが必要と考えます。