元経済統計役人です。
補正予算というのは、当初予算(予測に基づく計画)と実績とのギャップを調整する、事後的(一般に年度末に行われる、予算額の修正)を言います。
(小泉内閣発足時には、02年末に向けて景気は悪化すると見るのが、そも常識だった、が、国債30兆、緊縮財政で行くという、従前の基準では信じられない、非現実的な当初見込み圧縮を主張した。 実際、景気(金回り)は急激に悪化している。データ、GDP、失業率、etc・・)
補正予算というのは、当初見込んでいた政府の仕事量より、景気状態の悪化等によって、当初計画では、翌年等に行う行政事業を前倒しして、売上等の企業財務の悪化を緩和する効果を持つ。
良く公共事業は「景気を回復させる」とあたかも政府支出の増大が景気を浮上させるが如く語られますが、現代では、そうした作用は、ほぼ皆無といっていい。
しかし、公共事業等によって政府が前倒しで仕事を民間企業に与えることで企業財務に余裕をもたせ、人件費支払いなどランニング・コスト資金の調達を容易にする。従ってもし、政府が事業前倒しを行って民間の売る上げを改善しなければ、企業財務の悪化に基づく、リストラ、倒産を現実化してしまう。これは、社会経済内の資金流通速度、交換の頻度を減速させてしまう。従って、消費・生産をさらに抑制し不況をより深刻にしてしまう。
公共事業等、政府予算の増大が景気浮上効果があったのは、民間にパワーがあって、それと相乗するかたちで政府の消費・投資がその加速器として作用できた高度成長期の話で、消費力の減退、それに規定される生産投資の抑制が全般化している現況では、政府投資の増大が短期に景気を浮上させる効果はほとんどない、と考えるのが常識的。(もちろん、政府予算の増大は統計的に(社会会計的に)GDP統計値を増加させるが、現構造では、その波及性、継続性はないと考える。
では、補正による政府支出増が無意味かというとそうではない。現在、補正を組んでまで景気対策が必要だという理由は経済政策ではなく、社会政策として、企業倒産、失業を抑制し経済システムの破綻を回避しようという考えであると理解している。(従って、単に人気取りではなく、国民生活の防衛、破綻回避としては充分合理性がある。)
しかし、問題は政府赤字の累積が膨大で、安易な政府支出増(当然、税収減収の中で、調達源は借金(国債)である、下手をすると政府自体が将来資金繰り不能になる)故に、この問題は極めて、長期視野から複雑難解な問題である。
小泉は、この両者を整合する良策があると言うが、今だ、説得力のある具体的メニューを示していない。「痛みに耐えろ!」という根性論だけである。02の激痛は末期癌的な激痛と考えるのが常識的であろう。
長期的な後遺症(政府財政破綻)を心配して、投薬(景気対策補正)のタイミングを失って、患者(企業経営、国民生活)を死亡させてしまったら、本末転倒と言わざるを得ない。
この問題は、こうした短期問題と長期問題が背反する複雑な構造的問題で、TV・マスコミが言うような、小泉は正義、景気対策派(抵抗勢力)は悪という漫画的な構図で語られるものではない。(私は補正を微増に抑え、政策の合理化で効果的鎮静効果のある政策ミックスが提示されることを期待する)
景気は自力で回復するもので、それは一般に諸産業によって異なるサイクルの設備更新投資のサイクルの複合が最も景気循環と同期するサイクルです。
公共投資の前倒し(=補正)という社会政策としての景気対策は不況期に国民生活が破綻(ショック死)しないように投与する鎮痛剤にすぎないが、もちろん鎮静剤が自己回復能力を支援する上で極めて有効であることは、ご理解いただけると思います。
お礼
誹謗中傷目的で言うんじゃないんですが 「 愛国心をお大事に」ドンキホーテ様 ファウストより