臨床心理士です。多くの方が発達障害はWAIS-Ⅳの乖離が大きいと勘違いされています。発達障害が世に出た頃にはそうした見解がありましたし、私もそのように理解していた時期があるのですが、実はそうではありません。4領域に分けられてそれぞれの領域の乖離をチェックすることは重要なのですが、検査を受けられておわかりでしょうが各領域の問題は2~3種あり、患者さんや御家族には4領域で説明しますが、専門家の解釈は実は各問題間の乖離もチェックします。同じ領域でも問題間の乖離が大きい場合がかなりありますので、問題の狙いから患者さんの傾向を推測していきます。
そうして各問題間の乖離まで含むと、実は半数以上の人が乖離が大きい部分があるので、乖離の大きさを発達障害の指標とすることは適当ではないとされるようになりました。私は子どもを中心に臨床をしていますので、WAIS-Ⅳの子ども版のWISC-Ⅴというものを使っているのですが、検査の研修に行くと冒頭で必ず「WISC-Ⅴの乖離が大きくても発達障害とはいえない」と伝えられます。これらの検査はあくまでも知能の傾向を見るためのものであり、発達障害の診断に使うものではありません。そういう意味ではあなたはかなり知的に高い方であるのですが、それで生きづらさを抱えていらっしゃるのであれば、何らかの発達の偏りをお持ちなのかもしれません。まとめると発達の偏りを持つ人の偏りが、検査の偏りとしてでるわけではないということです。
余談ですが知覚推理という領域は、知覚と推理という全く異なる性質の問題が混在した領域です。ですから知覚推理の領域は下位問題をそれぞれチェックしないと、知覚と推理がそれぞれどの程度の能力なのかがわからないという欠点があります。子ども版のWISC-Ⅴではそこが改良され、知覚と推理は「視空間指標」と「流動性推理指標」という別の領域になりました。
さらに申し上げると、発達障害の代表格である自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如多動症(ADHD)とはそれぞれスクリーニング検査があります。質問紙形式(YesNoで答えるもの)ですが、そうしたものを参考にしながら医師が総合的に診断することになっています。そして医師により判断の基準は若干異なりますが、発達障害の特性は有していても就労が継続しているならば、社旗適応はできていると判断され、グレーゾーンと診断されることが多いようです。それを添付の図で示すと、障害でない自閉スペクトラムのゾーンになります。
お礼
詳細にお教えいただき、ありがとうございます。バラツキの範疇であり乖離ではないこと、発達障害ではないことがよくわかりました。ありがとうございます。後日検査結果のフィードバックを受けるので、その時に不明点を確認したいと思います。