オペレーターには専用の機械がありましてね。「available」ってボタンを押すと鳴る仕掛けになってるんです。それで電話をとるボタンを押すと繋がります。通話が終了すると終了状態になるので、オペレーターがまた電話をとっても大丈夫になったら「available」ボタンを押すとまた鳴る、という流れです。
オペレーターは通話しながらパソコンの画面に問合せ内容を入力します。ベテランのオペレーターなら通話しながらキーボードを叩いて入力しますが、まだ不慣れなオペレーターやキーボードが不得意なオペレーターだとそれができないですから、終話するとそこから入力します。
オペレーターは5人から10人くらいがひとつの班になっていて、これが一般的に「島」と呼ばれます。ひとつの島にSVと呼ばれるリーダーがいて自分の島のオペレーターが通話中か保留中か終話後なのかが一目で分かるようになっていて、しかも何分その状態なのかが分かります。だから通話中が20分以上続いていると「ずいぶん話が長引いているな」とかが分かるようになります。
よくオペレーターが「確認しますので少々お待ちください」といって保留が長くなっているときは、オペレーターはSVに相談して指示を受けているのです。
会社によってはそこまでSVの数が確保できないので、サブSVを置きます。ベテランオペレーターから選ばれたサブSVは島をぐるぐる回りながらオペレーターの相談を受けます。オペレーターは困る事態が発生すると手を上げて、そうするとサブSVが駆けつけて相談を受けるのです。
SVのパソコン画面では待機の件数とかが分かるので、待機の件数が多いとオペレーターに「待ちコ(待ちコール)が多いので、回線開けてくださーい!」と催促するのです。
で、散々待たせるとお客さんはそれでイラついているので電話に出ると「いったい何分待たせるんだ!」というクレームから始まるのでオペレーターは「大変申し訳ございません」と謝りから入らねばならず、そこでお客さんの文句が終わらないとそのお相手で時間が経ち本題に入ることができず、結果さらに待機の時間が長くなりクレームが増えるというスパイラルに陥るのです。
そういうことが多いので、コールセンターのオペレーターの離職率は高いです。半年もやってるとサブSVになれるくらいの「ベテラン」になるのも珍しくありません。多くのコールセンターでは離職者を埋めるための研修が日々行われ、新兵が日々デビューしてはクレームに心を折られてすぐ辞めていくということがくり返されます。
ほとんどの企業にとって、コールセンター業務は「利益」を生み出しません。どんなに顧客満足度を上げてもそれで儲けは発生しません。
おまけにオペレーターは一度に一件ずつしかさばけません。ひどく効率が悪い業務です。だから企業にとってコールセンターは「コストばかりがかかって何の儲けも生み出さない」業務ですから、やりたくない。お金をかけるなんて論外で、人員も予算も与えられません。
だから人は増やされない。増やそうと思っても離職者が多いので水を注いでも注いでも底から抜けていくのです。かくしてどこの問合せセンターに電話をしても繋がらない、という状況に陥るのです。
一度コールセンター業務を経験して心を折られた人は二度とコールセンター業務なんてやろうと思いませんし、機転が必要(相手が何を求めているのか察する能力)なので、典型的な発達障害の人には行えない業務です。業種にもよりますが、5人に1人くらいが不適正と判断されて採用されない場合もあります。
なぜコールセンターはどこも繋がらないのか、ご理解いただけたかでしょうか。
国際的な企業なら、今は中国にコールセンターがあるのも珍しくないですね。私が経験した限りでは、デル、アップル、アマゾンなんかは中国訛りのオペレーターに対応してもらったことがあります。日本企業だと顧客が「日本の会社なんだから日本人が対応するのが当たり前」という謎のナショナリズムに縛られることがよくあります。
お礼
ありがとうございました。