気づかなかったと思います。2015年に出版された「China 2049 (原題: The Hundred-year Marathon: China's Secret)」の著者マイケル・ピルズベリーは長年中国の研究に携わり、アメリカ政府でも中国戦略の専門家として働いた学者ですが、その本人が中国の野望や謀略に気がついていなかったと書いています。China 2049では、中国が国家を設立した1949年から脈々と100年後に世界の覇権を握るために牙を隠しながら脈々と長期戦略を実行してきたと言うシナリオで、今の中国だけを見ると納得しそうになるのですが、過去の共産党中央政権の変遷を見ると、からなずしも当たっておらず、ピルズベリーが中国の危険性を訴えるために後付けでシナリオを書いたと思わざるを得ない部分もあります。実際、天安門事件はもし当時の趙紫陽首相ら民主派の政治家が優勢になっていれば、平和的に民主化が進んだ可能性もあると思いまし、当時の中国は広い国土と人口を管理し切れるほど中央集権ができていなかったと思います。鄧小平の改革開放の中で、経済優先で世界の工場として発展した広東省の都市では不法、腐敗、自由が広がっていましたから、アメリカだけでなく多くの西側の国々は、自分たちが歩んできた経済の自由化と共に民主主義が拡がると考えても不思議ではなかったと思います。ただ1990年代の終わりから2000年代のはじめにかけては、西側諸国が我を争って中国進出をするあまり、中国の厳しく不安定な要求を飲んで、技術移転を重ね、やりすぎでは無いかと言う懸念は多くの人が持っていました。あくまでも経済の話。
トランプ政権の対中国政策は、China 2049で警告された問題を一つ一つ潰している様に見えるのですが、実際には当初トランプは貿易不均衡にしか目を向けていなかった様です。経済制裁の中に人道問題や知的財産の問題を交渉材料として持ち出していたくらい。元々共和党のタカ派が主張していたHuaweiやZTEの締め出しも、安全保障や中国の先端技術の進歩を牽制したと言うよりも貿易戦争での交渉材料に見えます。確かにトランプでないと、ルール無用の中国叩きはできないでしょうが、貿易不均衡が解決されるならあっさり知財や人権などの条件を譲ってしまいそうな気がします。もっとも、それまでの間に大統領が変わるでしょうが。
ところで、ポンペイオ国務長官は中国と言うよりも中国共産党(CCP)を非難しています。習近平体制下の全体主義、独裁政治を批判しているのですが、一方のアメリカの今の状況を見ると、まるで中国を見る様な気がします。抗議デモを容認する民主党知事の州や都市に、一方的に軍服を来た出どころ不明の武装した治安職員を送り込むなんて言うのは大国では中国とロシアくらいでしか見ません。そもそもアメリカは他国の機密の通信を傍受することが法律で認められていて、世界中の機密情報を集めています。現大統領は国の分断を進め、差別主義、排他主義。貿易で不利であれば理屈を無視して同盟国でも攻撃して金を奪っていく。
日本や多くの国々は、今アメリカを選ぶか中国を選ぶかの選択肢を迫られていますが、イディオロギーでも正義の選択では無く、どっちが得かと言う判断しかないと思います。
お礼
ご回答ありがとうございます。