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塩が錆を促進させる理由
- 海の近くや塩水などの雰囲気中で鉄などの腐食が早いのは、塩化物による錆びの影響です。
- 塩水中でも水道水中でも浸漬試験に大きな差はなく、差が出るのは液体と大気の境界近くであると考えられています。
- 塩が試験体表面に固着し、水分を長い間保持し酸化環境を作り出すため、酸化物生成が促進される可能性があります。
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大昔大学で鉄の錆の発生は、まず赤錆とよばれるFeOOHが生成し、その後黒錆と呼ばれるFe3O4に変化すると教わりました。 これを化学式であらわすとおそらく次のようになると思います。 まず、大気中の水分と鉄が反応して Fe+6H2O=Fe(OH)6^2+(ヘキサアコ鉄(?)イオン)+2e- が生成し、次に水中に溶けている酸素と上述の反応でできた電子により、 O2+H2O+4e-=4OH- そして、Fe(OH)6^2+とOH-が反応して(鉄イオンが還元されて)Fe(OH)2(水酸化鉄(?))が生成し、Fe(OH)2が酸素と反応して、 2Fe(OH)2+1/2O2=2FeOOH(水和酸化鉄(?))+H2O 3Fe(OH)2+1/2O2=Fe3O4(四酸化三鉄)+3H2O できると考えられます。 FeOOHはイオン化しているFe2+の電子2e-と反応して、 FeOOH+2e-=2Fe3O4+2H2O+2OH- となり、上述の反応で生成したOH-がFe(OH)6^2+を還元するので、このサイクルが繰りかえされて腐食が内部へと進行していくと考えられます。 錆びやすい環境としては、水分をたっぷり含んでいる空気があることや、酸性の水に触れるといっそう錆の進行は速くなると考えられます。 海水では、溶け込んでいる塩素イオン(Cl-)の活性が非常に高く、他の物質を還元する力が大きいことが一般的に知られています。そのため、上述のFe(OH)6^2+(ヘキサアコ鉄(?)イオン)の還元剤となり、腐食を速めてしまうことが推察されます。 以上、長文になりましたが参考にしてください。
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> あと、すこし専門的なことになりますが、電気化学の用語では、酸化とは酸素と反応することではなく、電子を奪う反応です。例えば、Feが電子を奪われてFe3+イオンになるようなことです。この定義は、専門的な定義の仕方ですが、一応は高校の化学などでも習うところです。 すみません、紛らわしい言い方でした。補足です。この言い方では、 Fe→Fe2O3も酸化ですが、Fe2+→Fe3+も酸化です。(価数が変化する) 酸素と結びつくことでなく、電子を奪うことが酸化です。 なお、水溶液による腐食では、高温酸化のようにFe→Fe2O3のように 直接反応ではなく、Fe→Fe3+のようにイオン化するのであって、 その後、鉄イオンと酸素の反応で錆びが生じます。
お礼
返答遅くなり申し訳ございません。 確かに高校の科学で酸素と結びつくことに限らず電子のやり取りで酸化・還元という用語を使用していたように思います。 皆さんに分かりやすくご教授いただけて感謝しています。 それは鉄がさびると言うことが単純な一つの化学式からではなく、その奥にも様々な式が隠されていると言うことが理解でき、またこのような考えの基礎を与えていただいたことでこれからの仕事でも理由を考えられることになったことです。 誠にありがとうございます 本文章を拝見されている方へ下記ホームページもタニシさんと同じように分かりやすく説明が書いてありますのでご一読されてはいかがでしょうか。 http://www.blue.b-city.net/~kaneko/marine/wq_oxi_rad.htm
すみません。よけいなお世話ですが、修正させてください。 >腐食の原則はイオン化傾向だと考えます。K,Ca,Na,Mg,Al,Fe,Sn,Cu,(H),Ag,Pt。一般的にこのような順で地球上に分散しようとしています。 Sn,Cu,(H),Ag ではなく、Sn,(H),Cu,Ag の順ですね。 銅は、酸(その正体は、H+ イオン)では腐食しません。逆に、たとえそれが真水であっても溶存酸素を含んでいれば銅は腐食します。実際、銅が腐食しているのは、そこいらでよく見ますよね。 いや、熱濃硫酸や硝酸に溶ける(腐食する)ではないか、と言われるかもしれませんが、それは(H)とのイオン化傾向の差によるものではなく、熱濃硫酸や硝酸の酸化力による反応です。その証拠に水素は発生しません。イオン化傾向の差によるものであれば、金属が溶ける(Fe → Fe3+)代わりに水素が発生(H+ → H2↑)しないと変ですよね。分析化学の実習というか学生実験などで経験された方もおられるかもしれません。 腐食の原則はイオン化傾向ではなく、酸化還元反応です。実際に自然界で生じる腐食は、水溶液中の溶存酸素の酸化力によるものです。化学平衡論的にはイオン化傾向で説明できる部分もありますが、実際に生じている反応とは異なります。 あと、すこし専門的なことになりますが、電気化学の用語では、酸化とは酸素と反応することではなく、電子を奪う反応です。例えば、Feが電子を奪われてFe3+イオンになるようなことです。この定義は、専門的な定義の仕方ですが、一応は高校の化学などでも習うところです。 ちょとインターネットで検索してみましたが、下記のページの説明は分かりやすいですよ。私も復習になりました。
今回の錆の専門家は無機化学(金属化学)の方々です。私の専門分野は有機化学ですので、ゴルフのピンに絡むような答えではありませんが一般的な考え方から参考意見を記載します。 腐食の原則はイオン化傾向だと考えます。K,Ca,Na,Mg,Al,Fe,Sn,Cu,(H),Ag,Pt。一般的にこのような順で地球上に分散しようとしています。 白金・Ptは安定と言われるには、一番遊離しにくい金属だからです。hellowさんの質問の反応系は、Na・Cl・Feが主に関与する反応系と考えることができると思います。これとは別個にH2OをH,OHと考えると良いのですが、この辺は専門家にご教授いただきたくお願いします。 元のNa,Cl,Feの遊離性はClは気体の塩素になると空気中に分散します。 イオンとしてはNaが遊離、一番遊離し難いFeが残りますが、Naが遊離水中のOHと結合します。水の片割れH+が酸性分として残存します。 この辺から複雑で、この辺からdepositionさんの説明が必要になりますが、結局水の中でFeが第一鉄、第二鉄、または水がアルカリ性だと水酸化鉄となり、結局鉄が形を変えて行くことになります。Na,Clはイオン化数の変化のみでその影響を遊離し難いFeが影響を受けることになります。 以上専門家ではないので、無機化学の専門の方にフォローをお願いします。 酸化、腐食を避けるため、Feの表面を物質と触れないように、または酸化膜を作る、高分子の薄膜コーティングで反応が進まないようにしています。 専門家ではなく一般的な説明で申し訳ありません。 化学に興味を持っていただけたら幸いです。
お礼
いえいえ、いろんな方からご意見いただけて幸いです。 別件ですが無機の塩水と有機の塩水(いわゆる本当の海水)では海水のの方が腐食が早いと言う話を聞いたことがあります。 高校のときに覚えた、「かそーかな、まーあてにすな・・・」。 こういうところで役に立ちますね。 塩水噴霧試験ですが、何故溶液のPHを測定しなければいけないか分からなかったのですが、説明を伺ってなんとなくその意図が分かりかけてきました。 文章を読んでいて難しいことをなんとか簡単に説明してくださっていることが伺えました。 単純に1式で表される酸化ではなく、水をH,OHとまず考えるところからスタートしなければいけないのですね。 お盆休みにこの辺の本を読んで再度勉強しなおしてみます。 しかし、皆さんに教えていただいたことが頭にあれば理解が早そうです。 ありがとうございます。
ちょっと誤解があるようなのですが、腐食は水がないと生じません。(高温酸化は別として)いくら空気の湿度が高いといっても、結露したり、水分を含む付着物がなければ腐食は発生しません。そういう意味で、塩分は潮解性や保湿性によって腐食を促進します。結局は、仰るように、 >またある文献では塩水中でも水道水中でも浸漬試験に大きな差は無く、差が出るのは液体と大気の境界近くであると見たことがあります。 ということになると思います。 >塩水環境の錆は塩化物であって酸化物生成の促進試験にはならないのではないかとも考えているのですが・・・ そうではなく、塩水環境の錆も酸化物です。 >それであれば酸素を大量に有する水を噴霧したほうが試験的に理にかなっている気もします。 確かに仰る通りであって、例えば窒素雰囲気中で塩水噴霧試験をやっても腐食は発生しません。水溶液中の溶存酸素が必須です。では、100%酸素中(当然、溶存酸素が多い)で塩水噴霧試験をやったらどうか?やったことないけど、きっと腐食が多くなるのでは? なお、ステンレス鋼の場合は、ハロゲンイオン(例えば、塩化物イオンCl-)が不動態皮膜を破壊するので腐食を促進します。孔食というポツポツした腐食や、隙間腐食(パッキンの隙間などにできる)の原因になります。 ステンレス鋼の場合は、塩水中と水道水中での浸漬試験結果に差がでます。 ちなみに、ステンレス鋼の不動態皮膜はCrを含むオキシ水酸化鉄FeOOH、CrOOHであると聞いたことがあります。
お礼
昔ある業者さんが、塩と鉄と脱酸素・吸湿剤を入れた袋を見せて鉄が全く錆びていない事からその薬剤と密閉袋の有効性を説明していました。 ご回答を拝見して、この袋の中のどちらかの薬剤が優れていれば片方で十分では?と、疑問に思った事を思い出しました。 前のご回答から、塩水環境での腐食は塩化物ではなくやはり酸化物であることが理解できたので、ご指摘の通り窒素100%か酸素0%の環境下ではいわゆる錆が発生することはないですよね。 そうすると塩水噴霧試験では、酸素濃度も確認が必要では?と少し頭をひねらせました。 しかし完全密閉型の試験装置でない限り、空気中の酸素濃度は地球上ほぼ一定であるとするんでしょうね。 しかし塩水中の酸素濃度は試験環境によって変化があるでしょうから、時間を見つけてこの点確認してみます。 逆に社内試験規格を高濃度酸素下にして試験を更に加速することも可能ですね。 合せてステンレスの不導体皮膜の疑問も解決していただきありがとうございます(これも以前より疑問に思っていることでした)。
腐食反応そのものには塩素は必要ありません。 ただ、その場合、最表面の酸化膜が出来た途端、以後の反応スピードはかなりゆっくりです。(酸化膜が保護膜になるため) これから世に送り出そうとしている製品が、どれくらい耐食性があるか知るには、加速的な試験しておく必要があるわけですが、 水を掛けているだけではどうしょうもないですよね? つまり、表面の酸化物をとってあげないと次の腐食が進み難いのです。 前の方がおっしゃっている「還元」です。 還元には一価のマイナスイオンが有効です。つまりハロゲン(17族元素の塩素や臭素です)を与えてやる事によって、これが触媒になり、酸化・還元を繰り返して腐食を加速させるのです。
お礼
なるほどなるほど Clは錆を発生させる・させないの原因を作っているのではなく腐食を促進させるためのものだったのですね。 確かにステンレスのように表面に酸化物が出来て腐食が止まっては加速試験になりませんね。 触媒の役目を果たすからCl環境下での腐食物も塩化物にならないと。 了解しました。
お礼
詳しい説明ありがとうございます。 お恥ずかしい話ですが、「さびる」と言う現象が単に酸素と鉄が反応するだけと考えていたので、途中式がこのようになっているとは知らず参考となりました。 また後から頂いた回答を理解するうえでも大変役に立ちました。