昔、鮭をナマで食べる人はいませんでした。
アニサキスだらけだったからです。
塩につけてそういうものを殺し、さらに乾して、それを焼いたりして食べたのです。したがって、寿司屋のネタにシャケなんかはなかった。
ところが冷凍技術のおかげで、虫なんてすべて絶滅させてから自然解凍したものがうまかったので、刺身で食べていた人間が、これで酢飯をにぎったらどうだろうと思いついた。そして、ネタ名サーモンというものができたのです。
江戸時代からあったネタならサーモンなんぞという名前は付けなかったはずですよね。
冷凍技術はこういう革命をおこし、マグロの大トロなんていうものが「食べられるようになった」のです。
最高級ネタだと思うのは間違いで、江戸時代はトロなんて食べるのはよほど貧乏で困った人間じゃないと手を出さなかった。「ねぎま」という呼び方はあっても「ねぎとろ」という発想はなかったんです。
理由は、マグロの胴体の腹側であって、秋刀魚でいうと苦いはらわたを包んでいる部分が「とろ」ですし、そのなかの一番下の腹の先の薄いところが「大トロ」ですからそんなもんに魅力なんか感じなかったのです。せいぜい犬の餌です。
冷凍技術で、沖で一本釣りで吊り上げたマグロを船の中で一瞬で凍らせるというようなことをして持って帰ってくると、腹のところも凍っていますから、切りやすいしばらしやすい。
形があるまま腹側の薄い肉を切ってみると、ここにたっぷり脂肪分がついていてあっというほどうまかったんですね。そして脂がうんと多いものを大トロ、中程度に入っているものを中トロというようになったんです。食べ比べてみたらそりゃうまいですし、1尾あたりの分量が少ないから、赤身よりトロのほうが高い食材になった。
もちろんサーモンと同じ理由で生きたアニサキスなんて居ません。
というわけで、河岸で冷凍状態でセリをする魚にはアニサキスはいません。
そうでなくて、実際に釣ってきた魚は居る可能性があります。割烹やの水槽で泳いでいるものの危ないです。自分で釣りをする人は常に気を付けないといけません。もっとも割烹やとか寿司屋の水槽で泳ぐ魚は水槽に薬を入れていますから何日も泳ぎ続けていると虫が出てくる可能性はあります。そこまでいかないうちにすくいあげるからまずいのです。
とはいえ、細菌やウィルスではなく「虫」ですから、よく見たら見つけられます。たべようとする切り身を裏表しっかりチェックしたら、見つかります。
10ミリないし37ミリと言うサイズですよ。とんでもない大きな、白かったりうっすらピンクだったりするミミズ状のものをみつけたら大概食べようとしないでしょう。それをつまみ出せばいいのです。目をつぶってかじったりしたら、異物感もないのでそのまま入って行ってしまうのです。
気になるならルーペをかざしてチェックしながら食べれば大丈夫のはずです。
余談をひとつ。
私は経験がありませんが、友人がやられたことがあり、この友人はサラダで使っている葉っぱの上に青虫が居ても気にしないでそのまま食ってしまうような人間ですから、そりゃアニサキスに当たらないわけがない。入院したことがありました。で、言うには、死ぬかと思うほど痛いし苦しいからこりるんだけど、じゃ生魚食わないかというならやっぱり食う。生魚食うか死ぬかと言われるなら生魚食うほうを選ぶ、といっていました。
お礼
早速の御返事有難う御座います。