> これって違法では?
↑ 寿司店の客が、
飲食代金の金額を店員が少なめに誤認していることを利用して、
金額が不足した飲食代金を支払って店を出ますと、
不作為による詐欺利得罪に問われる可能性があります。
刑法の詐欺罪には、
人を欺いて財物を交付させる罪
(第二百四十六条第一項に規定、「1項詐欺」、狭義の詐欺罪)と、
人を欺いて、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させる罪
(同条第二項に規定、「2項詐欺」、詐欺利得罪)があります。
ご質問にあるケースに関しては、
店員による代金の金額の過少誤認を当該店員に対して告知する
信義則上の義務が
客にあると考えますと、
客はこれを当該義務に反して告知しない不作為をもって店員を欺く
という方法により、
不法に代金の一部の支払いを免れて、
財産上の利益を得ることになりますので、
詐欺利得罪(「2項詐欺」)が成立するわけです。
最高裁判所は、
銀行の自分の預金口座に誤った振込みがあった旨を知った受取人が、
このことを秘して当該預金の払い戻しを請求して、
その誤振込みに相当する分を含む金銭を当該銀行に交付させたことについて、
銀行にとっては
「払戻請求を受けた預金が誤った振込みによるものか否かは,
直ちにその支払に応ずるか否かを決する上で重要な事柄」であって、
受取人においても
「自己の口座に誤った振込みがあることを知った場合」には、
「誤った振込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務がある」
と判断し、
狭義の詐欺罪(刑法第二百四十六条第一項に規定※、「1項詐欺」 )の成立を
認めています(←最高裁判所(第二小法廷)平成15年3月12日決定)。
※ 当事件は、
刑法の規定の表現を口語化した平成7年改正より前に発生していますが、
当該改正前後で同条の規定の趣旨は同じです。
回答No.4より
> つり銭ミスの場合には詐欺罪です。
> 先月くらいにコンビでのつり銭ミスに絡み、逮捕された例がありました。
↑ 客が釣銭を、その金額が過多であることを認識しながら受け取りますと、
その旨を店員に対して告知しない不作為もって店員を欺く、
という方法により、
金額が過多な釣銭を店員に交付させることになりますので、
狭義の詐欺罪(「1項詐欺」)が成立します。
なお、
客が釣銭を受け取って店を出た後で、
その金額が過多であることを認識するに至ったが、
精算をしないまま放置しますと、
店員を欺いてはいないことから、店員に対する詐欺罪は成立しませんが、
遺失物等横領罪(刑法第二百五十四条に規定、「占有離脱物横領罪」)が成立します。
回答No.3より
> 食い逃げは場合によって違法になら無いこともあります。
↑ 飲食店から食い逃げをして、
民事上は契約違反にはなっても、
刑事上は罪にはならない場合があります。
「飲食をした後で、代金を支払わない意思を生じ、
そのまま逃走する」場合です。
客が飲食店に入った当初から代金を支払う意思が無いまま、
飲食物を注文しますと、
店員を欺くことになりますので、
これによって店員に当該飲食物を提供させて、それを消費しますと、
狭義の詐欺罪(「1項詐欺」)が成立します。
代金を支払わない意思を飲食後に生じた客が、
もし暴行又は脅迫を用いて代金の支払いを免れますと、
強盗利得罪(刑法第二百三十六条第二項に規定)が成立します。
もし店員を欺くことにより代金の支払いを免れますと、
詐欺利得罪(「2項詐欺」)が成立しますし、
もし店員を恐喝することにより代金の支払いを免れますと、
恐喝利得罪(刑法第二百四十九条第二項に規定)が成立します。
ところが、
こうした方法(暴行もしくは脅迫又は欺罔又は恐喝)を用いないで
単に逃走しますと、
財物の領得を伴わずして利益をかすめ取ること(「利益窃盗」)を
罪とする法律の規定がないことから、
罪にはなりません。
もちろん、
上記「食い逃げ」のいずれの場合においても、
客は民事上は飲食代金債務を不当に免れようとしていますから、
契約違反にはなります。
民法より改行して抜粋。
第一編「罪」
第一章「通則」
: (基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。
刑法より改行して抜粋。
第二編「罪」
第三十六章「窃盗及び強盗の罪」
: (窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、
十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
: (強盗)
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、
強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、
同項と同様とする。
: (未遂罪)
第二百四十三条 第二百三十五条から第二百三十六条まで
及び第二百三十八条から第二百四十一条までの罪の未遂は、罰する。
: (電気)
第二百四十五条 この章の罪については、電気は、財物とみなす。
第三十七章 「詐欺及び恐喝の罪」
: (詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、
十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、
同項と同様とする。
: (恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、
十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、
同項と同様とする。
: (未遂罪)
第二百五十条 この章の罪の未遂は、罰する。
: (準用)
第二百五十一条 第二百四十二条、第二百四十四条及び第二百四十五条の規定は、
この章の罪について準用する。
第三十八章 「横領の罪」
: (遺失物等横領)
第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、
一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。