整形は全く遺伝に影響しません。ゆえに、整形前の顔に似た子が産まれます。何度繰り返しても、何世代経っても同じです。
で、仮に大規模に整形が継続的に行われ、整形前ならば好みに合わないブス・ブ男(※この表現は仮に使っています、以降も同じ)と結婚して子孫を残す人が増えたとして、ブス・ブ男だらけになるかというと、そうはなりません。
不思議といえば不思議な現象なのですが、性別以外はランダムに多数を選んで、その顔写真を平均した男性、女性の顔を作り、やはりランダムに選んだ人に評価してもらうと、過半以上が高評価します。多数を平均した顔は、ある意味、典型的な美男・美女の顔になるということです。
以下、話を単純化するため、顔の好み、美的感覚はは時間が経っても変化しないとします。
顔写真を平均化したことは、実際の子孫への遺伝でも起こります。仮に過半以上から高評価の男女だけを選んで、その中だけでカップルを作って子を産み、子もまた同様にしても、その集団に平均以上の確率で美男・美女が存在するようにはなりません。逆に、ブ男・ブスだけを選んだ集団で同じことをしても、子孫は平均的になっていきます。
そういう実験が行われたわけではありませんが(動物実験で確かめようにも、人間の顔の好き嫌いは人間でしか測れない)、古くは骨相学(もう否定された学説です)やシミュレーションでは、そういう結果になるらしいことが分かっています(あくまでも「らしい」)。
その上、時代とともに評価ポイント、平均的な好みは変わります。また、個人差の大きい問題でもあります。メイク技術も、もちろん大きく影響します。
P.S.
気候で顔の特徴が気候に応じたものになることはよく知られています。それ以外に、同一地域でも、身分差、格差などで貧富の差の固定が続くと、顔の特徴が富裕層と貧困層で分かれて来る実例がありました。日本の江戸時代に顕著で、戦後の日本でもその傾向が別の形で顕れています。
江戸時代の江戸の研究では、武士階級では顔の彫が深めで鼻が高め(さらに身体骨格が長身で、男女それぞれの傾向をはっきり示す)、町民階級では逆に顔の彫が浅く鼻が低め(同じく身体骨格が低身長気味、男女差があまりない)ということが、遺骨の調査で分かっています。日常の食事摂取、衣服の影響と思われます(長身で彫が深い人は寒冷時の飢餓に弱い、などがある)。
戦後は戦争末期くらいから平均身長が低くなるほど、食糧事情が悪かったのですが、戦後、豊かになるにつれて急速に改善していきました。それが身体の特徴に顕れるのは時間がかかるのですが、少なくとも21世紀に入ってからと、1980年頃までを比べると、80年頃が江戸の町民的、21世紀が江戸の武士的な特徴を示しています(人物画の画家、評論家なども変化に驚くことがある)。
美的感覚という曖昧で好み次第のものと違い、栄養事情ははっきり身体的な特徴に影響します。食糧不足のときは、低カロリーで生存率が低いタイプの人は淘汰されて減ってしまうのです。それが遺伝的な特徴を形作ります。ただし、生存に不向きな遺伝的な特徴は隠れるだけであって、遺伝子が変化したわけではなく、栄養事情が改善すると、またその特徴を持つ人が増えてきます。
お礼
とても丁寧な回答ありがとうございました!