おそらく質問者さんの疑問は,「業務上」要件ではなく「過失」要件の方にあるのだと思います(これまでの出てきた「業務上」の説明も必ずしも十分ではないような気もしますが)。
一般的に言えば,「過失」を分かりやすく言うと,「事故を予測できたのに,それを回避する義務を怠ったこと」を言います。
本件で言えば,「回転扉のセンサーに言われるような不備があれば事故が起こることは当然に予測できたのに,センサーを改善するなり回転扉を撤去するなりの義務を怠ったこと」が「過失」です。
ここまでは,質問者さんもお分かりのことと思います。
それでは,これが自動車メーカー(あるいは包丁メーカー)の事例と何が違うのか。ここでは「過失(事故を回避する義務)」がいかなる場合に認められるかが問題になります。
説明の仕方は学説の対立もあり色々とあるのですが,要するに,それは「社会通念上」過失とは言えるか,。
つまり,「普通の性能の普通の物」が誤った操作により事故を起こした場合にまでメーカに「事故を回避する義務」をあるなどと誰も考えないでしょう。この場合は,使用者にのみ「事故を回避する義務」を認めるのが「社会通念」ということになります。
これに対し,本件のように「異常な性能の普通の物」を作ったとされる場合は,その異常さゆえに事故が起こることが予見できれば,メーカに「事故を回避する義務」があるとしても常識的に見て不当とは言えないでしょう。
ここまでも,質問者さんもお分かりのことと思います。
それでは「異常な性能」とは何か。しかし,これも「社会通念」によって決まるのであり,絶対的な基準などありません。今回も,警察が「異常な性能」だと判断したから業務上過失致死の容疑で捜査しているだけであり,最終的には裁判所の判断を待つということになります。そして,裁判所だってその裁判官の価値観で判断するだけです。
いい加減なようですが,過失犯というのはそういうものでして,今までも「これを過失と呼ぶべきか」ということが争われた裁判は数知れずあります。学説も色々ありますが,全ての事例につき客観的かつ明白に判定できる基準はないと言って良いでしょう。
お礼
なんとも素晴らしい回答とてもありがとうございます。 かなり、もやもやは消えつつあります。 最後に疑問に思うのは、「手動」だったらということです。 手動の回転トビラもありますし挟まれる危険はあります。 上野動物園の下のほうの出口は手動の回転トビラで子供の時 怖かった思い出があります。 あれで事故になったら「業務上」? 当然安全装置とかついてないと思います。