仕事には「スタッフ」と「ライン」という2種類があります。
乱暴にいうと誤解がでますので、例で話せば簡単です。
たとえば給食センターとかお弁当を大量つくるような工場があるとします。
千切りキャベツをわけたりパックにつめたり、あるいはフライをつめたりして弁当の形をつくっていく作業が「ライン」です。
これに対し、市場で本日の鮮度がよく出来がよいキャベツを選び、安く仕入れるのは「スタッフ」です。
もちろん、ひと月先までの献立を検討し無駄が最小になるようなメニュー連携を考えるのも「スタッフ」です。
「ライン」の作業は品質が求められます。
品質は、行うことが極力シンプルであり、担当者が病欠などしても別の人間がすぐカバーできる、再現性確実性が求められます。
品質は、人間がおこなうことなので必ず発生しうるミスが発見しやすく対応が簡単であることが求められます。
そのため、作業内容はシンプルかつ単調になりがちです。
キャベツだけをつめる担当者が居ます。
ゆでたまごを半分に切る担当者が居ます。
フライの担当者は漬物に触ることはしません。
「スタッフ」のほうは、メニュー検討やら仕入やらをおこないます。
けれども、「ライン」の仕事には係わりません。
これは仕事を統括する立場からいえば当然です。
運動選手でいえば、選手本人が「ライン」です。
ドクターやコーチや監督は「スタッフ」です。
組織というのはそのように、役割をわけて担当し、全体で動いて成果を出しているものです。
たとえばキャベツ入れ係がいやだ、とんかつを揚げたい、というのなら、とんかつ係にはしてもらえます。
でもキャベツの仕事からは外されます。
とんかつもキャベツも玉子もご飯も漬物も全部触りたい、ということであるなら、個人で弁当屋をはじめろということになります。
それはそれで一つの選択です。でも、100人働いている弁当工場には向かない考え方です。
個人で弁当の商売をしようとしたら、調理だけではなく、広告を作ったり店に出たりしなければならず、スタッフ仕事をメインでやらなければなりません。
それでうまくいっているひともいますから、決して否定するものではありません。
この話を、あなたが観察している機械関係の職場で整理してみてください。
一分野にかかわる職場、といわれて見ているのは「ライン」ですね。
だったら、あちこちの仕事をしないのは当たり前ですね。
反論されないように、複雑な仕事をしているようなものをひとつチェックしてみましょうか。
コンピュータのプリント基板の設計をする技術者は、こういうことをします。
論理設計技術を使ってデジタル回路を企画し、何をハードウェアで、何をソフトウェアでやるかを検討します。
このときの考え方は「ビヘイビア設計」という、機械がどう動くべきかというモデルから検討しますがこれはソフトです。
それをモデル化してハードウェア部分が増えてきます。
and回路だとかor回路だとかインバータというものが組み合わさった図面がハードウェア設計図(ネットリスト)として現れます。
これを組み込むのは電子ボードですから、微分積分やラプラス変換を駆使するアナログ理論を使って現実の電子機器に積む枠を設計する必要があります。
最終的にマスクという形で写真原版のような形となり生産ラインに乗せられ、ASICというものになります。
こういうことを高度な仕事というのであれば高度ですけど、LSI開発ラインです。スタッフではありません。
設計者は、一切コンデンサや半導体に手も触れないでこれをするのです。やっているのは図面だけです。
アニメの原画を描くのと似ています。
理工系大学以上の高等数学を駆使しますし、モデル化のセンスを要求されはしますが、単一分野にすぎません。
実際のLSIとしてものができてくるのは、コピー機のような製造ラインからです。
形として出来上がったものをテレビやゲーム機に積んで新製品にする議論をするのはスタッフです。
もちろん、こういう新製品がほしいと企画を先にあげて開発ラインと相談する場合もあります。
新製品としておどろおどろしい広告を作り市場に発表するのもスタッフです。
大量に売買契約をしてくるのもスタッフです。
でも、スタッフは決してLSI設計はやりません。電子回路の知識すらないかもしれません。
そのかわりプレゼン能力があり、市場が見えています。
なんでもかんでもやりたいなら、個人事業しかありえません。
この話で回答になっていますか。
お礼
例えまでだしてのご説明ありがとうございます。「仕事」というものはそんな風に成り立っているのですね。少なくとも自分の思い描く職に就くのは難しいことがよく分かりました。ありがとうございます。