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源氏物語の翻訳について
- 『But when the mistress of a house is to be selected, a single individual must be found who will combine in her person many diverse qualities. It will not do to be too exacting. 』とは、家の女主人を選ぶ際には多様な資質を持つ一人の人物を見つける必要があります。厳格になりすぎることは避けなければなりません。
- 『 Let us be sure that the lady of our choice possesses certain tangible qualities which we admire; and if in other ways she falls short of our ideal, we must be patient and call to mind those qualities which first induced us to begin our courting.』とは、私たちが選ぶ女性が私たちが称賛する明白な資質を持っていることを確信しましょう。そして、彼女が私たちの理想に不足している場合でも、我慢をしなければならず、最初に私たちが求愛を始めるきっかけとなった資質を思い出さなければなりません。
- 源氏物語の翻訳についてA.Waleyの『TALE OF GENJI 』(帚木 The Broom-Tree)から、わからない部分や間違っている訳について教えていただきたいです。
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今日は。路面が凍結していて、まだおっかなびっくり歩いています。 いつも大変丁寧なお礼をありがとうございます。 1)『But when the mistress of a house is to be selected, a single individual must be found who will combine in her person many diverse qualities. It will not do to be too exacting. 』 >しかし家の女主人が選ばれることになりうる時、人柄の中に、たくさんの異なった特性を組み合わせるであろうという独身の人(女性)が見出されるに違いありません。厳格になりすぎることはしないでください・・・・・? ●ここは紛らわしい文法がいっぱい出て来ますね。 must は、1)~しなければならない、2)~に違いない、の2つの主要な訳があり、be 動詞と結びつくと、たいていは2)の意味ですので、セオリー通りの訳をされていますが、ここは1)の意味です。他の例をあげれば、You must be kind to others. は「他の人に優しくなければなりません」の意味です。 >is to be・・・ここの「be+to不定詞」は「可能の用法」になりますか? ●「be+to不定詞」は、1)予定、2)義務、3)可能、4)運命、5)意図(必要条件)と申し上げました。ただし、3)は、通例、受動態で、しかも否定で使われます。No star was to be seen in the night sky.の如くにです。5)は、if節の中です。4)は、いかにもそれらしい文でしか使われません。ですので、面倒な使い分けは、実は1)と2)だけということになります。 ここは、「妻を選ばなければならないときには」(義務)が、まあ、一番近いでしょうか。しかしこの be + to不定詞は、まだ現実のものになっていないものを、現実化しようとしているというのが統一的なニュアンスなのです。ですので、「妻を選ぼうとするときには」が、多分一番近い訳になるのだと思われます。原文は「わがものとうち頼むべきを選らむに」ですので、「選らむに」の訳とされていますので、「選ぼうとする場合には」ということです。 >a single individual must be found who will combine in her person many diverse qualities.ここは倒置ですか?「 a single individual who will combine in her person many diverse qualities must be found.」 ●その通りです。a single individual who will combine in her person many diverse qualitiesとすると長すぎるので、who節を後ろにまわしたのですね。 >who will combine~・・・・「will」は「単純未来」ですか? ●「単純未来」ですね。「推量」の意味を加味して「とりどりの美質を一身に結集させていそうな人」と訳してもいいと思います。 >It will not do to be too exacting.・・・・「too exacting」は「厳格になりすぎる」?ここの訳の言い回しがよくない感じです。「厳格になりすぎないでください」と訳すのがいいのでしょうか? ● exact は、動詞で「要求する」ということですので、「too exacting」は「あまりに多くのことを求めすぎる」ことです。「年収5000万以上で、背が190 cm 以上で、親戚の誰かがノーベル賞をとっていること」などという条件を出すことです。 >It will~・・・「話者の命令・指図」の「will」ですか? >漠然と表現主体をさす「It」ですか? ●これは仮主語の it で、to be too exacting が真主語です。 >ここは、妻を選ぶときにあまり厳しい目で見ないでください、ということですか? ●その通りです。S will do. が「Sでよい」という基本構文です。「あまりに多くのことを求めすぎるのはよくない」となります。 全体を訳しますと、「しかし(君主が大臣を選ぶのとは違って)家の女主人を選ぼうとする場合には、あまたの美質を一身に集めていそうなたった1人の人を選ばねばなりません。そうすると、あまりに大きな要求を課してはうまくいきません。」となります。 2) >確信しましょう、私たちが選択する女性は、私たちが称賛する一定の明白な資質を所有するということを。そしてもし他の面で彼女が私たちの理想に不足するならば、私たちは我慢しなければなりません。そしてまず、私たちの求愛を始める気を私たちに起こさせたそれらの資質に、思い当たらなければなりません。・・・・・? ●Let us be sure that~は、その後すべてを支配しています。Make sure that ~と似て、訳しにくいですが、「必ず~するようにしましょう」ということです。 またthose qualities whichの those は、「関係代名詞予告の those」と言いまして、「それらの」と訳さないのが普通です。「(which以下の)qualities」と訳します。 訳しますと 「私たちが選ぶ女性は、称賛できる一定の明白な美質を持ち、たとえ他の点で、私たちの理想に及ばないとしても、私たちは、私たちが求愛当初に見出した彼女の美質を思い出して、至らぬところを我慢しなければならない———それを忘れないようにしようではありませんか」 となります。 >we must be patient and call to mind~・・・・「must」は「be patient」と「call to mind~」にかかっているのでしょうか? ●その通りです。 >which first induced us~ここの「first」は「まず」ですか? ●「最初に」です。具体的には「求愛時代に」のことです。 >完璧を求めないことだと言っているようですが、大事なことですね。 ●ここが子供と大人の境目ですね。「結婚したら片目をつむれ」るかどうかが、うまくやっていけるかどうかの分かれ道になるともよく言われますね。しかも両方が大人でないと成立しませんので、大体がうまくいかなくなる道理です。英米では50%が離婚、日本は30%程度ですが、実質破綻しているのはやはり50%くらいではないでしょうか。非婚、晩婚、世界最高の不倫率は、successful marriageの難しさを物語っています。 ************************* 《余談》『失楽園』と『人間太宰治』とを一気に読まれたそうで、相変わらず超人的な読書力ですね。少しわけて頂きたいものです。 今日は「心中」について脱線します。 近松以降、心中を扱った文学はかなりありますが、結局、“star-crossed lovers”(『ロメオとジュリエット』)は、社会に追いつめられて心中を選ぶ場合が多いようですね。近代日本では、追いつめる1つの力の源は「姦通罪」にありました。つまり有夫の女性が夫以外の男性と情を通じた場合、その女性は罰せられたわけです。(不平等にも男性には適用されませんでした。)有島武郎はこの典型的なケースで、彼と波多野秋子の恋愛は犯罪として社会から糾弾される運命でした。 これを改定したのが、日本国憲法で、これにより「姦通罪」は廃止されました。新憲法はご存知のように、全部ではなくとも、ほとんどGHQの作ったもので、そこには悪い面といい面があるのでしょうが、いい面の1つは、性の平等が初めて打ち出されたことです。(ここに関ったのが、先日亡くなられたベアテ・シロタ・ゴードンという女性で、彼女の追想録『1945年のクリスマス』は面白い本でした。)しかし理念的にはいいといっても、現実には「不倫」もOKということですので、複雑な面がありますね。獅子文六の『自由学校』(1950)は、こうした状況を題材にした小説でした。 「不倫」が自由になると心中も減る道理ですが、『失楽園』は、今でも既婚の恋人たちを追いつめる社会の圧迫がよく描かれていたように思います。比較的最近の小説ですが、角田光代『対岸の彼女』も、現代の若い女性の置かれた境遇と彼女たちを追いつめていくものが非常によく描かれていました。14年連続で年3万人以上もの方たちが自殺している日本———マスコミはほとんど報じませんが、追いつめられてのケースがほとんどではないでしょうかね。その中には「心中」ないし、それに近いものもかなりあるのかもしれません。 sweetapplechocoさんの引かれた「ひとつの究極点に立ったときにのみ、はじめて、人間は、平凡な人間生活の貴重な意味を理解するのではないだろうか。」という言葉は、印象的ですね。おどろおどろしいことばかり覚えている私には、記憶になかったので、教えられるところがありました。(つづく)
お礼
今晩は。かなり溶けてきたと思いますが、雪かきしたのが道路わきに大分残っています。 いつも大変丁寧に回答をして下さってありがとうございます。 そんなに長くない英文だと思うのですが、たくさん教えていただくことがあるのだということを あらためて思いました。 a single individual must be found ・・・ここは「独身の女性」を主語にして 受動態で訳したので、「見出されるに違いない」という訳がはまるような気がしてしまいました。 「~に違いない」で訳した時違和感がなかったのですが、「~しなければならない」という訳を はめてみると言っている内容が明確になって伝わってくることがわかりました。 「be+to不定詞」のところは最初「予定」と「運命」で訳していて、 「選ばれることになっている時」「選ばれる運命にある時」などとしていましたが、 「be found」と、受動態になっていたので「可能」かな、と思って「選ばれることになり得る時」と してしまいました。(「可能」は受動態の「否定文」の時に使われるのですね。) 女性を主語にして考えていたので「義務」には思い至りませんでした。 「選ぼうとする場合には」の主語はyouになりますね。 (受動態のときは能動態の場合を考えることも大切ですね) 原文のご紹介、ありがとうございました。 倒置というのは頻繁に出てきますね。語順に惑わされる感じです。倒置に気付いた時は 何かを発見したような気持ちにもなります。 「a single individual who will combine in her person many diverse qualities. 」は 「とりどりの美質を一身に結集させていそうな人」という訳になるのですね。 「いそうな人」というところで推量を表しているのですね。 「too exacting」は「厳格になりすぎる」ではなく、 「あまりに多くのことを求めすぎる」なんですね。 (「年収5000万以上で、~」のうち一つでも求めてはいけないような・・・) It will not do to be too exacting. の「It」は「仮主語」なんですね。 Itの後が形容詞などではなく「will not do 」が続いていたのでよくわかりませんでした。 S will do. で「Sでよい」という基本構文があるのですね。 1)は「~combine in her person many diverse qualities」が 「たくさんの異なった特性を組み合わせる」と取っていたので 選ぼうとしている人には欠点もありますよ、という意味だと思っていましたが、 「あまたの美質を一身に集めていそうなたった1人の人」という訳になり、 そういう選び方をしていると「うまくいきません」なるのがわかりました。 (自分の直訳だと誤解して内容を把握してしまっています) 「Let us be sure that~」(「必ず~するようにしましょう」は 2)の文の全体を支配しているのですね。;(セミコロン)で一旦切れていると思ってしまいました。 「関係代名詞予告の those」(それらのと訳さない)はよく出てくると思いますが つい訳してしまいがちです。 「first」は「求愛時代に」のことですね。 (~first induced us to begin our courting.となっているので、よく考えると 「まず」ではないですね。) 正確な訳を教えて下さってありがとうございます。 日本は長寿国ですが、非婚、晩婚、世界最高の不倫率・・・いろんな問題を抱えていますね。 最初から愛情がある、ということはなかなかなく、長い人生の中でそれは育んでいくものだと思います。 ******************************* いつもいろんな本を紹介してくださってありがとうございます。 「姦通罪」というのは男性には適用されなかったのですね。 (女性の地位が低かったのは歴史的に仕方ないところですね) GHQの作った日本国憲法で「性の平等が初めて打ち出された」ということですが、 かなり画期的なことだと思います。 ベアテ・シロタ・ゴードンという方は本当につい最近亡くなられたのですね。 (1923~2012.12.30) 「不倫」もOKというのは功罪というものでしょうか? 獅子文六も時代に敏感に反応しましたね。『自由学校』は大団円でしたね。 『失楽園』では「久木」が会社での立場を追われてしまいましたね。 同僚からも決していい目では見られなくなったり。 今日2012年の自殺者数が15年ぶりに3万人を下回ったという記事を目にしましたが それでも多いと思います。(若年層は増加傾向にあるということですが) また『1945年のクリスマス』と『対岸の彼女』も読んでみます。 本の中にはときどき、はっとする言葉があります。 『夫婦ッてものは、勢力の均衡ではなくて、調和だったのね。 つまり斉唱じゃなくて、合唱よ。』 というのは『自由学校』で見つけた言葉です。 (また明日投稿します)