※ ChatGPTを利用し、要約された質問です(原文:20世紀の思い出 教護院脱走計画)
教護院脱走計画 20世紀の思い出
このQ&Aのポイント
12歳の少年が知能指数が高いことから教護院に入所するが、環境や授業のレベルに辛さを感じる
寮生たちは池を作る作業に従事し、誤ってコンクリートから水が漏れ鯉が死ぬ事態が発生する
教護院での日常生活や鯉との関わりを通じた脱走の前兆はなかった
あまり長くなっても何ですので手短かに話します。
私の年齢12歳、児童相談所での知能検査の結果、私の知能指数がアインシュタイン並に高いことが分かり、児童相談所も、私が行くことになった教護院(現、児童自立支援施設)の職員も驚くばかりの時のことでした。
教護院ではまず自慢のオールバックをマルガリータヘアへと変えられ、私の頭は青く輝くキンカン坊主にされたのであります。
次の日からは院内にある教室に授業を受けに行きましたが、クラスは中1.2年が合同でひと組を編成しており、恥ずかしくも教科書は小学5年用のでありました。そのせいからか、入院性のオツムの方のレベルは大変に寂しく、世間より高いと言えば、人口に対する暴力行為の発生率くらいのものではなかったかと思います。
2~3時間しかない授業を終えて寮に帰った私に待ち受けていたのは、寮の前にある空き地に穴を掘る作業でした。寮生15名程度が穴を掘ります。何の穴かと言えば、県庁職員であり、寮長であるK (あだ名は、鼻が異様に高かったことから、テングと呼ばれていました。秋ごろになると何度かその鼻先に赤とんぼが止まり、一同を沸かせたものです) の好みで、その場所に池を作り、ニシキ鯉を泳がせるための穴であります。
山を切り開いて作った赤土の中の施設であるだけに穴掘りも容易ではなく、先が四角いスコップと、農業用のクワだけでは、その労力に見合った作業効率を得る事ができず、少年たちは疲れ果て、日陰で扇風機にあたっていた寮長Kだけが、今か今かと池の完成を待ちわびているような有様でした。ちなみにK夫婦は、その寮の半分を占める場所 (カギがかかっていて、入院生は自由に行き来できない) に住み込んでいて、退職までそこを自宅代わりに使うのが恒例となっていました。
夏休みに入り、作業時間が増えたことも手伝い、穴掘りは少しずつではありますが、着実に進んでいきました。Kは、ま近に迫った穴掘り完成日が待ちきれず、トラックの荷台に2.3名の少年を乗せて切り開かれた山の、むき出しの赤土の中から、なかなかの大きさの岩を積み込む作業を開始しました。もちろんKは見物のみ、労働者は私たち少年であります。Kのイメージには、池のふちを大小の岩が取り囲んでいる、という風景が浮かんでいたようです。
真夏のある日、池は完成しました。
ひょうたん型に掘られた横5メートル、縦2.5メートルほどの穴を岩がビッシリと取り囲み、内側はコンクリートで塗り固められ、あとは水と鯉を入れるのみでありました。
たぶん県の予算で購入されたと思われる鯉がトラックに乗って到着し、ピーンと張られた水の中に一匹一匹入れられました。Kはさぞかしうれしかったのか、ひょうたん型の池の窪み部分にある大岩の上に立ち、両手をたたいて鯉を呼びましたが、当然の事ながら、一匹たりとも寄っては来ませんでした。
その夜は他の寮の寮長たちも集まり、日本酒を酌み交わしながらのウタゲが開かれました。超上機嫌のKに呼ばれ、私も日本酒を5.6杯ご相伴に預かり、すっかり酔っ払っていたのですが、朝になって、騒動は起きました。
なんと池の水位が半分以下にまで下がり、鯉が窮屈そうに寄り集まって、つまりコンクリートから水が外に漏れ出ている状態だったわけです。
Kは慌てて倉庫に有るドラム缶を持ってこさせ、水道水を入れ、網ですくったコイを一匹ずつ入れていきました。初日はゆうゆうと泳いでいた鯉が、二日目にしてドラム缶の中に押し込められるとは、そのようなコイの予感は、誰も抱いていなかったのではないかと思います。
鯉を全部ドラム缶に移すと、Kは板切れで軽く蓋をし、水漏れ箇所の特定をし始めました。そして、ここだと思われるコンクリートの継ぎ目の穴に、さらにコンクリートを押し込んで、夕方まで乾燥させて固めることにしました。私たち入院生はその間、自由時間とされましたので、Kの大好きな野球練習を、Kの指導のもと運動場で行ない、汗を流した次第です。
いい時間となり、コンクリートの穴も乾いたであろうと思われるころ、Kは皆を連れて寮へと戻りました。まず水道で水を張り、そしてドラム缶の中の鯉を池に放つ、それで一件落着であったはずなのですが、貧乏神が再びKを襲ったのであります。入院生の一人がドラム缶の中を見て言いました。
「鯉がみんな死んでるで~」
炎天下のドラム缶、ギュウギュウ詰めの鯉、大人であれば普通に予測できた事態でした。
鯉の死骸は生ゴミとともに捨てられ、水が張られた池には泳ぐ者もなく、さすがのKも手をたたいたりはしません。しかしそこは役人ならではの素早さ、その数日後には、やはり税金で購入されたと思われるニシキ鯉がトラックで届けられ、ついにその池に放たれたのであります。手をたたけば寄って来る、というほどではありませんが、手を池に入れ、ジャブジャブと音をたてれば集まってくる程度には、Kは鯉をなつかせる事に成功したようです。
それから数ヵ月後に(私)と名乗る少年は、この教護院を脱走することになるのですが、この時点で、脱走を企てねばならないような前兆は、この状況説明文のどこかに現れているのでしょうか。分かる方がおられましたら、どなたか教えてください。
お礼
ご回答ありがとうございました。