初めまして。
ご質問の主旨を字義通り捉えるのなら、お答えは「全てCVTになる事はない」でしょうね。そもそもCVTをこれほど重用しているのは日本くらいで、海外では従来の遊星ギア式自動変速機ですら普及率は日本ほどではありませんし、欧州では最近のトレンドは自動化された手動変速機(要するに通常の手動変速機にアクチュエイターの追加などで機械側で変速する機構を加えたようなもの)であり、大排気量/高出力エンジンでは遊星ギア式自動変速機の多段化(7段とか8段とか、それ以上とか)が増えてきています。
「CVT」と一口で言っても実は様々な方式があるのですが、まあ一般化したのはオランダのヴァン・ドールネ社が特許を持っていた特殊スチール・ベルトを動力伝達の手段として用いるという方式の特許権が消滅した後ですので、ここからは特に言及しない限りこのスチール・ベルト式CVTについて述べます。
で、そのCVTは、実はそれ自体は決して高効率なものではありません。何しろ通常の手動変速機どころか遊星ギア式自動変速機も動力の伝達はギアの機械的噛み合いで行われている訳ですが、CVTはスチール・ベルトとプーリーとの摩擦力によって行われているからです。そのためスチール・ベルトのスリップを避けるためにエンジン駆動のオイル・ポンプなどで猛烈なテンション(張力)をベルトにかけなければならず、その点でもエンジン出力のロスに繋がります。更に高出力エンジンであればあるほどスリップ・ロスは発生しやすくなり、それを避けるために加えなければならないテンションも合わせて高くなってしまいます(これが高出力エンジンにCVTが普及していない理由の一つです)。
ではなぜ日本ではCVTがこれほど重用されるかというと、「CVT」という言葉が示す通り「連続可変式変速機」であるがゆえに、速度の如何に関わらずエンジンを最も燃費効率が良くなる回転域に保つのに都合が良いからです。CVTの普及は車載コンピューターの高性能化と制御プログラムの高度化によってそれが実現しやすくなった事もあります。
また自動車には個人用交通機関という道具の側面と嗜好品的側面があり、前者の観点からは出来るだけ道具を用いる際の余計な手間は省きたいというニーズがありますから変速機の自動化はそれに沿った流れですが、後者の観点からはそれは必ずしも望ましい動きとは言えません。
そうした意味でも自動車に趣味的側面を求める市場要望がなくならない限り、「全ての車がCVT化(自動変速機化)する」という事はないと思います。