どんな仕組みにも必ず長所と欠点があります。
そして人は、現時点で見えている欠点を排除すれば問題が解決すると考えがちです。
この時、得てして長所のほうは視野に入っていません。
うまく機能している部分というのは、病気や怪我をしたとき初めて「当たり前の身体機能の有り難み」を痛感できるのと同じように、恩恵として認識するのが難しいのでしょう。
行政バッシングには、多くの誤りや理路のすり替えが前提としてあります。
実際には民間にも共通して存在している負の面を、行政特有の事象であるかのように言ったり、
逆に、民間とは土壌の異なっているところを無視して叩くといった現象が見られます。
行政に「民間と同じく、改善すべき点が多くある」のは事実ですね。
前置きが長くなりましたが、公務員を簡単にリストラしない仕組みが採用されているのは、欠点と長所を比較したとき、住民にとって長所がまさるからです。
まず、民間では4年ごと、下手すればもっと短期間に社長が次々と代わることは考えられませんね。
人間は未熟な生き物です。
社長が「次も俺が社長を続けられるように行動しろよ。さもなくばどうなるか分かってるな」と圧力を掛けてくることは容易に予想されます。
(すでに橋下大阪府知事が大阪市職員に対してやってます)
そういう状況になれば、社員も客より社長の顔色を伺いがちになるでしょうね。
それに行政は全く人員余剰ではありません。
行政に対する要求が多様化、増加しているにも関わらず、人員削減ありきで新規採用抑制により公務員数は減っています。
とても仕事を回していけないので、サービス残業もしているし、非常勤職員や臨時職員で補ったりしています。
また、待遇が下がるということは、人が居着かなくなるということです。(民間でも常識のはずですが)
人が入れ換わる都度、あなたの所得や家族構成や婚姻歴、失業、土地がらみのトラブル、障害や病気などを知っている人間が、増えるわけです。
現体制でも職員は人事異動で「職務上知り得た秘密」を持って動きますが、長く役所に勤め、公務員の守秘義務を意識し続ける人間と、数年役所にいただけで、個人情報がほしい民間企業に移った人間、どちらにより危うさを感じますか?
冒頭でも言いましたが、行政に改善すべき点が多々あることに間違いはありません。
しかし公務員も民間企業に勤めている人と同じ人間です。
仙人ではありません。弱さもあるし間違うこともある。
でも、困っている人を助け感謝されたらうれしいし、地域の発展を望んでいます。同じなんですよ。
「公僕」という言葉を召使いとして解釈したがる人達を見ると、企業に対する「俺様はお客様だ」という感覚の延長で、「俺様は国民(住民)様だ」という気分でいるように思えてなりません。