EUはそもそもヨーロッパ経済共同体EC(その前身の話しは割愛)としてスタートしました。
経済的に急速な成長を続けるヨーロッパ各国の経済的な連携と協力を図るのが目的です。
この時期、経済成長著しいドイツは東欧やトルコから安価な労働力として大量の出稼ぎ
労働者を受け入れました。東欧からの出稼ぎ者は一定期間の労働の後で帰国というケースが
ほとんどでした。これに対し、トルコからの出稼ぎ者は滞在の長期化や家族の呼び寄せ定住等が
多く、望まれてもいない相互依存が深まりました。
ECの協力関係が拡大され、EUに発展する過程ではいわゆる「経済的な観点からの加盟」が
先行し、文化的な異質性に関しては懸念する声は有ったものの変な「対等・互恵主義」の陰に
隠されていました。
これが問題になりだしたのは、経済成長が頭打ちになり、新EUの理念が経済から人権的な
観点も含めた汎ヨーロッパ的なものに変化した90年代と思います。
1995年にオーストリア、フィンランド、スウェーデンが加入したことで一つの輪郭が見えてきました。
つまりキリスト教文化圏・ヨーロッパ文化圏=EUです。2004年前半には東欧10ヶ国がEUに加盟
したことで、この輪郭は確定したように思います。
また移民の大幅な自由化、特にフランス植民地からの、は失業問題と治安の悪化をもたらし、
右派ナショナリズム政党の進出を促しました。彼らにとって、EUの理念は彼らの地域社会の
破壊と映りました。あの同時テロ後のイスラム社会に対する厳しい目もこれに拍車を掛けました。
英国では、英国製テロリストが問題になっているのですから。
現在、ECではトルコの加盟を促進しようと言う声は聞かれないと思います。安い労働力は東欧
新加盟国に溢れるほど有り、加盟国の中には経済破綻寸前の国も有り、EUは手一杯なのです。
更に火中の栗で嫌われ者のトルコを加盟させようなどと言う欧州政治家は絶滅した様に見えます。
トルコの側も近年の経済成長で自信を深め、何も卑屈な姿勢で加盟を願わなくともと言う
態度に変わった様に見えます。
長々と綴りましたが、ここ20~30年間は加盟は無いでしょう。経済的な見方だけから、
宗教・文化・歴史的な見方に変わった事が加盟が遠のいた理由と解釈しています。
以上、長いこと欧州に住み、トルコ人問題を見ることができた者の観察です。
7,8年前、出張の折り、時間を作り一人で昔懐かしいドイツの山を歩きました。偶然会った
ドイツ人とこの問題に付いて話し込み、気が付いたら1時間半も経っていました。
「EUは経済目的共同体かもしれんが、宗教・文化・歴史的ベースを共有すべきで、トルコの
加盟はキリスト教とイスラムが和解できる遠い未来の話しだ」との小生の意見に、遠い日本からの
友人のアドバイスとして皆に話すとのことでした。
何故?トルコ加盟問題に宗教を前面に出すことは一種のタブーなのです。ある日本人の話なら。