(1) 政令指定都市はお金が少ないの?
A市が政令指定都市になるために、たいてい、周辺の市町村(B村やC町)を合併するんですよ。
するとね、公務員の給料でも、設備でもなんでも、一番高いところA市に合わせてしまうわけです。
いままでは、「村だからな、税金少ないし、しようがないよね」と思っていたB村の公務員は、A市の公務員と同じ「高い給料」を要求します。
「村だからな、税金少ないし、しようがないよね」と思っていたB村の村人も、50年も経った古い校舎をやめて、A市の学校施設と同じ新しい校舎を作れと要求します。「村だからな、税金少ないし、しようがないよね」と思っていた・・・ 以下省略
同じ高い給料を要求されるのも大変ですが、同じものを要求されるともっと大変です。
A市のような合併の核となる都市というのは、面積が狭くて、人口・企業が多くて、という状態が多いのです。だから、面積が小さいので、例えば、下水道は短くて済みます。利用する人や企業が多いので、料金をたくさんとって、建設費もすぐ回収できます。
ところが、合併される市町村って、大概、面積が広くて人口が少ない。企業はない。下水道を造るのも、これまでのよりも何倍も距離を作らないとつなげません。それで、お金がいっぱいかかります。ところが利用者は少ないから、料金があまりもらえない、建設費がなかなか回収できない、だからほかに回す資金がたりなくなる。
お金が足りない、足りない、そういうことになります。
(2) じゃあなんで政令指定都市になるの?
一つの理由は、 政令指定都市になると、自由度が増すのです。
ふつうの市町村だと、県からあれこれ命令されるし、国からもあれこれ命令される。あれはやっちゃあいかん、これはダメだ、こうしろああしろ。
それが一々もっともな命令ならいいのですが、理不尽な、納得のいかない命令も多いのです。県や国の公務員がえらそうにふんぞり返って馬鹿な命令を出す。超ムカつく親みたいなものです。でも親なら、むかついても、ボクのためを考えてくれているんだな、と思えるのですが、県や国はそんなことはない。
市を預かる市長や議員にとって、バカ馬鹿しいというか、腹が立つというか。ガマンできません。
それが、政令指定都市になると、「都道府県と同等」になれるんです。国からの命令はやっぱり受けますが、都道府県から受けることはなくなります。県から自由になれる!
自由にやれる仕事が増えて、同じ苦労でもやりがいが出るし、とくに村の村長や議員さんなんかは、これまで「B村の議員? どこにある村?」とか言われていたのが、どこかに行っても「おお、政令指定都市A市の市長さんですか、議員さんですか」と一目置かれるようになります。気分もいい。
じゃあ合併しますか、ということになりました。
2つめの理由は、これがとっても重要です。(なぜ、政令指定都市になれない市町村でも、合併したのか)
これまでは、国が税金をタップリ持っていたので、小さなB村でも大きなA市でも、だいたい同じくらいの暮らしができるだけの、「地方交付税」を配ってあげられていました。
ところがあと20年もすると、税収不足で、十分交付税を配れなくなるぞ、と国のお役人様が気づいたのです。。
すると、どうなるかというと、例えば、人間や企業が多くて、税金も多いA市の中学生は、建て替えたばかりの鉄筋コンクリートの校舎で、エアコンをつけて勉強し、おいしい給食も食べられます。
ところが、広いのに、人間や企業のいないB村の中学生は、税金が少なくて建て替えるお金がないので、古い雨漏り校舎で勉強し、給食施設をつくる資金もないので給食なし、となります。
同じ日本で、それは、あまりに不公平でしょう。
だよね~ どうすんの?
A市の人たちが気がつかない今の内に、AとBを合併させて、どっちも古い鉄筋コンクリート校舎で、エアコンなしで勉強し、おいしくはないけどどうにか全員が給食を食べられる、という状態にさせておきましょう。
と思ったのです。国会議員も、ソウダ、そうだ、と言いました。
で、今合併すれば、「自由に借金させてあげるよ」「利子は国が出してあげるよ」などと餌をちらつかせたり、「そう言えば、おまえんとこ、政令指定都市になれるじゃん。自由が待ってるぜい!」とそそのかしたり、「今合併しないなら、あとで苦しくなっても国は面倒を見ないよ」と脅して、合併させたのです。
数年前、合併の大流行でした。これを「平成の大合併」と呼びます。
政令指定都市になったところもありますし、なれなかったところ(自由は得れなかった)もたくさんありましたよ。それでも合併したのでした。
お礼
わかりやすくて細かい回答ありがとうございました。またひとつ勉強になりました^^