缶詰の製造方法ですが、缶詰の種類にもよりますが、魚加工品、畜肉加工品などは真空巻き締め機を使って真空シールするのが普通です。理由は酸化防止よりもレトルト殺菌中に空気が膨張して缶が膨らむのを防止するためではないかとも思います。
真空だから酸化劣化しないは、おそらく俗説でしょう。食品技術者の中でその様な話はまず出ません。実際、缶のヘッドスペースに残っている空気中の酸素量を計算しても、品質劣化させるほどの量では有りません。むしろ缶が金属である事による完璧なシール性の方が酸化劣化防止に寄与していると思います。
近頃はやりのプルトップ缶は内圧が掛ると、圧力で蓋が開いてしまいます。もちろん、最近のレトルト釜は、殺菌中に釜内圧を調整する機構が付いています。そうでないとパウチの殺菌ができませんので。でも昔ながらの缶詰用の蒸気式殺菌釜では、原理的に圧力調整ができないのではと思います。
余り高圧で加熱をしない缶詰、例えば蜜豆缶は真空シールはしないでしょう。
食缶ではないですけど、テニスボールは、ボールの変形を防ぐために加圧シールをしています。
質問者さんは、通常の缶の二重巻き締め機構はご存知でしょうか。要するに2つのロールを使って1段目は上蓋を折り込んで缶の縁と一緒に二重に巻き込み、そして2段目で押し潰してあの形に仕上げます。実に簡単に巻き締めができます。良く考えたものだと思います。
その巻き締め機構が真空チャンバーの中にあります。中身を詰めて蓋を載せた缶は、コンベアで送られて巻き締め気の中に入ります。入口のシャッタが締って内部を脱気します。その脱気された状態で巻き締めを行い、次いで真空から開放されて外に出て来ます。
真空とは言うものの、完全真空と言う訳ではありません。どの程度の圧力下は覚えていませんけど、実用的にはせいぜい5~10kPa程度ではなかろうかと思います。そこまで減圧しないかも知れません。
ですから真空と言うよりも、減圧と言う方が正しいでしょうね。でも減圧であっても、大気圧下の圧力は、真空の言葉を使っても誤りではありません。
逆に絶対の真空は原理的にも作り出せませんし、宇宙空間でさえ存在しません。希薄とはいえ、何らかの物質が存在しますから。