言語ごとに発音上の習慣とでも言うべきものがあり、一定の条件である音が出現しないあるいはしにくいということがあります。なぜ発音しにくいかは外国人には理解し難いことで、母語話者にしても発音しにくいのは分かってもなぜかと問われれば分からないでしょう。
語頭の ps- という子音連続は本来英語にはありません。ψの名称も [psai] と並んで [sai] とも言われます。同じギリシア系では pneumatic, phthalin, Ctesiphon, bdellium, tmesis などは初めの方の子音は普通発音されません。いずれもこのような語頭子音連続は本来英語にはありません。意外と見落とされがちですが xylophone など x で始まる語が [z-] と発音されるのも [ks / gz] が本来語頭に来ないからです。ξの名称もギリシア語では「クシ」ですが英語では xi と書いて「サイ」あるいは「ザイ」と読みます。
では本来英語にあった子音連続なら安泰かと言うとそうではありません。よく知られているように kn-, gn-, wr- では初めの方の子音は発音されません。語中・語尾の -gh- は多くの場合発音されません。さらに laugh, nut, raw などは古くは hlahhan, hnutu, hreaw のように h がありましたが早くに綴りからも消えました。
発音上の習慣が時代とともに変わることもあるわけです。
例に挙げたギリシア系の単語も導入された当初は文字通り発音されていたでしょう。始めて ps- を見て p を抜かすのは考えにくいことです。しかしやはり慣れない発音なので誰ともなく p を抜かすようになりそれが普通になると、以降新しく ps- で始まる語が入ってくるとその応用で p を抜かしたと考えられます。他の子音連続についても同様です。
なお、ψの名称のように一部不徹底なものがあり、pseudo- は p を発音することもあります。
お礼
有難う御座いました。大変、勉強になりました。