◆◆◆ ユダヤの格言 ◆◆◆
賢人とは誰か? あらゆる人から学べる人。
強い人とは誰か? 感情を抑えられる人。
豊かな人とは誰か? 自分の持っているもので満ち足りている人。
人に愛される人とは誰か? あらゆる人をほめる人。
『ユダヤ5000年の教え』
五話
今は晩秋の頃、亜衣姫と羅夢王は天空を飛んだ。
可憐に、野原に咲き乱れていた赤やピンクや、白い色のコスモスの季節が過ぎ、深紅の彼岸花も消え、草原はススキの季節となった。今は西暦三千年代の中期である。亜衣姫と羅夢王は、ダイナミックに山肌を飾る、真っ赤な楓やモジミの紅葉に見ほれていた。
「亜衣ちゃん。この間は、神様はあえて方便として嘘をつかれた、と言っただろう」
「ええ、科学の進歩のためにでしょう」
「そう。それで不浄仏霊がたくさん出てきた。もう死んでいるのに、まだ自分は生きていると思っている人達が大勢いたんだ。それはそうだろう、唯物科学では、死んだら無になると、みんなが考えていたからな」
「でも、まだ肉体の意識が残っている。だから自分が死んでいるってことが分らない」
「そうなんだ。行く場所も分らなくってしまった。天使も助けに来てくれない。でも、それはそれで良いんだ。ここで問題なのは体の表面を覆っている意識なんだよ。表面意識は肉体を守ろうとする意識なんだ。恐いなあ、なんて思ってる恐怖心が、その意識なんだ。亜衣ちゃん、人間には幾つもの階層に意識があって、最終的には一番奥にある意識は、この宇宙の創造主様と繋がっているんだよ」
「神様を信じようと信じまいと」
「そう。亜衣ちゃんは、もちろん知っているよね」
「今の人達はみんな知っているわ」
「でも昔の人はそうじゃなかった。まるで暑い日に、吐き捨てられたガムを踏んづけた靴底のように、霊魂に肉体の表面意識がべったりと、くっついていた。なぜだと思う。亜衣ちゃんには分るよね」
「それは自分が一番かわいくて、一番悲しかったから、自分が不幸だと思っていたから、そういう習慣が身についたと思うわ。永遠の自分がいるということを知らなかったから」
「うん。永遠に輝き続けている、幸福な神の子である、自分の本当の姿を知らされなかったもの、無理はないね」と羅夢王は、遠くを見つめた。
「愛を叫び、幸せを叫び、世界平和を叫んでも、悲惨な戦争は起き、地軸がずれてしまって、天変地異が起きた。そして貧富の差が生じ、どこの国でもホームレスがあふれた。まだタイ北部に、救世主がお生まれになる前の話なんだ」と羅夢王は言った。
「その救世主さまは、どのようなお話をされたの」と亜衣姫は聞いた。
「赦しだ」と羅夢王は言った。
「まず、赦すことから始めなさい」と申されておられたんだ。
「全ての国家も、他国の国民も、人々も、己も他者も、まず一切を赦すことから始めなさい」と申されたそうだ。
「そしてこれより後、一切の国、人は、後ろを顧みず、不純な気持ちを持たず、新たに生まれ変わりなさい。国も人同様、その自己保存の意識を捨て去り、その欲を捨てなさい。全ての国は互いに喜捨をし合い、奢りを捨て、そしてまず、真心から他国を赦すことより始めなさい」と仰られた、と羅夢王は、遠くを見つめながら言った。
「国にも意識があるの」と亜衣姫が聞いた。
「在る」と羅夢王が言った。
「その国、その国にも霊界の国があって、更に上の階層に行くに従って、それぞれの国の垣根が無くなって、一つの地球国家となっているんだ」
「へーえ、今の世界のように」と亜衣姫が言った。
「そうだよ」
そうして羅夢王は、真っ赤なモミジの葉っぱを亜衣姫に渡した。
亜衣姫は「そうなんだ、国にも恐怖心から来る、自己保存の表面意識があるんだ」と言って、モミジの葉っぱの軸を持って、くるくるくるくると指で回した。
「国が亡んだって良いじゃないか、他国に攻め入るよりずうっと良いんだ。霊界には、素晴らしい国が在るし、その国は亡ばない。これは人間にも当てはまることなんだ。僕の肉体が亡んだとしても、僕の本当の意識は霊界にもあるし、神界にもあるんだ。亜衣ちゃんなら分ると思うよ。人はいつか人を赦さなければ、天国にも行けず、成仏もしないんだ。国も同じなんだ。その自己保存の猜疑心から開放しなければ、国も地球も進化しないんだ。お釈迦様が、ひもじい虎の前で、我が身を投げ出されたことを思い出してごらん。そこにヒントがあると思うよ」と羅夢王は言った。
「ふーん」と、亜衣姫は真っ赤な楓の落ち葉を、羅夢王にいっぱい降りかけてにっこりと笑った。
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自作です。ご参考になれば幸いです。
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お礼
現実的には、いつまでも心の中に引っかかったままですよね。時間が水のように流れていくのと同じで、時間をかけて自分が成長していく事が、水に流すという事かもしれないですね。ありがとうございました。