再び、stomachmanです。
労働を終えたおっさんの体臭とエタノール蒸気とスジ肉のコラーゲンとげっぷの臭いが充満した狭苦しい体臭酒場。その店の隅にある、受話器が匂うピンクの口臭電話。出展は泉昌之のマンガです。
冗談はさておいて、といいながら冗談のような話を続けますと、
ヨーロッパ。もちろん最初はみそぎの儀式だったんでしょう。ヨーロッパと言っても、サウナの歴史を持つ北欧は特殊。(熱い蒸し風呂でうんうん我慢した挙げ句、冷たい湖に飛び込むなんて無茶が好まれるのは、stomachmanから見ると異様です。)また、古代ギリシャとローマも別格でしょう。紀元前5世紀ぐらいにオリンピアにあったという風呂は完全に入湯設備とか。ヘレニズム時代にも浴場がある。しかし、一般化するにはやっぱり紀元前2世紀ぐらいになってからで、ポンペイの国営共同浴場は有名ですね。火災防止のため風呂を勝手に作るのを禁止し、数箇所に設備を集めたと聞いたことがあります。その他の田舎では12世紀ぐらいになってようやく銭湯ができる。これはピンサロというよりは医療センターみたいなものだったようです。ところが300-400年後にはなぜか流行らなくなった。やっぱり運営コストの問題かと思われます。で、19世紀も後半になってようやく入浴という習慣ができはじめる。
臭かった?もちろん!!ベルサイユ宮殿にトイレがなかったのは有名で、くさむらで立ったまま小さい用事を足す。そのために裾のひろがったスカートがあり、跳ね返りをよけるために高い靴がある。女性が立ったまま狙いを絞るためのアタッチメントまであったようです。(余談ながら男性の服の袖に付いている意味のないボタンは、もともとは、鼻水を袖で拭くのをやめさせよう、という工夫だそうですし...)ラブレーのガルガンチュワ物語はstomachman大好きですが、スカトロネタだらけです。ドイツの昔話「オイレンシュピーゲル」(ラブレーと共に、岩波文庫にあります。絶対お勧め!!)を見ても、運値は道路に掃き出すものだったようで、またイタリアでも二階の窓から運値の桶の中身を道にぶちまける際にはかけ声を掛けるべし、という法律があったとか。物語の中にも、通りを隔てたお向かいのお家の二階の窓から、お私利を突き出た奥さん同士が運値をしながら会話するシーンがあったりしまして、とてつもなく不潔である。いや、不潔という概念がなかったんです。風呂に入るかどうか以前のレベルですよね。伝染病の激しい流行が繰り返された挙げ句、衛生観念というものがだんだん出来てくるんでしょう。
トルコやアラブの共同浴場はローマの共同浴場を取り入れた物らしく、蒸し風呂と喫茶とおっさんによるマッサージ(女性用はもちろん女性がやります)および仮眠がセットで、今の日本で言うオールナイト・サウナに近い。日本では昔はややこしい個室のお風呂(軍隊の慰安所を発祥とします)をトルコの名を冠して呼んでおりましたが、トルコから正式抗議を受けて石鹸の大地という名前に変更しました。どのみちトルコのお風呂とはだいぶ内容が違うようです。(stomachmanはこのあたりの事情はとんと疎くてよく分かりません。)イスラム教では神に祈るときには着物や身体に穢れがあってはならんので、トイレでも必ず決の穴を水で洗います。(もし洗えないときはお祈りができず、お祈りを神様から「借金」する。つまりあとでまとめてお祈りすることで許して貰えるシステムなんですが、外国に長期間滞在するイスラム教徒は総じてシャイなのでシモの話が言い出せず、ノイローゼになっちゃうことがしばしばあります。ウォシュレットでなくても、バケツとヒシャクを用意してあげれば十分なんですが...)で、本格的なお祈りをする安息日(金曜日です)には朝、入浴するんですね。田舎では行水や、川で沐浴するそうです。ということは平日は入浴はパスするわけで、結構キツイ香水が好んで使われています。(ところが香水の成分はインドールだったりして、これって運値の臭い成分を薄めたものに他なりません。)
インダス文明でも宗教儀式用と見られる沐浴設備があったようですが、こっちはあまり良いコネがなく、よくわかりません。中国ではどうか。これもよく分からんのです。stomachmanの知ってるヒトは皆、昔の時代の話をしたがらないんですよ。あと、カナダエスキモー。文献によればお風呂は全然ないようです。
どうやら、都市圏において、飲料水である川を少々汚しても構わんという訳には行かないほど人口密度が上昇し、かつ労働をサボる時間と、多量のお湯を贅沢に使えるほど余剰生産がある高度経済社会においてのみ、娯楽的な入湯の習慣が発達するように思われます。
かような訳で、古風な伝統を今に伝えるお風呂嫌いの人たちをあんまりいじめてはいけません。環境と調和して生きるには、水資源の保護とCO2や石鹸排水の抑制のため、入浴は控えめに致しましょう。臭い臭いはブルジョワ臭い。労働の汗は甘美である。という時代が来るやも知れませんゾ。
お礼
すごーい! 僕のちょっとした疑問をこんなに丁寧に詳しく書いて下さる なんて本当にうれしいです。 stomachmanさんが先生だったら授業もすごい楽しいと思います。 もしや、先生!? しかし、スカトロネタがオススメだと生徒はスカトロ好きになって しまうかも(笑) みなさんに質問して本当によかったです。 ホームページを検索するよりずっと楽しく疑問がとけて また違う質問をしたくなってしまいました(笑) これからもkarを見つけたらよろしくお願いします! ありがとうございました。